精密発酵でカゼインを開発するオーストリアのFermifyは、先月シンガポール食品庁(SFA)に新規食品申請を提出したことを発表した。
これは、精密発酵カゼインの新規食品申請としてアジア初の事例となる。
Fermifyは昨年10月、アメリカでGRAS自己認証ステータスを達成し、アメリカ食品医薬品局(FDA)にGRAS通知を提出した。
同社の創業者であるEva Sommer氏は、当時、欧州、シンガポール、カナダ、イギリスなど他の市場での申請を進めていると述べており、今回のシンガポールでの申請完了は、アメリカに次ぐ重要なステップとなる。
シンガポールにおける精密発酵食品の展開

出典:Fermify
乳製品分野に限定すると、精密発酵ホエイを使用した製品がシンガポールに上陸したのは、2022年8月。米パーフェクトデイの精密発酵ホエイを使用したアイスクリームがシンガポールのスーパーで発売された。同年12月には、同社のホエイを使用した代替ミルクもシンガポールで販売された。
しかし、パーフェクトデイはB2B事業へのシフトを決め、消費者向けブランドを展開していた子会社のThe Urgent Companyを閉鎖することが2023年に報じられた。
その後、Foovoが2024年4月に現地で実施した調査では、シンガポールでの精密発酵食品の販売は終了していた。

シンガポールで以前販売されていた精密発酵アイスクリーム 2022年11月(Foovo佐藤撮影)
シンガポールはアメリカ、香港に並び、精密発酵食品が早期に導入された地域だが、これまでに精密発酵カゼインでの新規食品申請は確認されていなかった。
アメリカでは2024年2月にNew Cultureが精密発酵カゼインのGRAS自己認証を達成しており、現時点で公開されている情報では、FermifyとNew Cultureのみがこの段階に進んでいる。
Fermifyは、シンガポールでの申請について「規制上の障壁は精密発酵における最大のハードルのひとつであり、私たちはアジアで非動物性カゼインの承認申請を提出した最初の企業であることを誇りに思います」とコメントしている。
シンガポールではこれまでにパーフェクトデイ、インポッシブルフーズ、Remilkの3社が精密発酵タンパク質で認可を取得している。このうち、製品を販売した実績が確認されているのはパーフェクトデイとインポッシブルフーズに限られる。
Fermifyが認可を取得できれば、シンガポール市場における精密発酵乳タンパク質の選択肢が再び広がることになるが、近年、培養肉を含め、シンガポールでの新規食品申請が増えており、審査プロセスが長期化する可能性も十分考えられる。
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アイキャッチ画像の出典:Fermify