新しい食

ごぼうから生まれたカカオ不使用の代替チョコ「ゴボーチェ」実食レビュー|ナチュラルローソンでも販売中

都内ナチュラルローソンにて(2025年5月初旬) Foovo(佐藤)撮影

2024年8月、あじかんが発売した代替チョコレート製品「GOVOCE(以下、ゴボーチェ)」。

カカオ豆の歴史的な高騰を背景に、国内外で代替カカオの開発が進むなか、日本でも食品メーカーが独自に開発した製品が登場している。

焙煎ごぼうから生まれた代替チョコレート「ゴボーチェ」。その味わいを実際に確かめ、都内小売店での販売状況とあわせてレポートする。

「MelBurd」:チョコレートの風味を再現した焙煎ごぼう素材

出典:あじかん

ゴボーチェの核となるのは、あじかんが開発したチョコレート風スイーツ素材「MelBurd」。

あじかんは独自技術で、ごぼうを皮ごと焙煎。その結果、焙煎ごぼうにはチョコレートと共通の香り成分が含まれることが判明。

ただこれだけでは、焙煎ごぼうにある別の香りが、チョコレートらしい香りを邪魔してしまう。そこで、製造工程で弱い香りを飛ばしながら最大限に微粒子化することで、カカオ不使用でも滑らかな口どけとビターな風味を実現した

「MelBurd」開発は研究員・平尾凌氏の“勘違い”から始まった。

動物性原料を使わないバターを探す過程で「ココアバター」を乳製品と誤解し、ココナッツオイルとココアパウダーで代用品を試作。そこに「ごぼう茶の茶葉は食べても美味しい」という社内の声を思い出し、細粉化した茶葉をココアパウダーの代わりに加えてみたところ、思いがけずチョコレートのような風味が生まれた

そこから128回の試作を経て誕生した「MelBurd」は、ごぼう由来のイヌリンやポリフェノールを含むノンカフェイン素材。カカオ高騰やサステナビリティの課題に応える“国産ごぼうチョコ”として世に送り出された

あじかんの「ゴボーチェ」を食べてみた

Foovo(佐藤)撮影

筆者がゴボーチェを注文したのは2025年3月下旬。注文が殺到していたようで、到着まで約10日かかった。

Foovoの運営で、多くの代替カカオ企業の取り組みを取り上げてきたが、実際に代替チョコレート製品を口にするのは初めて。

こちらが実際の「ゴボーチェ」。

口にして驚いたのは、チョコレートにしか思えない口どけの良さ、なめらかさ。印象としては、「ごぼうで作ったチョコレート」ではなく、「チョコレートにごぼう風味を足したような味わい。香りも口の中でひろがる風味にも、ごぼう特有のものがある。

参考までに、家族2名にも試食してもらった。

  • 家族①(ごぼう嫌い・大人)

「ビターチョコだと思おうとしたが、口の中でごぼうの味がどうしても勝ってしまった。ごぼうの味がして絶望感があった」。
→ごぼう嫌いな人には厳しいかもしれない。

  • 家族②(ごぼう好き・子ども)

「ダークチョコレートの味はするが、チョコレートを食べている感じがせず、なんか嫌だ」。
→本物のチョコレートに慣れている人は違和感を覚える可能性も。

 

一方で筆者(ごぼう好き)は、購入した3袋をあっという間に食べ切ってしまうほど気に入っている。

食べる度に感じるのが、チョコレートとはまた異なるカテゴリーに位置付けられる可能性がありそうだということ。「ごぼう生まれの新スイーツ」という商品名が目指すとおり、新ジャンルとして受け入れられる可能性を感じた。食べた後に残る後味も良い。

ナチュラルローソンで発見|今後の展開に期待

Foovo(佐藤)撮影 都内ナチュラルローソンにて

現在ゴボーチェは、あじかんの公式サイトのほか、2024年11月からはナチュラルローソンでも販売されている

2025年5月初旬、都内のナチュラルローソンを確認したところ、チョコレートコーナーの上から2段目に陳列されていた。12枚入り(52g)で600円(税別)という価格だ。

この先、セブンイレブンやファミリーマートなど他のコンビニにも広がるか、注目したい。

チョコレートに代わる選択肢が、いよいよ現実味を帯びてきた。これまでニュースを追うばかりだったが、実際に代替チョコを口にして、現実味をより強く感じた。

Foovo(佐藤)撮影 都内ナチュラルローソンにて

背景にあるのは、カカオ豆の高騰や児童労働といった、日々の買い物では見えにくい課題だ。実際、欧州ではカカオフリー製品が2023年秋から小売店に並び始め、導入が広がっている。日本でも不二製油など大手企業の参入が進んでいる。

「代替」としてではなく、「新しい美味しさ」として受け入れられるかどうかが、今後の広がりを左右しそうだ。ゴボーチェは、その可能性を十分感じさせる製品だった。ごぼう由来とは信じがたいほどチョコレートらしい口どけで、筆者にとっては十分な“代わり”になり得る。

ただし、ごぼう嫌いには訴求が難しい面もある。焙煎ごぼうを使いつつ、ごぼうの風味をさらに抑えるといった改良が、今後の市場拡大の鍵を握ると思う。

 

※本記事は、プレスリリース公式サイトおよび実際の試食体験をもとに、Foovoによる独自調査を加えて執筆しています。

 

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アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影

 

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