副産物を活用してマイコプロテインを生産するNoMy Japanは、大手製糖会社の日本甜菜製糖(以下、日甜)を含む投資家から、親会社Norwegian Myceliumを通じて125万ユーロ(約2億円)を調達したと発表した。
NoMy Japanは、ノルウェー企業Norwegian Myceliumが日本市場からの関心を受けて昨年1月に設立された日本法人。日甜とは昨年4月に、砂糖の製造工程で発生する副産物の活用を目指して戦略的パートナーシップを発表した。
今回の出資を受けて、二社のパートナーシップをさらに発展・加速させ、NoMyのマイコプロテイン技術の商用化を目指す考えだ。
「副産物を主役にする」日甜アグリーン戦略

出典:NoMy Japan
日甜は1919年からの長い歴史を持ち、北海道を拠点とした国産原料を使用する製糖会社。てん菜を中心に、砂糖・食品、飼料、農業資材、不動産など多角的に事業を展開している。
その中で日甜は、てん菜のCO2高吸収作物としての特徴に注目し、「副産物を主役にする」日甜アグリーン戦略を掲げ、てん菜の副産物・ビートパルプを利用した次世代飼料や、糖蜜と微生物技術を組み合わせたセルロースナノファイバーの開発や、微細藻類などを用いたバイオ燃料の研究に取り組んでいる。
日甜代表取締役の石栗秀氏は、「てん菜を甘味資源として止めることなく、新たな活用としてマイコプロテインを生産することは、世界規模でタンパク質不足が懸念されているプロテインクライシスへの解決策の一つとなります」とプレスリリースで述べている。
今回のNoMy Japanへの出資は「日甜アグリーン戦略」の一環であり、CO2吸収能力の高いてん菜の副産物を生かしたマイコプロテイン技術の商用化を推進する。
NoMy Japanは現在、自社マイコプロテインを活かして食品を開発するパートナー企業を探しており、今月から日本国内で小ロットでのサンプル提供を開始した。問い合わせ過多のため、提供料は100gとなる。
国内でもベンチャー誕生、新製品発売

出典:Haccome
日本国内でマイコプロテインの開発が活発化してきた。
昨年12月には、筑波大学発ベンチャーの麹ラボが設立された。同社の萩原大祐代表は、麹菌に食品の主役になる可能性があることに着目して、麹菌を培養したマイコプロテインを開発している。
昨年、お多福醸造・オタフクソースと提携したアグロルーデンスは3月下旬、米と麹から独自の固体培養で生成したマイコプロテイン「Comeat」を「Haccome(ハッコメ)」ブランドで発売。
「Comeat」を利用した「ガパオ」、「キーマカレー」、「台湾ミンチ」、「肉みそ」など消費者向け製品をオンラインで販売中だ。筆者の家庭でも「ガパオ」が好評だった。実際に子どもからは「また食べたい」との声もあり、家庭の食卓に取り入れやすい選択肢となっている。
食品副産物を有効活用できるマイコプロテインは、食肉のような繊維感のある食感を持ち、タンパク質以外に食物繊維を豊富に含み、これまでの植物性代替肉に代わる素材として注目されている。
今回のNoMy Japanへの出資に見られるように、地方の未利用資源と技術を組み合わせる形での事業化が進めば、タンパク質供給の多様化に加え、地域における食料生産や雇用創出といった波及効果も期待される。地域資源を生かしたマイコプロテインの動きが、日本国内でも本格化しつつある。
※本記事は、プレスリリース(日本語・英語)をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:NoMy Japan