レストランテック

オランダのEatch、ロボット調理による冷凍ミールの一般向け販売を開始──B2BとB2Cの二軸展開へ

 

オランダのロボットキッチン企業Eatchが、ロボットで調理した冷凍食事の一般消費者向け販売を開始した。これまで大手企業向けにサービスを提供してきた同社にとって、初のB2C展開となる。

Eatchは2018年に設立され、「新鮮で健康的で持続可能な食品を、手頃な価格で提供する」ことを理念に掲げてきた。

同社は調理プロセス全体を自動化したロボットキッチンを開発。1日に最大5,000食最大900食/時間)の調理が可能で、モジュール式にすることで、顧客のビジネスに合わせたソリューションを提供している。加熱・調味料の添加・撹拌・洗浄まで一貫自動化しており、小売・フードサービス・ケータリングなど多業種への導入を想定している。

2023年7月には、施設管理サービス会社ISS Facility Services Nederlandを通じ、同社クライアント企業数社にロボットキッチンを導入した

今年5月、Eatchは消費者向けの新サービス「maaltijden.eatch.me」を立ち上げ、冷凍ミールの宅配を開始した(下記写真)。

出典:Eatch(トップページには「ロボットキッチンで調理された、すぐに食べられる冷凍食品」と書かれている)

ロボットキッチンで調理後、冷凍された食事は10種類以上のメニューから選べ、ビーガンメニューも用意されている。価格帯は1食あたり7~9ユーロで、前日の昼12時までに注文すると、翌営業日の8-18時の間に冷凍状態で届く仕組みだ。

Foovoの認識では、Eatchのように、ロボットレストランで調理した冷凍ミールを家庭向けに提供するモデルは、欧州ではほとんど例がない

似た事例としては、スペイン発のRemy Roboticsがある。2023年にニューヨークでロボット調理レストラン「Better Days」を立ち上げ、ロボット中心の食品生産体制で調理された料理を、現在はマイアミ地域でデリバリー・テイクアウト対応で展開している。同社は今後、全米そして海外での展開を視野にいれている

ドイツのGoodBytzも、1日最大3,000食を調理が可能なロボットキッチンを開発しており、ショッピングモール、ホテル、コワーキングスペース、空港などの設置場所に応じた3モデル展開している。今年になり、ドイツのカイザースラウテルン・ランダウ大学への導入を実現した

ただし、GoodBytzの主な用途は現地での提供に限られ、Eatchのようにロボットキッチンをバックエンドとし、冷凍状態で一般家庭へ届ける形態は極めて稀である。

Eatchのロボットキッチンの具体的な導入拠点数は明かされていないが、企業向けにデモ見学を受け付けており、今年春にはネスレがEatchを視察していることも確認されている。

B2B向けのロボットキッチンモジュールの提供と、B2C向けのロボット製冷凍ミール販売というEatchの二軸のビジネスモデルが、今後どのように市場で評価されていくか、注目したい。

 

※本記事は、リンクトインの発表をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Eatch

 

関連記事

  1. Hyphenが世界初のロボットメイクラインを発売、レストラン作業…
  2. コカ・コーラ、ペットボトルなど容器を回収するリバース自販機を発表…
  3. 【現地レポ】シンガポール展示会(Agri-Food Tech E…
  4. カクテルに3DプリントするPrint a Drink、企業向けの…
  5. Wada FoodTechが約7.5億円を調達|9秒で温かい弁当…
  6. ピザハットのロボットレストランがイスラエルに登場
  7. 3Dフードプリンター試食会レポート|日本科学未来館で”未来の食”…
  8. ピザ自販機のBasil Streetが操業停止

おすすめ記事

タバコ植物で培養肉のコスト削減を目指すBioBetterが約14億円を調達

タバコ植物を活用して培養肉の生産コスト削減を目指すBioBetterがシリーズA…

培養肉未来創造コンソーシアム、大阪万博で培養肉の実物を展示|家庭で霜降り肉を作る「ミートメーカー」

「培養肉未来創造コンソーシアム」は、4月13日に開幕した大阪・関西万博で、3Dバ…

原材料と市場投入で見る代替チョコレート・代替カカオの現在地|18社の動向を俯瞰【Foovo独自レポート】

昨年、西アフリカでは干ばつや病害の影響でカカオ豆の収穫量が大幅に減少し、世界的な…

【万博フードテックガイド】──2025大阪・関西万博の注目のフードテック展示を一挙紹介

出典:大阪府・大阪市万博推進局本記事の情報は、記事掲載時点のものです。最新情報は公式サイトをご確…

韓国の培養肉企業CellMEATが約4億7千万円を調達、培養肉の量産とコストダウンを目指す

韓国の培養肉企業CellMEATがプレシリーズAで450万ドル(約4億7千万円)…

培養油脂のMission Barnsが食肉加工企業と提携、培養ソーセージのスケールアップ生産を完了

植物性原料を使った代替肉が普及するなか、代替肉をより本物に近づける試みとして、細…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/07 15:26時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/08 01:26時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/08 05:23時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/07 21:30時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/07 13:29時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/08 00:35時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP