コーヒー

豆タイプの代替コーヒーを開発するベルギー企業Koppieが資金調達

 

代替コーヒーを開発するベルギーのフードテック企業Koppieが、プレシードラウンドで資金調達を実施した。調達額は非公開。

公式サイトによると、Koppieは豆タイプの代替コーヒー開発に取り組んでおり、Foovoの認識では、オランダのNorthern Wonderに続き、豆タイプの代替コーヒー開発に取り組む2社目となる。

Green queenの報道によると、Koppieは2026年半ばまでに市場テストの実施を目指している。

豆タイプの代替コーヒーに取り組む2社目の登場

出典:Koppie

Koppieは公式サイトで、「地元産の豆類を自然発酵させ、内側から力強い風味を引き出すホールビーンブリューを作り上げます。その後、Koppieの豆(実際にはエンドウ豆)をコーヒーのように焙煎することで、豊かで香ばしい深みと複雑さを引き出します」と述べ、コーヒーならではの風味は焙煎前の工程から始まっていることに言及している。

一方、Northern Wonderは粉末製品やネスプレッソ対応品と並行して豆タイプの製品開発も進めており、ルピナス、ひよこ豆、大麦、チコリなどを使用している。

両者は同じ“豆タイプ”であっても、Koppieの公式サイトの記載から、豆のまま使用し、自然発酵によって内部に風味を形成し、その後焙煎するという独自のプロセスを採用しているとみられ、アプローチに違いが見られる。

リスクを分散できるハイブリッド戦略

Preferの代替コーヒー Foovo(佐藤)撮影 2024年4月シンガポールにて

コーヒーはカカオと並び、昨年から価格高騰に直面するコモディティ食品だ。

コーヒー生産量の75%を占めるアラビカ種のICE先物価格は2024年後半に急騰し、2025年2月に過去最高値を記録。現在も従来比で高値で推移している。赤道付近の熱帯地域に依存するコーヒーは、気候変動による干ばつの影響を受けやすく、将来的な安定供給に不安がある。さらに、児童労働や生産者の貧困といった倫理的課題も抱える。

気候変動による影響で、コーヒーが今後も継続的に供給されたり、“コモディティ飲料”でありつづけたりする保証はない。

このような背景から持続可能なコーヒーの提供を目指す企業は、Koppieに限らない。欧州複数国のスーパーに導入済みNorthern Wonder、カカオ・コーヒーの代替を目指すCompound Foods、シンガポールで導入を拡大し、最近粉末タイプのインスタント代替原料発表したシンガポールのPrefer、日本に進出したAtomoなど、さまざまなプレーヤーが登場している。

代替コーヒー市場ではハイブリッド戦略が注目されつつある。

KoppieはGreen Queenの取材で、代替豆と本物のコーヒー豆をブレンドした製品で市場参入する意向を示している。Atomoも昨年1:1の比率でブレンドした製品を発売し、Northern Wonderも昨年のFoovoの取材にハイブリッド製品も検討していると回答している。

ハイブリッド製品での市場参入は、供給環境コストの面でリスクを分散しながら、消費者に味で満足してもらう現実的な戦略といえる。筆者が複数の代替コーヒーを試した経験から、100%の代替コーヒーは既存の味覚に慣れた消費者にとって受容のハードルが高く、本物のコーヒーとのブレンドによって初期の違和感を和らげることができる

筆者が試した限りでも、PreferAtomoのカフェオレタイプや、家庭で本物のコーヒーと代替コーヒー(Northern Wonder)をブレンドして飲んだハイブリッドタイプは、味の満足度が高かった。

オランダ、シンガポール、アメリカ、ベルギーなど、世界各地で開発・導入が進む代替コーヒーは当たり前の選択肢になるのか。今後の動向に注目が集まる。

 

※本記事は、海外メディアをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

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アイキャッチ画像の出典:Koppie

 

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