代替プロテイン

細胞培養向け試薬を開発する英CellRev、シリーズA調達に至らず事業停止へ

共同創業者・CSOのMartina Miotto氏(出典:Chris Green氏リンクトイン)

細胞培養システムを最適化するための培地添加物(試薬)を開発する英スタートアップのCellRev(旧称CellulaREvolution)が管財手続きに入り、事業活動の停止を発表した。

同社CEO(最高経営責任者)のChris Green氏リンクトインで、活動停止の理由として、シリーズAの資金調達に必要な商業的マイルストーンを達成できなかったことを挙げている。背景には、2022年以降の市場環境の変化により「障壁」が高まったことがあると述べている。

現在、共同管財人の委託を受け、Hilco Valuation Servicesが知的財産および有形資産の譲渡希望者を募集しており、オファー期限は2025年9月2日となる

英CellRev、資金調達難で事業停止へ

出典:CellRev

2019年にニューカッスル大学からスピンオフされて設立されたCellRevは以前、血清を使用しない条件で連続培養を行うバイオリアクターを開発していた。2023年12月の培地添加剤「AggreGuard」の発表を機に、2024年からは試薬に特化したライフサイエンス分野へと事業を転換した

AggreGuard」はマイクロキャリアを使用する細胞培養における細胞の凝集を防ぐよう設計された酵素ブレンドとなる。同社はバイオ医薬品、ワクチンメーカー、再生医療開発企業、細胞性食肉(培養肉)企業などにサービスを提供してきた

Green氏投稿によると、同社は、連続接着細胞製造プラットフォームを開発し、60日間の連続培養を実証、戦略的パートナーシップを獲得し、3件の特許ファミリーを出願するなど、着実に成果を積み上げてきた。

ワクチンを切り口とし、ウイルスタイター3倍増加や麻疹プロセスにおけるウイルスピークが早いなど第三者によるエビデンスを取得、最初の商業パートナーシップやパイロットプロジェクトも進行するなど、一定の成果を得ていた。

しかし、シリーズAの資金調達に必要な商業的マイルストーンを達成できなかったこと、2022年以降の市場変化でターゲット市場が大きな打撃を受けたことから、「時間切れとなった」とGreen氏述べている

「CellRevの挑戦は変革的で必要とされている」

共同創業者・CSOのMartina Miotto氏 出典:CellRev

CellRevは今年6月、日本市場を中心に6月から11月にかけて商業パイロット運用を実施するため、日本企業クラレとの戦略的パートナーシップを締結した

協業では、クラレのマイクロキャリアビーズと、CellRevの「AggreGuard」などを組み合わせたトライアルキットの提供を目指しており、クラレが日本でトライアルキットの販売・流通を主導し、CellRevが見込み顧客への技術サポートの提供を想定していた

今回の事業終了の発表はクラレとの提携発表から間もない時期となった。提携自体は前進材料であったものの、商業マイルストーンの達成や資金流入に結び付くまでには時間を要する。結果として、シリーズAの前提となる成果を期限内に示すには時間的に間に合わなかったか、もしくは、提携の発表時点で資金面の時間切れがある程度迫っていた可能性が考えられる。

なお、同社の資金調達は2024年9月が直近となり(調達額は非公開)、調達額は累計で410万ポンド(約8億1,000万円)となる

Green氏は「CellRevの挑戦は変革的であり、非常に必要とされていると確信していますが、時間が足りませんでした」と述べている

CellRevは事業継続を断念する判断となったが、同社が築いてきた知的財産や技術的成果は今後、資産譲渡を通じて他社に引き継がれる見込みである。細胞性食品の分野では、New Age Eatsなど先行企業がバトンを渡してきた事例も複数あり、こうした先駆的な挑戦の積み重ねが業界の発展を形づくっていくことは間違いない。

 

※本記事は、リンクトインの投稿をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Chris Green氏リンクトイン

 

関連記事

  1. 中国の培養肉企業CellXが培養肉のパイロット工場建設を発表
  2. 代替タンパク質を「ニッチ」から「定番」に:業界リーダーが語る普及…
  3. MEATOSYS、農家を中心とした培養肉生産システムを開発 – …
  4. イスラエルの精密発酵企業Imagindairyが米国でGRAS自…
  5. 空気と電気からタンパク質を作るSolar Foodsが約5億4千…
  6. アニマルフリーなチーズを作るChange Foodsが約2.3憶…
  7. オーストラリアのBoldly Foods、植物性サーモン・マグロ…
  8. かつて年間8,000トンを生産──忘れられたマイコプロテインPE…

おすすめ記事

培養牛肉を開発する米SCiFi Foodsが資金調達難で事業を停止

培養牛肉を開発する米SCiFi Foodsが今月、資金調達難から事業を停止したこ…

フードロス削減に取り組むオランダ企業OneThirdが約1億9000万円を調達

フードロス削減に取り組むオランダ企業OneThirdが150万ユーロ(約1億90…

培養シーフードのShiok Meatsが生産コスト50ドル/kgを実現、2023年に培養エビ上市へ

アジアにおける培養シーフードの先駆けであるシンガポール企業Shiok Meats…

アメリカで広がるスムージー自販機Bleni Blends|サラダからピザまで:次世代自販機の成功と撤退

国内でオレンジを搾ってジュースにしてくれる自動販売機が登場する中、アメリカではス…

タバコ植物で成長因子を開発するBioBetterがパイロット工場を開設

培養肉の製造に必要な成長因子を低コストで開発するBioBetterは今月、食品グ…

精密発酵のImagindairy、シードラウンドの資金調達を約35億円で完了

精密発酵で乳製品を開発するイスラエル企業Imagindairyは18日、シードラ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/31 15:48時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/31 02:01時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/31 05:42時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/31 21:48時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(08/31 13:43時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/31 01:03時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP