出典:Nosh.bio
ドイツのマイコプロテイン企業Nosh.bioは先月、菌糸体と牛肉をブレンドしたハイブリッドミンチ製品を、ベルリンのレストランで期間限定提供した。
Nosh.bioが菌糸体をベースとしたハイブリッドミンチ製品を一般向けに提供するのは今回が初めて。9月15日から1週間、ベルリンのレストラン「Speisemanufaktur Adlershof」にてハンバーガー、ミートボール、ラザニアなどの料理として提供された。
さらに同社は、欧州大手食肉加工会社のzur Mühlen Group(ZMG)との提携を発表。ドイツを皮切りにNosh.bioの麹由来成分「Koji Chunks」をZMGの小売網を通じて市場投入する計画が発表された。
Nosh.bio、菌糸体ハイブリッド製品をレストランで提供

レストランで提供された料理 出典:Nosh.bio
Nosh.bioによると、期間中はいずれの日も3時間半のランチ営業が始まってから40分以内に完売するという盛況ぶりだったという。
9月17日には報道関係者向けの試食会も開かれ、同社原料が定番料理でどのように機能するかを実際に示し、フィードバックを得る機会とした。
プレスリリースによれば、来場者は代替タンパク質に特別な関心を持つ層ではなく、一般客が中心だった。76%が「とても気に入った/気に入った」と回答し、82%が食感を高く評価。87%が「また試したい」、82%が「小売で購入したい」と回答し、リピート購買意向の高さが示された。
Nosh.bioはこの結果を、「ハイブリッド製品の消費者への訴求力と、麹由来タンパク質の受容性を示すもの」だとプレスリリースでコメントしている。
同店のシェフは、「調理への組み込みはとてもスムーズで、従来の牛ひき肉を扱うのとまったく変わりませんでした」と述べ、Noshの原料が「生産ラインにそのまま投入できる“ドロップイン型”のソリューション」であることが示された。
欧州小売が推進する植物性50%の目標

出典:Nosh.bio
ベルリンを拠点とするNosh.bioは2022年設立。同社タンパク質は非遺伝子組換えの麹菌を培養して得られる菌糸体で、肉や魚だけでなく、菓子類、乳製品、ベーカリー製品などにも応用できるという。
ZMGとの提携では、代替肉カテゴリからの市場投入を目指す。
発酵プロセスでは農業副産物を原料として利用し、ドレスデンにある旧ビール醸造所など既存の発酵設備を再利用することで、下流工程の価格を低く抑えながら迅速なスケールアップが可能だとしている。
今年初頭には、Böhmisch Brauhaus(1887年に開業した歴史を有する旧ビール醸造所)にある最初の生産施設を改装するために、GRWプログラムを通じて275万ユーロ(約4億8,300万円)の助成金を獲得したと発表した。
オランダでは11社のスーパーが2030年までに、販売するタンパク質の60%を植物由来にする目標を発表している。Ahold Delhaizeもまた、欧州の自社小売ブランドにおいて2030年までに植物由来食品の売上比率を50%に引き上げる目標を発表している。
完全な植物食品への移行をためらう消費者もいる中、Nosh.bioのようなブレンド型の製品は、無理のない形で動物タンパク質の摂取を減らす現実的な選択肢となりうる。代表的なマイコプロテインブランドのQuornも昨年、この観点からハイブリッド製品市場への参入を発表した。
日本でも今年6月、麹ラボが麹菌体を使用した料理の試食会を都内で開催。クラウドファンディング支援者や一般の人を対象に実施され、参加者全員が五段階評価で最高の「期待以上に美味しかった」と回答した。
麹ラボの試食会でも本物の肉と麹菌体を組み合わせたハイブリッドハンバーグが提供された。実際に試食した経験から、国内でも動物性とマイコプロテインを組み合わせたブレンド肉は、完全な植物食品への移行に抵抗を感じる消費者にとって、現実的な選択肢になると感じた。
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アイキャッチ画像の出典:Nosh.bio