ドイツのマイコプロテイン企業Nosh.bioは今月、ドイツ・ドレスデン近郊にある工業規模の自社生産施設を発表した。
同施設は今後4-5ヵ月で稼働を開始する予定で、稼働すると年間2000-5000トンの菌糸体タンパク質を生産できるものとなる。
既存インフラを利用した持続可能なタンパク質生産
2022年設立のNosh.bioは昨年10月、ベルリンの地元醸造所Berliner Bergと、パイロット生産のためにパートナーシップを構築した。この提携には、同じ醸造所でビールと食品を生産できることの実証、Berliner Bergの副産物を活用するという狙いもあった。
同月には、赤身肉のようなマイコプロテインの開発でGinkgo Bioworksと提携。
昨年12月に、100年以上にわたってビールが醸造された旧醸造所に、初の自社生産施設を確保した。同社は、押出成形や添加物に頼らずにタンパク質に筋繊維の構造をもたらす下流装置を特定したと述べており、稼働に向けてこれらの下流装置を同施設に導入していくと思われる。
Nosh.bioは、新たな施設により代替タンパク質の課題となる、持続可能なスケールアップに向けて順調に進んでいると言及。
「ビールの代わりに、既存のインフラを利用して持続可能なタンパク質を発酵させるという、ドイツの新たな醸造の伝統を生み出すことを大変嬉しく思います」とも述べている。
今月にはNosh.bioのタンパク質が牛肉生産と比較して、温室効果ガス排出量を90.7%削減、水使用量を98.7%削減、土地利用率を99.4%削減できることが発表され、食品業界全体の環境負荷を軽減できる可能性が示されている。
用途を限定しないマイコプロテイン
Nosh.bioは肉類や特定分野でのプレーヤーになることよりも、新しいクラスの食品成分を市場に出すことを目指している。
公式サイトに「当社のバイオマスは、特性が限られた他のタンパク質源とは異なり、真にカスタマイズされたアプローチを可能にします」と記載がある通り、肉、シーフード、ベーカリー、乳製品、菓子、飲料、ペットフードなど幅広い用途を挙げている。
例えばアイスクリームでは動物性・非動物性に関わらず、クリーンラベルな安定剤として使用し、融点を40%上昇できるという。ベーカリーでは、ワッフル、ケーキ、ブラウニー、パンケーキなどで卵の代替として使用できるとしている。
最近では、Nosh.bioの代替タンパク質を使用したアイスクリーム、ワッフル、代替豚肉、マヨネーズなどの試食会を開催した。
Nosh.bioは、創業者同士の出会いから、初販売、そして工業規模までを2年以内に実現するとしている。同社が初販売を実現したのは設立から1年強の昨年7月のこと。昨年夏にビアガーデンで一部製品を販売しており、今年、食料品店への導入を目指している。
参考記事
Life Cycle Assessment of Nosh Protein
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アイキャッチ画像の出典:Nosh.Bio