出典:Fork & Good/Orbillion Bio
培養肉を開発する細胞性食品スタートアップの統合が相次いでいる。
先月にはフランスの細胞性食品GourmeyがVital Meatを買収し、「PARIMA」が設立された。8月にはイギリスのUncommon Bioが、細胞性食肉の技術をMeatableとVowに譲渡したことを発表している。
先月31日、細胞性豚肉を開発する米Fork & Goodが、細胞性牛肉を開発する米Orbillion Bioの戦略的買収を発表した。
北米・東アジアに顧客基盤を持つFork & Goodと、欧州・中東に顧客基盤を持つOrbillionが統合され、豚と牛の両方を対象とするグローバルな細胞性食品企業が誕生した。
Fork & Goodの共同創業者兼CSO、Gabor Forgacs氏はプレスリリースで次のように述べている。
「私たちは、世界初の細胞性食肉企業であるModern Meadowを立ち上げた際、“技術がすべてであり、顧客は後からついてくる”と考えて痛い目を見ました。
今は(その教訓を)十分に理解しています。この買収により、顧客基盤とそれを支える技術的レパートリーの双方を拡大できるのです」
Fork & Goodは「利益を最優先する」方針を掲げ、まず中規模レベルで技術と経済の実現可能性を証明したうえで、大規模な拡張に進む方針を示している。
ニュージャージー州の既存のパイロット工場で主要事業と生産を継続し、アラブ首長国連邦(UAE)にあるOrbillionの子会社が中東の拠点として機能する。アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)に拠点をおく同子会社が、UAEでの製造と事業活動を計画しているという。
豚と牛を手がける新たな細胞性食品プレイヤー

出典:Fork & Good/Orbillion Bio
2018年設立のFork & Goodは、豚の筋細胞を用いたシンプルで効率的なプロセスを構築しており、Modern Meadowからスピンアウトされた。同社は昨年2月、スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラムにあわせ、細胞性豚肉と従来の豚肉をブレンドしたハイブリッド肉のブラインド試食会を実施した。
一方、2019年創業のOrbillionは、牛の筋細胞のスケールアップに成功した実績を有し、初期から和牛など高級肉の開発に取り組んできた。2022年には欧州進出を見据え、1,200以上の流通ネットワークを有するオランダの食肉卸業者Luiten Foodと提携。2021年に和牛やラム肉の試食会も開催している。
Luiten FoodのCEO、Lennert Luiten氏は、「私たちのビジョンは、Fork & Goodの細胞性食肉を、馴染みのある肉や植物由来の食品と融合させることで、味覚を満足させ、持続可能な未来を支える新世代の製品への道を切り開くことです」とプレスリリースで述べている。
細胞性食品業界における統合──PARIMAに続く動き

出典:Orbillion Bio
細胞性食品業界では、互いの強みを補完する形での統合が確認されている。
PARIMAのケースでは、それぞれが規制当局に申請を完了していた2社が統合することで、認可地域が拡大し、結果として資金調達の可能性や提携先の開拓が進むなど、市場投入のスピードが加速することが期待される。実際に、統合後のPARIMAはシンガポールで細胞性鶏肉の販売認可を取得している。
Fork & GoodとOrbillionのケースでも、すでに試食会の実績や食肉業者との提携を有しており、統合によって開発対象が広がり、ネットワークが世界規模に拡大する。
研究開発や規制対応に多大な時間と資金を要するこの分野では、実績と技術力のある企業同士が手を組むことで、資金調達や事業提携の機会が広がり、市場投入の加速につながる可能性がある。
Good Food Institute(GFI)は今年発表したレポートのなかで、合併・買収・知的財産の移転が、業界全体の技術や専門知識の普及促進に寄与すると言及している。
3年連続で投資が減退するなか、今回のような買収事例は今後も続く可能性がある。
※本記事は、プレスリリース(①、②)をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Fork & Good/Orbillion Bio




















































