着色料

デンマークのChromologicsが約12億円を調達、赤色3号撤回で精密発酵着色料の商用化が現実味

出典:Chromologics

アメリカで食用赤色3号の使用許可が撤回され、食品・飲料メーカーが熱や酸に安定性のある代替品を求めるなか、精密発酵で着色料を開発するデンマークのChromologicsが700万ユーロ(約12億6,000万円)の資金調達に成功した

Chromologicsは、デンマーク工科大学のスピンアウトベンチャーとして2017年に、Gerit Tolborg氏Anders Ødum氏によって設立された。

同社は今回調達した資金で、欧州食品安全機関(EFSA)およびアメリカ食品医薬品局(FDA)への申請手続きを進めるとともに、大規模なCMO企業との提携で主力製品「Natu.Red」の生産拡大を図る。

熱・pHに安定なサステナブルな赤色着色料

出典:Chromologics

「Natu.Red」は、ヴィーガン・コーシャ・ハラールに対応し、熱・広範囲のpH(2~10)で安定性を示す着色料で、赤色3号の代替として開発された。微生物を用いた精密発酵で製造されるため、野菜や果物から抽出される着色料に比べ、土地、水などの資源利用を抑えられ、季節や地域に左右されない安定生産が期待される。

同社は食品・飲料用途の「Natu.Red」に加え、化粧品や繊維向けの「Sustainly.Red」も開発しており、試験を進めているまた、「Natu.Red」はペットフードでも試験されており、カテゴリの拡大が見込まれる

プレスリリースによると、Chromologicsは過去4年、欧米の90社を超える食品メーカーと共同で試験を実施してきた。

赤色3号撤回の背景

出典:Chromologics

FDAは今年1月、食品および経口医薬品での赤色3号の使用許可を取り消す決定発表した

根拠として、動物(雄ラット)に高用量曝露した2つの試験で癌が確認されたことを挙げている。一方で、FDAはその発がん機序はラット特有で人では起こらないこと、また、食品・経口医薬品での使用が人にリスクをもたらすとの主張は科学情報で裏付けられていないことを明記している。しかし、デラニー条項は「人または動物に癌を誘発することが判明した着色料を禁止」しているため、FDAは赤色3号の使用許可を取り消した。

これにより、食品に赤色3号を使用する企業は2027年1月15日まで、経口医薬品は2028年1月18日までにに製品の処方変更が必要になる

赤色3号は日本や他の国で使用が認められているが、アメリカへ輸出する企業はこの決定に従う必要性が生じる。消費者庁はアメリカの決定を受け、今年2月に開催した添加物部会において、「通常の使用の範囲内では安全性上の懸念はない」と現時点での見解を示している

FDAの決定は、赤色3号を使用している企業に代替品の探索・採用を迫るものであり、この市場環境はChromologicsなどのスタートアップに追い風となる。精密発酵で開発された着色料の認可事例はまだ確認されておらず、食品用途ではPhytolonMichromaなどスタートアップも限られる。Chromologicsが申請を完了すれば、精密発酵着色料の市場投入が現実味を帯びる。

特に、経過措置が終わる2027年1月15日までに、Chromologicsがアメリカで「Natu.Red」の認可を取得できれば、赤色3号を使用している企業による採用が加速する展開も考えられる

今回の資金調達には、Novo Holdings、デンマーク輸出投資基金(EIFO)、Döhler Ventures、Collateral Good Ventures、Synergeticが参加した。Chromologicsの調達総額は約2,000万ユーロ(約36億円)となった。

赤色3号の使用撤回という規制環境の変化が、今回の資金調達を後押しした可能性もあり、代替着色料への関心は今後ますます高まるだろう。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Chromologics

 

関連記事

  1. FDAがSensientのチョウマメ由来の青色着色料を承認
  2. 日本政府、フードテックを国家戦略分野に指定|官民連携で供給力を抜…
  3. 菌類由来の熱安定性に優れたビーガン着色料を開発するMichrom…
  4. イリノイ州が精密発酵の推進に向けて、iFAB Tech Hubに…
  5. 微生物発酵で赤色着色料を開発するChromologicsが約8億…
  6. 植物性着色料を開発中のイスラエルフードテックPhytolonが約…
  7. 精密発酵で着色料を開発するMichromaが約8.4億円を調達
  8. フードテックの国際イベント「Future Food-Tech S…

おすすめ記事

二酸化炭素を使用して代替脂肪を開発するスウェーデンのGreen-On|食料生産から農業と耕作地を取り除くPower-to-food技術

今年1月に発表された「Fat Revolution is coming(脂肪革命…

英Tropic、「12時間変色しないバナナ」をゲノム編集で開発|今月市場投入、賞味期限延長バナナも年内上市へ

ゲノム編集技術を活用し、5億人以上の生活を支えるバナナ、コーヒー、米といった主要…

Fresh Insetがペルーで鮮度保持ソリューション「Vidre+」を登録

鮮度保持ソリューションVidre+を開発したポーランド企業Fresh Inset…

培養魚のBlueNalu(ブルーナル)がヨーロッパ進出へ向け冷凍食品大手のノマド・フーズと提携

培養魚を開発する米BlueNalu(ブルーナル)がヨーロッパ進出へ向け動き出した…

スウェーデンのMillow、オーツ麦と菌糸体でつくる代替肉の大規模工場を開設

2025年6月4日更新スウェーデン、ヨーテボリを拠点とするフードテック企業Millowは先月…

代替タンパク質の普及促進を行う国際シンクタンクGood Food Institute(GFI)が日本拠点を設立

代替タンパク質の普及促進で主導的役割を担う国際シンクタンクGood Food I…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovoセミナー開催のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP