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イスラエルのBeliever Meats、米国で細胞性鶏肉の販売認可を取得|レストランから家庭へ広がる細胞性食品

 

イスラエルの細胞性食品スタートアップBeliever Meatsは今月、アメリカで細胞性鶏肉の販売認可を取得した

海外企業がアメリカで細胞性食肉(培養肉)の認可を取得するのは今回が初めて。

今年7月にアメリカ食品医薬品局(FDA)の安全性審査を完了し、ノースカロライナ州の工場がアメリカ農務省(USDA)から検査証書(Grant of Inspection,GOI)と表示認証を取得したことで、Believer Meatsは細胞性鶏肉の生産と販売をできるようになった。

FDAの「動物培養細胞を用いたヒト向け食品」インベントリには同社事例が掲載されており、アメリカでGOOD MeatUpside FoodsWildtypeMission Barnsに続く5社目の認可事例となった。トランプ政権発足以降では3社目の事例となる。

細胞性食品の認可状況 2025年10月31日時点 Foovo作成

一方、米国7州(フロリダアラバマミシシッピモンタナインディアナネブラスカテキサス)では販売禁止法が導入され、市場環境はなお不確実である。今回の認可が、新たな反対運動を誘発する可能性もある。

Believer Meatsは今回の成果について、「アメリカでの細胞性鶏肉の商用生産と販売、および国際市場への輸出を開始できる大きなマイルストーン」だと述べている

同社は今年、ノースカロライナ州ウィルソンに約18,580㎡(20万平方フィート)の大型工場の建設を完了させた。イノベーションセンターや試食キッチンを併設したこの施設は「世界最大」の細胞性食肉工場とされ、年間12,000トン以上の生産見込む

2018年設立のBeliever Meatsは、2021年6月にイスラエルに世界初となる細胞性食肉工場(日産500kg)を開設ネスレCPフーズといった大手企業とも提携している。

レストランから家庭へ広がる細胞性食品

出典:Believer Meats

アメリカで販売認可を取得した4社はいずれも販売を実現している。

GOOD MeatUpside Foodsは2023年にアメリカのレストランで販売を実現した(現在、アメリカでの販売は確認されていない)。細胞性サーモンのWildtypeは現在、オレゴン、サンフランシスコ、シアトル、コロラドの4都市のレストラン提供している

細胞性豚脂肪を開発する米Mission Barnsも先月、レストラン提供を実現11月1日には、カリフォルニアのスーパーマーケットBerkeley Bowlで家庭向けの細胞性ミートボール製品を1日限定で販売するほか、買い物客向けに店頭で「過去最大規模の」試食提供も行い、ついに小売デビューを果たす。同スーパーでは来年2月までにさらに3回の無料試食会を予定している(12月2日、2026年1月17日、2月21日)。

出典:Vow

シンガポールでも今月、ヒト向けの細胞性食品として3社目の販売認可事例でた。オーストラリアではVow細胞性ウズラの家庭向け製品のオンライン販売開始した数量限定)。シンガポールでもGOOD Meatの小売販売が継続されている

世界的に細胞性食品の販売量はまだ限られるものの、イート・ジャストが2020年12月にレストランで提供後、翌年に世界初の細胞性鶏肉のデリバリー実現して以降、一般消費者が細胞性食肉に触れる機会は確実に広がりつつある。

 

▼細胞性食品の認可・申請状況まとめ(Foovo調査/2025年10月31日時点)

細胞性食品の認可状況(2025年10月31日時点) Foovo調査により作成

 

 

Foovoのインスタグラムでは、これまでの細胞性食品の認可状況をオリジナル図解で紹介しています。過去の動向を振り返りたい方、流れを把握したい方におすすめです。

 

※本記事は、リンクトインの発表をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

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アイキャッチ画像の出典:Believer Meats

 

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