新しい食

イスラエルDouxMatokの砂糖を減らしても甘さが変わらない画期的な砂糖「Incredo Sugar」、北米で量産化へ

 

このニュースのポイント

 

●イスラエルDouxMatokが砂糖を減らせるIncredo Sugarを開発

●糖度を変えず、砂糖の使用量を40%減らせる

●この技術は塩にも適用可能

2021年に北米で量産化へ

●砂糖のキャリア(運び屋)をこれまでのシリカから非公開のミネラルに変更

 

 

イスラエルのDouxMatokが砂糖好きに嬉しい商品を開発している。

砂糖を減らしても甘さが変わらないIncredo Sugarだ。

DouxMatokは、食べても問題のない運び屋「シリカ」に砂糖をのせることで、少ない量でも砂糖をなめたときに甘く感じられる仕組みを考えだした。

砂糖をほかのもので代替するのではなく、少ない量で同じ甘さを感じられるスーパー砂糖Incredo Sugarだ。

Incredo Sugarを使うと砂糖の使用量を40%減らせる

Incredo Sugarが摂取されると、砂糖は体内で代謝され、シリカはそのまま体外に排出される。

シリカとは

 

シリカは食品添加物として広く使用される物質。

食品添加物に使用されるシリカは、結晶構造を持たない非晶質シリカで、体内で消化吸収されずに、そのまま体外に排出される。

DouxMatokの公開特許からも、砂糖を減らしても甘さは通常の砂糖と遜色ないことがうかがえる

出典:US2016/0242439 A1

 

Incredo Sugarの仕組みを図解解説

DouxMatokは当初、「運び屋(キャリア)」にシリカを使っていた。

シリカには微細な隙間がたくさんある。

公開特許によると、DouxMatokが開発したIncredo Sugarは甘味料と運び屋(キャリア)から構成される。キャリアの粒子径は1μm(0.001 ミリメートル)以上で、キャリアに砂糖などの甘味料が搭載される仕組みだ。

砂糖がシリカに吸着するイメージ 運営者が作成

まず、シリカなどキャリア表面にある多数の隙間(孔)に砂糖が入り込む(上図)。

砂糖をたっぷりのせたキャリアは重くなる。味覚受容体まで運ばれると、重さゆえに味覚受容体に長くとどまる。こうして、砂糖を効率よく味覚受容体に渡すことができ、少ない量の砂糖で同じ甘味を感じられるようになる

公開特許によると、キャリアには、シリカ、多孔質シリカ、非晶質シリカ、キトサンなどを使うことができるという。

当初はキャリアにシリカを使っていたが、現在は匂いがなく、ゼロカロリーの非公開のミネラル物質を使っている。これにより、効果が向上したという。

DouxMatok公式サイトによると、砂糖のほかに塩でも適用可能だ。塩分、糖分が気になる人にとって、味付けを変えずこれまでより健康な食事を楽しめるようになる。

Lanticと組んで北米で量産化へ

DouxMatokは今回、砂糖メーカーLanticが2021年から北米で、Incredo Sugarを量産化することを発表した。

2018年には欧州砂糖メーカーのSudzuckerと提携している。

今回の発表をうけて、欧州だけでなく北米でもDouxMatokのIncredo Sugarを産業利用できるようになる。Lanticが製造を担当し、販売からマーケティング施策はDouxMatokが担うという。

といっても、米国でIncredo Sugarを使った製品の販売は2021年後半になる見通し

北米で量産化されるのは、非公開のミネラルを使う改良版キャリア。DouxMatokは繊維を使うキャリアも現在開発中とのことで、公開特許の記載からすると、キトサンかもしれない

 

同じく甘味料開発に取り組む企業として、ネスレは、少ない量でも糖度を維持するよう砂糖を再構成する技術を開発、Joywellは発酵技術を利用して植物性の砂糖代替物を開発している。

Melibioは本物のハチミツと同じ栄養特性を備えた人工ハチミツを開発している。

DouxMatokは2014年に設立されたイスラエル・テルアビブのスタートアップ。クランチベースによると、これまでに総額3020万ドル(約31億円)を調達している。

 

参考記事

DouxMatok to Scale Production of Its Sugar Tech in N. America with Lantic

Method for producing sweetener compositions and sweetener compositions (US20160242439A1)

 

関連記事

  1. コロラド州の植物肉バーガー企業が米MeliBioの代替ハチミツを…
  2. 植物細胞培養でカカオを開発するKokomodoが約1.1億円を調…
  3. 米Pairwise、アメリカ初のCRISPR編集食品を発売
  4. 明治ホールディングス、細胞培養チョコレートの米Californi…
  5. 精密発酵でアロマを開発するデンマークのEvodiaBioが約11…
  6. 砂糖削減に取り組むBetter Juice、ドイツにパイロット施…
  7. ドイツのPlanet A Foodsが代替チョコレートをスーパー…
  8. ゲノム編集で野菜・果物に新しい命を吹き込む米Pairwiseが約…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

ビールの醸造で発生する廃棄大麦をアップサイクルするReGrainedとは

アメリカ、デラウェア州を拠点とするReGrainedは、ビールの醸造で発生する大…

牛に頼らず酵母で乳タンパク質を再現するフランス企業Bon Vivant

フランス、リオンを拠点とするスタートアップ企業Bon Vivant(ボン・ビバン…

培養肉企業アレフ・ファームズ、培養コラーゲン事業への参入を発表

※写真はアレフ・ファームズが2024年の上市を目指す培養コラーゲンのプロトタイプ…

米Bowlton Kitchensの1時間に300の調理が可能な料理ロボット、在庫管理も自動化

このニュースのポイント●Bowlton Kitc…

英培養肉企業Ivy Farmとバイオテック企業BSF Enterprise、中国進出に向けて提携

イギリスの培養肉企業3D Bio-Tissuesを所有する英バイオテック企業BS…

中国代替肉企業Hey MaetがプレシリーズAで数百万ドルを資金調達

コロナ後に誕生した中国発の代替肉スタートアップ企業Hey Maetが再び資金調達…

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(07/26 13:09時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/26 22:36時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/27 02:20時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/26 19:03時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/26 11:34時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(07/26 22:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP