デリバリー

まだ食べられる食品を定期宅配するImperfect Foodsが約99億円を調達

 

アメリカ農務省(USDA)によると、アメリカでは供給される食料の30-40%が廃棄されており、これは1610億ドルの食品に相当するとされる。

膨大な食料廃棄量を削減するため、アメリカは2030年までに食品廃棄物を半分にするという目標を設定している。

国をあげてフードロス削減に取り組むなか、サンフランシスコを拠点とするImperfect FoodsはこのほどシリーズDラウンドで9500万ドル(約99億円)を資金調達した。

Imperfect Foodsはフードロス問題に取り組むため2015年に設立されたスタートアップ企業で、売れ残った商品や見た目が悪くなった食材を販売している。

出典:Imperfect Foods

形が歪んだりして見た目が悪い食品を消費者に直接販売することで、「まだ食べられる食品」の廃棄量を減らそうとしている。

当初は、売れ残ったり、見た目が悪くなったりした果物や野菜などを箱詰めして宅配するサービスを開始した。これらの食品は、食料品店での販売価格より最大30%オフの割引価格で提供される。

2019年には食品の範囲を広げ、肉や乳製品、コーヒー豆、病院などの配膳室にある食品といった、ほかのカテゴリーにも対応した。

昨年には限定したエリアのデリバリーサービスから、全国規模の食料品サービスへと規模を拡大

出典:Imperfect Foods

現在は、アメリカの中部、西部、南部、中西部、北東部、西海岸でサービスを提供している。

新型コロナの発生を受け、アメリカでは食料品をオンラインで購入する人が増えている。

2025年までにオンラインでの食料品購入は2500億ドルに達すると見込まれる。これは食料品売上全体の21.5%を占め、新型コロナ発生前の1.6倍以上に増加するという。

Imperfect Foodsのプレスリリースによると、2020年は前年比3桁に成長したという。

フードロスを削減するサブスクデリバリー

Imperfect Foodsはユーザーの好みに合わせて、週毎、または2週間毎に注文内容を提案してくれる。

ユーザーは注文内容を自由にカスタマイズでき、Imperfect Foodsにあるものなら追加したり、削除したりできる。

出典:Imperfect Foods

注文した商品は毎週、同じ曜日に配達される。

もしある週に出張などで不在になる場合は、宅配をスキップすればよい。1回の送料はエリアによって異なるが、4.99ドル~8.99ドルとなっている。一部、低所得層の高齢者向けに送料無料のサービスも提供している。

配達は、Imperfect Foodsまたは他社の配達員が自宅まで届ける流れで、配達中、ユーザーは送られてくる追跡リンクから状況を確認できる。

商品が自宅に届くと、確認メールが送付される流れとなっている。

自宅だけでなく、学校や寮、会社への配達にも対応しているという。

資金調達額は220億円以上

Imperfect Foodsはまだ食べられる食品の廃棄量を40%削減するという目標を掲げて、Ben Simon氏とBen Chesler氏によって2015年に設立された。

現在のユーザー数は35万人を抱え、2020年は前年度に比べ三桁に成長したという。

新型コロナウイルスの発生で、環境に優しい食品システムに取り組む同社の活動はさらに重要度を増した。

空港のファーストクラス用の残った食事や、使われていない映画館からポップコーン粒を買い取るなどした。

出典:Imperfect Foods

同社は今回調達した資金で、既存施設の収容規模と品揃えを2倍にするとしている。

2020年5月にもシリーズCラウンドで7200万ドルを調達しており、これまでの調達総額は2億1千万ドル(約220億円)となる。

今回のラウンドはInsight Partnersが主導した。

米国でImperfect Foodsと似たサービスを提供するMisfits Marketもこれまでに1億ドル以上を調達している。

日本でも広がるフードロス削減への取り組み

日本でもまだ食べられるのに捨てられる食品の廃棄量削減に取り組むサービスが増えている。

東京ガスがスポンサーを務めるjunijuni(ジュニジュニ)もその1つで、賞味期限間近の商品や、パッケージが変わった商品、過剰に生産した商品などを、割引価格で提供している。

3980円以上購入すると全国へ送料無料で届けてくれる。

Imperfect Foodsのように野菜・果物の生鮮食品は取り扱っていないが、日用品やペット食品までそろえている。

※Junijuniサイトは現在確認できない(2024年10月4日追記)

会員10万人を有するKURADASHIは最大97%安く商品を販売し、売上の一部を社会貢献活動団体へ寄付する、社会貢献型のショッピングサイト

野菜、果物、肉や日用品まで配達してくれるサービスを提供している。

豊洲市場で始まったフードロス削減のサービス「豊洲市場ドットコム」も、Imperfect Foodsに近いサービスだ。

新鮮な魚介類、野菜、果物など旬の食材が全国から毎日届く豊洲市場では、鮮度が落ちてしまった食材は加工食品に使われたり、廃棄されたりしている。

こうしたまだ食べられるのに廃棄されてしまう「選りすぐりの食材」を宅配で届けるサービスを提供している。水産品、肉類、スイーツ、野菜、果物など幅広い商品が用意されている。

 

参考記事

Imperfect Foods Raises a $95M Series D Round

Imperfect Foods Raises $72M to Expand Delivery of Ugly Produce and Pantry Goods

 

アイキャッチ画像の出典:Imperfect Foods

 

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