代替プロテイン

蜜蜂を使わずにハチミツを作る米MeliBioがプレシードで約9400万円を調達

 

 

代替肉、代替ミルクなど代替タンパク質に取り組む企業が増える中、日本ではまだなじみのない微生物発酵が海外では盛り上がっている。

日本のスーパーに並ぶ代替肉は大豆を使う大豆ミートなど植物由来のものが主流だが、海外では微生物発酵による発酵タンパク質を使った商品がすでに市場に出回っている。

投資動向にもその傾向は現れており、2020年に微生物発酵に集まった投資額は前年の2倍になっている。

その中で、微生物発酵を活用し、最もユニークといえる食品開発に取り組むスタートアップといえば、MeliBioだろう。

他社が肉、乳製品、魚の開発に取り組む中、MeliBioは蜜蜂を使わないハチミツを開発している。

同社は先月、プレシードで85万ドル(約9400万円)の資金調達を実施した。同社の代替ハチミツは正式リリースに先立ち、年内に最初のクライアントに販売される

「地球上からミツバチが消えたら、人間は4年しか生存できない」

出典:MeliBio

MeliBioは2020年に設立されたカリフォルニア、バークレーを拠点とするスタートアップ。

精密発酵、合成生物学、植物科学を活用して分子的に同じハチミツを開発している。

受粉を助けるミツバチは作物の栽培に不可欠な存在だが、生息地の破壊、農薬の使用、気候変動によって減少の一途をたどっている。

世界の作物の3/4がミツバチなどの受粉に依存していると言われ、ミツバチの減少は世界的な食料システムに深刻な影響を及ぼす。

最近の研究によると、アメリカで7つの作物を調べた結果、リンゴ、チェリー、ブルーベリーなど5つの作物はミツバチ減少の影響を受けることがわかっている。

出典:MeliBio

ミツバチの減少がもたらす影響について、アインシュタインは次のように述べていた。

「地球上からミツバチが消えたら、人間は4年しか生存できない」

MeliBioは2025年には140億ドル規模の市場に達すると見込まれるハチミツ市場をターゲットに、地球上の動植物に不可欠なミツバチを代替ハチミツで救出することを目指している

CEOのDarko Mandich氏は次のように述べている。

「イノベーションを通じてこの業界に持続可能性をもたらさなければ、ミツバチと人間に深刻な害を及ぼす可能性があります。そこで、ヨーロッパからカリフォルニアへ移り、動物を使わずに動物製品を作るコミュニティに参加することを決めました」(Darko Mandich氏)

2022年前半の市場投入を目指す

出典:MeliBio

MeliBioによると、まず外食産業に原料として代替ハチミツを提供する。正式リリースに先立ち、年末までに最初のクライアントへ代替ハチミツを提供する(ソフトローンチ)。

この注文は、同社がアクセラレーターBig Idea Venturersのプログラム参加中に注文を受けたものだという。

現在、数カ国の「潜在的パートナー」と交渉中で、2022年前半に商品化したいと考えている

今回のラウンドに参加したBig Idea Venturesは、MeliBioのハチミツに食品業界だけでなく、スキンケア、化粧品、医薬品へ応用できるポテンシャルがあるとみている。

Aaron M. Schaller氏(左)とDarko Mandich氏(右) 出典:MeliBio

今回のラウンドにはニューヨークを拠点とするアクセラレーターBig Idea Ventures、カリフォルニアのベンチャーキャピタルJoyance Partners18.ventures、オーストラリアのSparklabs Cultiv8などが参加した。

Big Idea VenturesはEvo Foods(代替卵)、Orbillion Bio(培養肉)、Shiok Meats(培養シーフード)、Grounded Foods Co.(代替チーズ)、ZhenMeat(代替肉)、biftek.co(培養肉)などの多くのフードテック企業に投資している。

MeliBioはDarko Mandich氏Aaron M. Schaller氏が設立したスタートアップ企業。これまでの調達総額は85万ドル(約9400万円)となる。

 

参考記事

MeliBio Raises a Sweet $850,000 Pre-Seed Round for Bee-Less Honey

Fermentation-Based MeliBio Closes US$850K Pre-Seed To Make Real Honey Without Bees

 

関連記事

 

関連記事

  1. おがくずと微生物で脂肪を開発するエストニア企業ÄIOが約1.4億…
  2. ダノンが精密発酵企業Imagindairyに出資、細胞農業企業で…
  3. 韓国の培養肉企業SeaWith、2030年までに培養ステーキ肉を…
  4. 【世界初】The EVERY Companyが動物由来の卵と同等…
  5. Believer Meats、培養肉の生産拡大に向けてGEAと戦…
  6. 大手乳業メーカーLeprino FoodsとオランダのFoodi…
  7. タイソンが出資するNew Wave Foodsが代替エビをアメリ…
  8. インドNymbleの料理ロボットJulia(ジュリア)がSKS2…

おすすめ記事

インド発!ドーサ、ロティ、ビリヤニを作るMukunda Foodsの自動調理ロボット

日本でも人気の高いインド料理。このインド料理を自宅で手間をかけずに作れる…

イスラエルのForsea Foodsが世界で初めて培養うなぎの試作品を発表

イスラエルの培養魚企業Forsea Foodsが培養うなぎの開発に成功し、初とな…

ネクストミーツが代替肉でアメリカ市場に本格進出、代替ミルクの国内D2Cもスタート

日本のフードテック企業ネクストミーツがアメリカに本格進出する。同社は焼肉…

イスラエルのSuperMeat、培養肉の生産コスト削減を発表-100gあたり約400円で商用化に一歩前進

イスラエルの培養肉企業スーパーミート(SuperMeat)は今月、アニマルフリー…

精密発酵でカゼインを開発するEden Brewが約37億円を調達

オーストラリアの精密発酵企業Eden BrewがシリーズAラウンドで2,500万…

ドイツ企業Infinite Rootsの菌糸体由来肉が韓国上市へ|マイコプロテインの2024年注目トピック

ドイツの菌糸体スタートアップ企業Infinite Roots(旧称Mushlab…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/18 14:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/18 00:10時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/18 03:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(01/17 20:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/18 12:39時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/17 23:23時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP