代替プロテイン

Back of the Yards Algae Sciences(BYAS)が植物性シーフード用の旨味成分を開発

 

シカゴを拠点とするBack of the Yards Algae Sciences(以下、BYAS)は、インポッシブルフーズの独自成分「ヘム」に代わるスピルリナ由来のヘムを開発していることを知られる。

BYASのヘムは遺伝子組換え技術を必要としないため、ビヨンドミートをはじめとするインポッシブルフーズの競合の植物肉をさらに本物に近づけるものとして期待が寄せられている。

このBYASが、新たに代替シーフードをアップデートさせる旨味成分を開発したことが明らかにされた。

Green queenの報道によると、新しい旨味成分AHA502は、藻類をベースに作られており、植物性の魚、エビ、シーフードに組み込んで使用することで、植物性シーフードの味と風味を本物のシーフードに近づけるものとなる。

AHA502を使用したビーガンマグロ寿司 出典:Back of the Yards Algae Sciences

BYASの旨味成分AHA502は、有機的に栽培された海藻を原料に、廃棄物を極力出さず、低エネルギー消費なやり方で製造される。

同社は、植物性の代替シーフードが社会に定着するには、代替シーフードが「信じられないほどおいしいこと」が不可欠だと考えている。

BYASは自社の成分について、「味と旨味を変革させる可能性があるもの」で、植物性と細胞培養の差を縮めるものだと自信を見せる。

多くのスタートアップが直面する、植物性でありながら本物のようなシーフードの食体験実現に足りないものをBYASの旨味成分が補うことができれば、New Wave FoodsOcean Hugger Foodsなどの企業にとって追い風になる。

BYASによると、藻類ベースの新しい旨味成分は、代替シーフードのブラインドテストで「絶賛」されたという。このブラインドテストでは、ビーガンなクラブケーキ、マグロ寿司に使用された。

出典:Back of the Yards Algae Sciences

過剰漁獲により、2048年までに魚はいなくなるといわれている。

乱獲により絶滅危惧種に指定されているクロマグロなどの魚がいなくなった場合、食物連鎖が崩れ、生態系への影響が危惧される。

また、養殖では、過密な飼育環境に伴う病気の予防、成長促進を目的として抗生物質が使用される。こうした抗生物質が残留した食品を人が摂取すると、耐性菌(抗生物質が効かなくなった細菌)を生み出す可能性が懸念されている。

魚に残留するマイクロプラスチック、水銀による影響などの問題も指摘されており、持続可能な代替シーフードが求められている

出典:Back of the Yards Algae Sciences

代替魚のシェアは代替タンパク質全体ではまだ小さいものの、2020年だけで過去5年間に集まった調達額の66%を占めるなど注目が集まっている。

New Wave FoodsOcean Hugger FoodsHookedのように、代替シーフード企業の多くは自国で市場に出し始めているところが多く、ビヨンド・ミート、インポッシブルフーズのように「代替肉といえばこの2社」という状況には程遠い

これは逆を言えば、市場に「空白」のある状態ともいえ、近年、細胞培養による培養シーフード、植物性シーフードでこの空白を狙うスタートアップが相次いで登場している。

培養魚については年内にテスト販売のフェーズまでいくかもしれないという状況であり、BYASが代替魚市場に入り込む余地は十分にある。

 

参考記事

Umami Tech: Chicago Algae Heme Startup BYAS Develops Flavouring To Elevate Plant-Based Seafood

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Back of the Yards Algae Sciences

 

関連記事

  1. 英Ivy Farm、欧州最大の培養肉パイロット工場をオープン
  2. 【世界初】米The Every Companyがアニマルフリーな…
  3. カナダのThe Better ButchersとGenuine …
  4. ADMが精密発酵スタートアップNew Cultureと戦略的パー…
  5. 微生物を活用してアニマルフリーなチーズを開発するFormo、年内…
  6. イスラエルの培養肉企業Believer Meats、アブダビでの…
  7. ドイツ企業Nosh.Bioがマイコプロテインを工業生産する自社施…
  8. 培養肉生産用のアニマルフリーな血清を開発するMultus Med…

おすすめ記事

培養肉企業アレフ・ファームズが約116億円を調達、2022年に最初の商品の販売へ

細胞培養でステーキを開発するイスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズが、シリーズ…

Hyper-Robotics、「箱」の中でロボットがピザを作る完全自動化レストランをローンチ

イスラエルで完全自律型のロボットレストランを開発するHyper-Robotics…

チョコレート会社創業者が立ち上げたNukoko、そら豆由来のカカオフリーチョコレートを来年上市へ【創業者インタビュー】

左から共同創業者のKit Tomlinson氏、David E Salt教授、Ross Newton…

南米を代表するチリのフードテック企業NotCo、シェイク・シャック創業者ダニエル・マイヤー氏から支援を受ける

アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏から支援を受けるチリの代替ミルク企業NotCoが…

タピオカティーロボットで未開拓市場を狙うBobacinoが約2.9億円を調達

完全に自動化されたタピオカティーロボットを開発する米スタートアップBobacin…

【現地レポ】カナダのNew School Foods、ホールカットの植物サーモンを米国で2024年に発売へ

カナダ、トロコンを拠点とするNew School Foodsはホールカットの植物…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/23 16:09時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/24 02:38時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/24 06:16時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/23 22:09時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(10/23 14:09時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(10/24 01:27時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP