イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatは先月、9700万ドル(約110億円)を調達した。同社は今年5月に1億7000万ドルを調達しており、これにより調達総額は2億6700万ドル(約305億円)となる。
このラウンドにはUBS O’Connor、Graphene Ventures、K3 Ventures、Resilience Reserve、Fernando Chico Pardo氏などが参加した。GOOD Meatは調達した資金で培養肉の研究開発を加速する。
培養肉で今年最大の調達総額
イート・ジャストは昨年12月に世界に先駆けてシンガポールで培養肉の販売許可を取得したアメリカのスタートアップ企業。同月、レストラン1880で培養肉を使った料理が販売された。4月にはシンガポールで世界初の培養肉料理のデリバリーを実施。
5月には培養肉部門GOOD Meatが約184億円を調達した。
同月、レストラン1880に続き、シンガポールのJWマリオット・ホテル・シンガポール・サウスビーチにある広東料理レストラン「Madame Fan」でも培養肉が導入された。同レストランは、1日の決められた時間帯、動物肉を培養肉で完全に置き換えることを発表した。
培養肉分野では今年になってから巨額の資金調達が続いている。イスラエルのアレフ・ファームズは7月に約116億円を調達し、9月にはレオナルド・ディカプリオ氏から出資を受けているが、1社が調達した額としては、GOOD Meatの305億円は今年最大規模となる。
今回の資金調達に加え、GOOD Meatは新しいスタッフ2名の採用を発表した。元米国農務長官・元米国下院議員のダン・グリックマン氏が諮問委員会に加わったほか、アメリカの化学大手デュポンの元副社長であるジム・ボレル氏が取締役会に加わった。
2030年までに培養肉は動物価格と同等価格に
これまで培養肉の販売を許可した国はシンガポールのみだが、親会社であるイート・ジャストは9月、カタールのウムアムフリーゾーンに培養肉の生産施設建設を発表している。
生産施設建設のために、同社はDoha Venture Capital(ドーハベンチャーキャピタル)とQatar Free Zones Authority(QFZA)と提携。この工場には培養肉部門GOOD Meatに続き、代替卵部門のJUST Eggも入る予定。
カタール当局はGOOD Meatの培養鶏肉の販売を「すぐに」承認する意向を示しており、シンガポールの次の国がカタールとなる可能性がでてきている。
アメリカで培養肉を販売するにはFDAが承認する必要があり、カタールとアメリカどちらが先にGOOD Meatの培養肉を承認するかが注目される。
マッキンゼーの最新の報告によると、過去10年で培養肉の生産コストは99%削減された。ヒト全ゲノムシーケンスと同じ軌道をたどるならば、培養肉は2030年までに従来の動物肉と同等価格を実現することが可能となる。
マッキンゼーは、生産プロセスの最適化、規模の拡大によってコストの約75%を削減でき、残る約25%は研究開発の微調整で削減できると分析している。
イスラエルのFuture Meatのように、植物肉をブレンドすることで110gあたり4ドルまでコスト削減している事例もあり、培養肉の低コスト化が進んでいる。
参考記事
GOOD Meat Raises $97M, Bringing Its Total Funding For Cultivated Meat To $267M
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アイキャッチ画像の出典:イート・ジャスト/GOOD Meat