代替プロテイン

Avant Meatsがシンガポールに新しい研究施設・パイロット工場建設を発表

 

シンガポールにおけるフードテックが加熱している。

シンガポールは昨年12月に世界で初めて培養肉の販売許可を承認した。承認された米イート・ジャストの培養肉はレストランで販売され、今月からは培養肉料理の宅配サービスも開始されている。

シンガポールはフードテックを成長産業と位置付け、世界の培養肉企業に早期の承認申請を奨励している。この「招き」に応じ、もう1社の培養肉スタートアップがシンガポールでの足固めに乗り出した。

Avant Meatsがシンガポールに新しい研究施設・パイロット工場建設を発表

香港発の培養魚に取り組むAvant Meatsはシンガポールに新しい研究施設・パイロット工場を建設することを発表した。

これはシンガポール経済開発庁(EDB)の支援によるもの。

Avant Meatsは細胞培養により中国で人気のある魚肚(魚の浮き袋のこと)・ナマコを開発している。昨年11月には培養魚の切り身を発表した。

今回発表された新施設の建設計画は、培養魚の生産コスト削減成功のニュースに続くものとなる。

出典:Avant Meats

Avant Meatsは先月、培養魚の生産コストを90%削減したことを発表

さらに、中国のバイオ医薬品企業QuaCellとの提携も公表。製造基盤のあるQuaCellのプラットフォームを活用し、さらに75%のコストダウン、大量生産実現のタイムライン短縮化を目指すと発表していた。

シンガポールに研究施設・パイロット工場の建設を決めたことにより、シンガポールが現時点で世界で「最初に」、かつ「唯一」培養肉の販売を許可している国であることを考えると、Avant Meatsの商用化の時期がさらに早まることが予想される。

共同創業者でありCEOのCarrie Chan氏は今回の発表について次のように述べている。

「シンガポールは次のステップであるスケールアップのために、明確な規制、国際的な資質、十分な可能性を私たちに提供してくれます」(Carrie Chan氏)

シンガポールは海外フードテック企業の飛躍の場に

シンガポールは都市国家であり、農業用地は国土のわずか1%。

同国の食料自給率は10%で、これまで食料の90%を輸入に頼っていた。しかし、現在は細胞から作る培養肉や、アグテックに取り組む企業に積極的に投資している。

その背景には、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の食品サプライチェーンが遮断されたことが大きく関係する。

農業用地が国土のわずか1%であるシンガポールは、フードテック・アグテックを次の成長産業と位置付け、2030年までに食料自給率を30%まで引き上げる新たな目標を打ち出している

こうした成長戦略に乗じて、Avant Meatsのほかにもシンガポールに拠点を構えるスタートアップは増えている。

Avant Meatsの創業者Carrie Chan 出典:Avant Meats

培養肉のほかに代替卵を開発するイート・ジャストは、シンガポールに建設する工場で高まる植物性代替卵の需要にこたえる。同社も工場建設でEDBの支援を受けている。

アニマルフリーな乳製品を開発するパーフェクトデイは、昨年12月にシンガポールに研究開発拠点を開設することを発表した。

スイスのプロセステクノロジーに特化したBuhler(ビューラー)とスイスの世界最大の香料メーカーGivaudan(ジボダン)は、植物ベース食品のためのイノベーションセンターをシンガポールに建設することで協業している。

海外企業だけでなく、シンガポールで登場した細胞農業スタートアップには、代替母乳を開発するTurtleTree Lab、培養ロブスターに取り組むShiok Meatsがいる。

2023年に培養魚を市場へ投入

Avant Meatsのパイロット工場建設の発表は、培養魚の業界では最新のニュースとなる。

同じく細胞培養により培養魚を開発するアメリカのBlueNaluは今年1月、年内にパイロット工場を開設すると発表した。

これが完成すると、1週間に約90kg~22kgの代替水産物の生産が可能となる。

Avant Meats

Avant Meatsが予定するパイロット工場の生産能力の詳細は不明だが、培養魚の生産がスケールアップすれば、販売価格の低下にもつながる。

昨年の報道では今年の商品化を目指していたが、今回の発表によると、市場投入のタイムラインを2023年に設定している。

Green queenの報道によると、同社は昨年12月の約3億2000万円の資金調達に続き、現在、資金調達を実施している。

新たな資金調達とシンガポール政府のバックアップを武器に、Avant Meatsは約604億ドル規模のシーフード市場の破壊に乗り出す。

 

参考記事

Avant Meats Announces New R&D and Pilot Manufacturing Facilities in Singapore

Cell-Based Seafood Maker Avant Meats To Build R&D Lab & Pilot Factory In Singapore

アイキャッチ画像の出典:Avant Meats

 

関連記事


関連記事

  1. CellMEATが約10.3億円を調達、培養エビや培養甲殻類製品…
  2. 分子農業で代替タンパク質と成長因子を開発するスタートアップ企業4…
  3. 米New Cultureが精密発酵カゼインによるモッツァレラ試食…
  4. 中国ファーストフード大手DicosがStarfieldと提携、植…
  5. FAOとWHOが培養肉の安全性に関する新レポートを発表
  6. オーストラリアv2foodが約57億円を資金調達、植物性代替肉で…
  7. アイスランドORF Geneticsが大麦由来の低コスト成長因子…
  8. 蜜蜂を使わずにハチミツを作る米MeliBioがプレシードで約94…

精密発酵レポート好評販売中

おすすめ記事

培養脂肪の英Hoxton Farmsが約32億円を調達、ロンドン市内にパイロット工場建設へ

培養脂肪を開発する英Hoxton Farms(ホクストン・ファームズ)はシリーズ…

RoboBurgerが世界初のハンバーガー全自動販売機の提供を開始

過去にはピザの自販機やサラダボウルの自販機を取り上げてきたが、アメリカの代表的な…

【参加レポート】第1回フードテックジャパン展示会

日本初となる第1回フードテックジャパン展示会が開催された(2020年11月25-…

材料毎に投入タイミングを制御するスマート調理ロボットOliver

ほかの料理の準備で焼きすぎてしまったり、ゆですぎてしまったり、料理には失敗がつき…

草食動物の腸内細菌で代替タンパク質を開発する米SuperBrewed Food、今年中にビーガンチーズの市販化へ

アメリカ企業SuperBrewed Foodは、今年中に微生物発酵により開発され…

植物ステーキ肉のChunk Foodsが約20億円のシード資金を調達

イスラエルの植物肉企業Chunk Foodsは、昨年11月にシードラウンドで15…

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/04 10:11時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/04 19:30時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/04 23:01時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/04 16:20時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(10/04 09:32時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(10/04 18:57時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP