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ウナギ、マグロなどの培養シーフードを開発するシンガポール企業Umami Meatsは1日、プレシードラウンドで240万ドル(約2億7000万円)を調達した。
Umami Meatsは調達した資金で、複数の魚種から細胞株を樹立し、自社の成長因子を活用して、低コストでスケーラブルな培養魚生産システムのさらなる強化を目指す。
環境負荷のない持続可能なシーフードを開発
Umami MeatsはMihir Pershad氏が2020年に設立したスタートアップ企業。
同社は、筋肉や脂肪に分化する幹細胞を魚から分離し、細胞株を樹立する。
細胞は一般に、何回か分裂を繰り返すと、分裂をやめて死滅する。死滅せずに、長期にわたり増殖できる状態になった細胞を「細胞株」と呼ぶ。「樹立」とは、安定した形質をもったまま自己複製できる細胞株ができたことをいう。
Umami Meatsは大きなバイオリアクターに細胞を移し、数百万個の細胞を数兆個の細胞に成長させる。細胞が成長するために必要な培地には、植物由来の増殖培地を使用している。細胞に「シグナル」を与えて筋肉や脂肪に変え、刺身など食べたいシーフードに成形する。
シーフード需要が高まる一方、気候変動、乱獲、海洋汚染物質の脅威にさらされ、シーフードの供給はますます不安定になっている。
Pershad氏は1800億ドルの水産業界にとって、乱獲、プラスチック汚染、気候変動などの問題を生じない培養シーフードは持続可能な解決策になると考え、Umami Meatsを立ち上げた。
ウナギ、マグロ、タイを開発
公式サイトによると、Umami Meatsが開発するのは、ニホンウナギ、キハダマグロ、タイの3種。
シンガポールに拠点を持つスタートアップ企業にはUmami Meatsのほかに、カニ、エビ、ロブスターなど甲殻類の開発を手掛けるシンガポール企業Shiok Meats、昨年シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)と共同研究所の設立で提携した香港企業Avant Meatsがいる。Avant Meatsはナマコや魚の浮き袋など中国で人気のある魚を開発ターゲットにしている。
Pershad氏は他社培養肉との直接的な競争を懸念するよりも、培養肉の認知度を上げ、市場を形成していくために協業することが重要だとみている。
2021年のアジアの代替タンパク質投資額は前年比約2倍に
GFIによると、代替タンパク質に対する2021年の投資額は2020年の1.6倍となり、過去最高の50億ドルに達した。
アジアでもこの動きは顕著で、2020年から2021年にかけて2倍近くに増えている。
過去10年の投資額を地域別にみると、アメリカ以外の地域とアジアからのスタートアップ企業の影響力が増すにつれ、世界の投資総額に占める北米のシェアは急速に縮小している。
しかし、アジアへの投資では植物肉の占める割合が依然と多く、培養肉・発酵タンパク質では遅れを取っている。今後は、急速に拡大している培養肉・発酵タンパク質を成長分野とみなした投資がアジアに流入してくる可能性が高い。
現に今回のラウンドは、アジアに焦点をあてた代替タンパク質のベンチャーキャピタル(VC)Better Bite Venturesとアーリーステージの細胞農業・ディープテック企業に出資するVCであるGenedantがラウンドを主導、CULT Food Science、Impact Venture、Katapult Ocean、Plug & Play Venturesなどが参加した。
Better Bite Venturesは2月、アジアにあるアーリーステージの代替タンパク質企業を支援する1500万ドルのファンドを立ち上げた。
ファンドのポートフォリオ企業は中国、シンガポール、インドネシア、オーストラリアから構成され、Umami Meatsのほかに、CellX(培養肉)、Change Foods(発酵タンパク質)、Next Gen Foods(植物肉)、Blue Canopy(発酵タンパク質)などがある。
参考記事
Umami Meats Secures US$2.4 Million Pre-seed Funding to Advance Cultivated Seafood
The State of APAC’s Alt Protein Industry in Four Graphs
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