代替プロテイン

代替ハチミツの米MeliBioが約6.7億円を調達、今春より生産拡大へ

 

持続可能な「本物のハチミツ」を開発するアメリカのMeliBioが17日、シードラウンドで570万ドル(約6億7500万円)を調達したことを発表した

ベルギーのベンチャーキャピタルAstanor Venturesがラウンドを主導、Big Idea VenturesAlumni VenturesVeg Capitalなど計12のファンドが参加した。

MeliBioは精密発酵と植物科学を活用することで、ミツバチを使わない「本物のハチミツ」の生産に取り組む世界初のフードテック企業

今回の調達は昨年9月にCult Food Scienceが主導したプレシードラウンドに続くもので、同社は調達した資金を、代替ハチミツのスケールアップと商用化にあてる。

30社以上が代替ハチミツの使用で契約

出典:MeliBio

MeliBioの最初の製品は2021年10月に発表された。ブランドテストでは、本物のハチミツと区別できない仕上がりだったことを業界の識者は明かしている。

製品は外食産業向け・B2B向けの成分で、これまでにニューヨークのレストラン4店舗と、ワシントンにある消費財企業で試験に成功している。こうした成功により、MeliBioは2022年4月から生産を拡大し、新規クライントを獲得する。

同社は環境に配慮した、持続可能なビーガン製品を求めている食品、飲料、化粧品企業に製品を提供したいと考えている。プレスリリースによると、すでに世界の30社以上の企業がMeliBioの製品を最初に使用する契約を締結しているという。

受粉に欠かせないミツバチを守る

出典:MeliBio

100億ドルのハチミツ産業は、複雑で不安定なサプライチェーン、生産量の低下、価格変動、品質の問題など多くの課題に直面している。

研究によると、世界には2万種の野生・在来のミツバチがいるが、2006年から2015年にかけて数が急速に減少し、4分の3しか存在を確認されていない。植物の受粉を担うミツバチは人類の存続に不可欠な存在であり、ミツバチの減少・消失は、世界の食料生産に深刻な影響を及ぼす。

MeliBioは、ラテン系の科学者でアマチュアシェフであるAaron Schaller氏と、セルビア移民でハチミツ業界の管理職だったDarko Mandich氏によって2020年にカリフォルニア州バークレーに設立された。

出典:MeliBio

同社は昨年、TIME誌の「ベスト・インベンション 2021」でフードテック3社の1社に選出されるなど、サステナビリティと独自の取り組みに注目が集まっている。

設立から2年で、これまでの調達総額は720万ドル(約8億5000万円)にのぼる。

共同創業者のMandich氏は「科学の力により、貴重なミツバチに負担をかけることなく、従来のハチミツと分子的に同等な、美味しくて栄養のあるハチミツを生産できる」とコメントしている。

シードラウンドを主導したAstanor VenturesのパートナーChristina Ulardic氏は「科学と精密発酵を結びつけた次世代の食品テクノロジーを構築するというMeliBioの取り組みに感銘を受けている」とコメントしている。

本物と同等な「代替ハチミツ」、生産拡大へ

左からAaron Schaller氏、Darko Mandich氏 出典:MeliBio

MeliBioは今年1月、最初の商業生産を行うコロラド州の共同製造業者を選定した。さらに、カリフォルニア州オークランドに新しい研究開発スペースとなる拠点を構えた

今回の資金調達により、生物多様性の喪失や不安定なサプライチェーンなどの問題と無縁な、持続可能なハチミツを提供するというMeliBioの目標に近づいたこととなる。ミツバチを使わない「本物のハチミツ」の商業生産がまもなく開始される。

 

参考記事

MeliBio Announces $5.7M Seed Funding To Make Real Honey Without Bees

CULT Food Science Portfolio Company MeliBio Provides Operational Updates and Guidance on New Up-Round Capital Raise

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:MeliBio

 

関連記事

  1. 米Oobliが精密発酵による甘味タンパク質ブラゼインでGRAS認…
  2. GEAが代替タンパク質の技術センターをドイツに開設
  3. 韓国が培養肉特区を創設、商用化の鍵となる細胞供給で特例を設ける
  4. 培養油脂のPeace of Meatと英ENOUGH、マイコプロ…
  5. Back of the Yards Algae Sciences…
  6. 酵母で油脂を開発するMelt&Marbleが約9600…
  7. 菌糸体ベーコンを開発するAtlast Foodが社名をMyFor…
  8. マイコプロテイン企業Mycorenaが正式な倒産申請を発表、新た…

おすすめ記事

ShiruがAIプラットフォームで開発した最初の製品「OleoPro」を商用化

アメリカのバイオテック企業Shiruは今月、AIを活用した最初の食品原料の商用化…

機械学習でフードロス削減に取り組むFloWasteが約1億2400万円を調達

フードロス削減に取り組むFloWasteがシードラウンドで110万ドル(約1億2…

精密発酵:8ヵ月にわたる企業・政府動向の全記録【Foovo独自調査】

昨年にPerfect DayのB2Bシフトが報じられ、1月にはPerfect D…

Remilkがイスラエル食品大手CBCグループと提携、1年以内のイスラエル上市を目指す

精密発酵でアニマルフリーな乳タンパク質を開発するRemilkは、イスラエル食品最…

BlueNaluがアジアへの培養魚販売に向けて三菱商事、タイ・ユニオンと提携

培養魚を開発するアメリカ企業BlueNalu(ブルーナル)が、三菱商事、アジアの…

Doehlerが代替パーム油を生産する英Clean Food Groupと提携

酵母を活用して代替パーム油を開発するClean Food Groupは今月、ドイ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/17 14:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/18 00:10時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/18 03:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(01/17 20:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/18 12:39時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/17 23:23時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP