菌糸体で食品業界の課題解決に挑むアメリカ、コロラドを拠点とするMycoTechnologyは、シリーズEラウンドで8500万ドル(約105億円)を調達した。
オマーンの政府系ファンドOman Investment Fundが主導し、Tyson Ventures、S2G Ventures、Siddhi Capital、Nourish Venturesなどが参加した。これにより、同社の調達総額は2億700万ドル(約256億円)となった。
菌糸体発酵で食の主要課題を解決
MycoTechnologyは菌糸体を活用し、食品業界の課題を解決するのに役立つ新規成分を開発している。新たに調達した資金で、アジア、ヨーロッパ、中東への展開拡大を図る。
菌糸体発酵を利用することで、不快な味のマスキングに使用される砂糖使用量を削減、環境への影響を最小限に抑えながらタンパク質を大量生産、食品廃棄物を食材へアップサイクルするなど、食の主要な課題解決を目指している。
同社は製品自体の販売よりも、ソリューションとなるプラットフォーム全体の販売を重視している。これまでに食品の不快な味を隠すClearIQ、発酵由来の植物タンパク質FermentIQ、冬虫夏草のアダプトゲンEvolveIQと、3つのプラットフォームを市販化している。
量産が難しい冬虫夏草の持続可能な供給を保証するEvolveIQ
EvolveIQはMycoTechnology最新のプラットフォームであり、ステンレスタンクを使用した独自の液中発酵プロセスにより、世界でも人気のあるアダプトゲンキノコに属する冬虫夏草(Cordyceps sinensis)の菌糸体バイオマスを生産する。土壌ではなく液中発酵で生産することで、重金属や農薬、デンプンを含まない冬虫夏草の菌糸体バイオマスが生産される。
EvolveIQは、人工栽培による量産が難しく、過剰収獲によりほぼ絶滅している野生型C.sinensisの持続可能な供給を保証するものとなる。
菌糸体で発酵させた植物タンパク質FermentIQ
FermentIQは、肉や乳製品の代替品から、焼き菓子、スナックまでさまざまな用途に使用できる植物タンパク質となる。
Meati Foods、Nature’s Fynd、MyForest Foods、The Better Meat Coなど、菌類由来の代替肉を開発する企業もあるが、MycoTechnologyはえんどう豆や米などの植物タンパク質の変換に菌類を使用している。
同社によると菌糸体は、えんどう豆や米のタンパク質鎖を分解し、これらの生体利用率を向上させる酵素や代謝物を産生する。菌糸体と共にえんどう豆と米タンパク質を発酵させると、植物由来の味や風味の軽減につながるほか、溶解性が向上し、粉っぽさやざらざらした食感も軽減され、水分・油分の保持性能が改善されるという。
水分と油分を保持できるため、代替肉用途では、構造を保持しながらジューシーさと滑らかさの向上につながる。
マスキング剤を不要とするClearIQ
苦味抑制剤となるClearIQは、金属っぽい味、苦味、酸味、渋味など美味しさを損なう味覚を相殺するために使用され、植物タンパク質、代替甘味料、アルコール、コーヒー、チョコレート、プロテインドリンク、うがい薬などさまざまな食品やドリンクに添加できる。
関連記事
アイキャッチ画像の出典:MycoTechnology