代替プロテイン

Nature’s Fyndが菌類由来の代替肉を米ホールフーズで発売、来年には大規模工場を稼働

 

微生物発酵により代替肉や代替乳製品を開発するアメリカ企業Nature’s Fyndは先月、同社のタンパク質Fyを使った朝食用パテが今月より、一部のホールフーズで発売されることを発表した

Fyは、イエローストーン国立公園の熱水泉に生息する極限環境微生物を使って開発されたもので、今回の発表は、昨年2月のクリームチーズ・パテ完売、7月の3億5000万ドル(約385億円)という大型調達に続くニュースとなる。

菌類由来の代替肉、ホールフーズでデビュー

出典:Nature’s Fynd

アメリカ在住者は今月より、カリフォルニア州、アリゾナ州、ワシントン州、オレゴン州、アイダホ州、ハワイ州、ネバダ州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州の10の州にあるホールフーズで、Fyを使った朝食用パテ「Nature’s Fynd Meatless Breakfast Patties」を購入できる。

Fyを使用したパテとクリームチーズは昨年2月に販売されたが、わずか1日で完売となった。

商品は1食あたりタンパク質を11グラム、食物繊維を4グラム含み、ポークソーセージよりも脂肪分が75%抑えられている。

栄養面のメリットだけでなく、Nature’s Fyndの発酵タンパク質Fyは、従来の畜産に必要な水、土地、エネルギーの一部を利用して生産されるため、持続可能性の面でも優れている。

代替タンパク質で最も資金が投入された発酵タンパク質

出典:GFI

ビル・ゲイツ氏、ジェフ・ベゾス氏、アル・ゴア氏などのファンドから出資を受けるNature’s Fyndは発酵タンパク質Fyを市販化するために、これまでに5億800万ドル(約618億円)を調達している。同社技術は、NASAの研究プロジェクトに由来する。

Nature’s Fyndのようにタンパク質の生産に微生物発酵を活用する企業には近年、多額の資金が投入されている。

2021年には代替タンパク質分野において、発酵タンパク質に最も資金が集まり、前年比3倍に成長した。Nature’s Fyndはパーフェクトデイと並び、昨年、発酵タンパク質分野で最多の資金調達に成功した。

最近では、菌糸体発酵でさまざまな食の課題解決を目指すアメリカのMycoTechnologyが8500万ドル(約105億円)を調達している。

大量生産が課題

CEOのThomas Jonas氏 出典:Nature’s Fynd

Nature’s Fyndは現在、シカゴ、サウスサイドに35000平方フィート(約3,200㎡)規模の施設を構えるが、シカゴ、マリーナに規模が5倍以上となる20万平方フィート(約18,580㎡)の大規模パイロット工場を建設することを昨年発表した。

この工場は今年後半に開設予定だったが、昨今のサプライチェーンの遅延により、建設が遅れているという。

課題は生産能力が限られていることだと、マーケティング担当のKaruna Rawal氏は海外メディアに回答している

現在の製品には、Fyのほかに大豆タンパク質、米タンパク質が含まれている。生産施設が稼働し、生産能力が上がれば、すべてのタンパク質源としてFyを使用できるようになる。

出典:Nature’s Fynd

Nature’s Fyndは最終的には、大豆や米を除き、すべてFyに置き換えたいと考えている。また、シンガポールに施設を建設することも検討中だという。

Nature’s Fyndのように微生物を発酵させて食用タンパク質を開発するアメリカ企業には、Meati FoodsMyForest Foodsがいる。2社も現在、新たな生産施設を建設している。

規模ではNature’s Fyndに劣るものの、Meati Foods、MyForest Foodsともに年内の工場オープンを目指しており、予定通りに進めば、今年後半にはアメリカのスーパーにさらに多くの発酵由来の代替肉が陳列されることになりそうだ。

 

参考記事

Nature’s Fynd To Debut Its Vegan Foods Made with Fy Protein at Whole Foods Market

Nature’s Fynd to launch at Whole Foods, expects large-scale ‘nutritional fungi protein’ plant to be operational in 2023

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Nature’s Fynd

 

関連記事

  1. Those Vegan Cowboysが精密発酵で作成されたチー…
  2. マレーシアの培養魚肉企業Cell AgriTechが2024年末…
  3. 米Jellatech、細胞培養によりヒトコラーゲンの開発に成功
  4. パーフェクトデイが約390億円を調達、今秋にアニマルフリーなクリ…
  5. BioBetterはタバコ植物を活用して培養肉用の成長因子を開発…
  6. ビヨンドミートが代替ミルクにも参入か?ビヨンドミルクの商標を出願…
  7. フランスのYnsectは昆虫由来のバーガー、ナゲットの販売を目指…
  8. 牛を手放し「型破り」な転身を実現したイギリス農家と、それを支援す…

おすすめ記事

米Thrilling Foods、層状の脂肪を含んだビーガンベーコンで特許を取得

アメリカ、ポートランドの代替タンパク質企業Thrilling Foodsは、植物…

高級培養肉を開発するOrbillion Bioが約5億4000万円を調達

培養肉を開発するスタートアップ企業Orbillion Bioが、シードラウンドで…

微生物発酵でサステイナブルな着色料を開発するデンマーク企業Chromologics

植物ベースまたは細胞農業によって肉、魚、乳製品に取り組むフードテック企業は増えて…

培養肉モサミートが培養脂肪用培地の大幅コストダウンに成功

オランダの培養肉企業モサミートが、培養脂肪用培地のコストダウン成功を発表した。…

KFCがシンガポールで植物肉バーガーの販売を期間限定でスタート

シンガポールのケンタッキー・フライド・チキン(KFC)が植物肉バーガーを期間限定…

イスラエルのPlantishが3Dプリントされた植物性サーモンを発表、2024年に本格販売へ

イスラエルのフードテック企業Plantishは、植物原料を使った代替サーモンの切…

精密発酵レポート予約注文受付中

培養魚企業レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(06/07 18:06時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(06/07 21:46時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(06/08 15:17時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(06/08 08:26時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(06/08 17:47時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP