Hyfé Foodsは低炭水化物、高タンパク質の菌糸体粉末の生産を目指す米国イリノイ州を拠点とする企業で、先月、プレシードラウンドで募集を上回る200万ドル(約2億6000万円)の資金調達をおこなった。
今回のラウンドは、MITからスピンアウトしたThe Engineが主導した。The Engineはタフテック(Tough Tech:世界の最重要課題を、科学、工学、リーダーシップのブレイクスルーを融合することで解決しようとする変革的技術)のアーリーステージ企業に対し出資を行うベンチャーとされる。
このほか、Blue Horizon、Caffeinated Capital、Supply Change Capital、Lifely、Gaingels、Hack Venturesなどが参加した。Hyfé Foodsはまた、米国アルゴンヌ国立研究所のChain Reaction Innovations(CRI)のアクセラレータープログラムを通じて米国エネルギー省から助成金も獲得している。
この資金により製品化に向けたスケールアップが加速されるだろう。
環境問題と食料問題の解決に寄与する菌糸体タンパク質
Hyfé Foodsは、食品や飲料の製造で発生する廃糖水をアップサイクルし、様々な食品に利用できる菌糸体粉末を生産している。
独自に開発したカーボンニュートラルの手法により、高タンパク質、低炭水化物でアレルギーフリーの粉末を手頃な価格で生産するという。この技術は食料供給に貢献するだけでなく、水の保全や食料問題など社会全体の環境問題にも広く貢献することができる。
現在の食料システムは、世界の淡水の70%を使用し、温室効果ガスの25%を排出している。水をアップサイクルして使用することにより発酵に要する水を減らせるだけでなく、大量のメタンガスを発生する排水処理施設に回す処理水を原料に変換できる。
二酸化炭素の何倍の温室効果があるかを示す地球温暖化係数(GWP)で、メタンは二酸化炭素の84~86倍の温暖化効果があるとされていることから、メタンガスの発生原因となる排水をアップサイクルできる環境メリットは大きい。
精製炭水化物に伴う健康面の不安をなくす
世界中で広く食されている小麦は高度に精製された炭水化物を含み、長年、慢性疾患の要因とされてきた。Hyfé Foodsは未来の食は持続可能であるだけでなく、体にも良いものであるべきだと考えている。
共同創業者兼CEOのMichelle Ruiz氏は、「Hyféのパスタは鶏胸肉と同じレベルのタンパク質を含み、食物繊維も豊富ですが精製した炭水化物は含んでいません。ヒトにも地球にもやさしい食品つくりが当社の理念です。Hyféの菌糸体粉末は味や作用が小麦粉に似ていて健康に対する好ましくない効果もなく楽しむことができます。バイオテクノロジーを活用することにより、この素材をカーボンニュートラルでありながら、安価に生産することを目指しています」と述べている。
健康面での利点に加えて、菌糸体を地域で工業的に生産できるようなれば、遠隔地や農業に適さない地域でも生産できるようになり、人類の食料不足に対する対策としてもメリットがある。
多様化しつつある菌類由来タンパク質
菌類を代替タンパク質として用いている食品としてはQuornがよく知られている。1985年に英国で製品化されて代替肉として欧州や英国で普及したQuornは、2002年に市場参入した米国でも普及を目指している。
このほか食料問題や環境面でのニーズを背景に、近年、菌類を代替タンパク質として活用する企業が増えている。スウェーデンのMycorena、米国のMeati FoodsやNature’s Fynd、そしてAqua Cultured Foodsなどのスタートアップが菌類由来タンパク質の製品化を進めており、未来の代替タンパク質候補の一つのカテゴリーになりつつあるように思われる。
参考記事
Hyfé Foods Turns Wasted Sugar Water into Flour Amidst a Supply Chain Crunch
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アイキャッチ画像の出典:Hyfé Foods