精密発酵により持続可能なチーズを開発する米New Cultureは17日、代替乳製品の開発と商用化を加速するために、シカゴを拠点とする穀物加工大手のアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)と戦略的パートナーシップを締結したことを発表した。
ADMが精密発酵企業New Cultureのスケールアップを支援
二社の提携により、New Cultureの精密発酵由来の成分を活用した商品の共同開発が可能になる。New Cultureはアニマルフリーなカゼインの使用を幅広い代替乳製品に拡大する際に、ADMが有する持続可能な植物由来の成分やフレーバーを使用することができる。
提携には、New Cultureの精密発酵由来カゼインとこれを使用した乳製品のスケールアップを促進するための協業も含まれる。
ADMは、2023年のピザレストランを皮切りに、アメリカの外食サービスでNew Cultureのモッツアレラチーズの商用化に向けた取り組みを加速させる。商用展開の拡大に伴い、New Cultureは精密発酵由来チーズに対する需要を満たすために、ADMの発酵・乳製品における生産能力を活用することが可能となる。
後述する動きも含め、この提携は、ADMが代替タンパク質のスケールアップ支援において、業界でイニシアティブを取ろうとしている姿勢を表している。
植物チーズで埋められないギャップを狙うNew Culture
New Cultureは精密発酵により、味、食感、機能、栄養面で牛由来のものと区別できない乳製品を開発している。
精密発酵はプログラムされた微生物を生産工場として、微生物に目的となるタンパク質を生産させる手法をいう。チーズの製造現場では30年前に導入された技術であり、新しいものではない。
New Cultureはカゼインを作る遺伝子を挿入した微生物を使い、牛に頼ることなくカゼインを生産している。
アメリカ市場だけでも乳製品市場は700億ドル規模となり、この約30%がチーズ由来だという。植物由来の代替チーズの普及も進んでいるが、味と性能のギャップにより、「アニマルフリーなチーズは一般の人々にほとんど浸透していない」と同社は指摘する。
New Cultureが狙うのはまさにこのギャップだ。
New Cultureにとって今回の発表は、昨年11月のシリーズAラウンドにおける約28億円の資金調達に続くニュースとなる。このラウンドにはADMの投資部門であるADMベンチャーズが参加していた。
代替タンパク質に本腰を入れる食品大手ADM
代替タンパク質のパイオニアであり、世界の発酵業界をリードするADMは、New Cultureとの提携のほかにも、代替タンパク質におけるスケールアップ支援の動きを強化している。
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アイキャッチ画像の出典:New Culture