英国研究・イノベーション機構(UKRI)の一部であるバイオテクノロジー・生物科学研究会議(BBSRC)とイノベーションを推進する国家機関Innovate UKは、持続可能な新規食品開発を支援するため、1600万ポンド(約25億円)を投じることを発表した。
今回発表されたコンペは、資源効率が良く、排出量が少ない食品、特に健康的で持続可能な食事を提供するための新しい食品生産システム開発の支援を目的としている。
イギリス政府が持続可能な代替タンパク質の開発に約25億円を出資
今回の発表に先立ち、BBSRCとInnovate UKは昨年11月、戦略的イノベーションプログラムに5000万ポンド(約78億円)以上を出資し、イギリス企業とイギリス研究機関との協業を支援することを発表していた。
今回発表された1600万ポンドのプロジェクトは、2組織の新たな共同プログラムの1つとなる。
下記6分野での公募となり、培養肉、植物由来食品、精密発酵で生産された食品など、代替タンパク質が含まれている。
- 新しい植物由来製品・生産システム
- 非細胞性食品生産(精密発酵など)
- 細胞性食品生産(培養肉など)
- 新しい水産養殖システム
- 新しい食品生産システム(昆虫養殖、海藻養殖、動物生産の代替システムなど)
- 環境制御された農業システム
選抜された企業は、資金とイギリスが持つ研究基盤を活用して、革新的かつ持続可能な食品生産システムの開発を行う。
「承認の遅れは、グローバル市場での遅れにつながる」
Social Market Foundationは昨年6月、イギリス政府に対し代替タンパク質政策の更新を求める報告書を発表した。報告書では、現行の「断片的で低開発な」政策により、イギリスは他の国に後れをとっている危険性があると指摘。そのうえで、政府がこれを是正するために講じることができるいくつかの措置を提案していた。
オックスフォード・エコノミクスと英培養肉企業Ivy Farmが2021年に共同で発表した報告書によると、培養肉業界は2030年にはイギリスに最大で16500の雇用を生み出す可能性がある。
しかしこの実現可能性は、イギリス政府が培養肉を受け入れるかどうかにかかっており、承認の遅れにより、イギリスがグローバル市場で遅れを取る可能性があることも指摘している。反対に、市場の開放を早めることで、イギリスの培養肉企業は世界をリードする立場を確立し、国内にもたらされる経済的・社会的利益が高まる可能性があるとしていた。
昨今、イギリス政府が新規食品規制の修正を検討するなど、培養肉を受け入れる姿勢が以前よりオープンになっている兆候は確認されている。
昨年5月にIvy FarmとGFIヨーロッパが主催した培養肉の規制を議論するイベントには、議員であるAnthony Browne氏を始め、50名の国会議員が参加した。このイベントの数週間後には、イギリス議会で初めて、培養肉をテーマにした討議会が開催され、上院議員から環境・食料・農村地域省閣外大臣へ報告が行われている。
今回発表された出資プロジェクトも、イギリス政府が革新技術を活用した新規食品を推進する姿勢を表している。
参考記事
£16 million to support novel low-emission food production systems
UK Government Commits £16M to Sustainable Protein Research
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アイキャッチ画像の出典:Ivy Farm