代替プロテイン

微細藻類で代替タンパク質を開発するBrevelが約25億円を調達|色も風味もニュートラルなタンパク質

 

イスラエルのバイオマス発酵スタートアップのBrevelは今月、シードラウンドで1850万ドル(約25億円)を調達した。これは昨年5月の840万ドル(約11億円)の資金調達に続くもので、Brevelの調達総額は2160万ドル(約30億円)となった。

Brevelは調達した資金で、植物性代替食品に向けた微細藻類タンパク質の製造・市場投入を進める。

2017年設立のBrevelは、色も風味もニュートラルな、機能性に優れた微細藻類由来のタンパク質を開発している。同社が独自技術で成長させた非遺伝子組換え微細藻類を使用することで、「持続可能な最高品質のタンパク質」をえんどう豆や大豆など代表的な植物タンパク質に匹敵するコストで製造できるという

色も風味もニュートラルな微細藻類タンパク質

出典:Brevel

Brevelによると、現在の代替タンパク質市場は、コスト、風味、機能性、品質、持続可能性の点で多くの課題を抱えている。微細藻類は持続可能性の観点から「最高のタンパク質源」とされるが、代替タンパク質として使用される既存の微細藻類製品は高コスト・風味の2つの課題を抱えている。

Brevelは自社のタンパク質はこれらの課題を解決できたとしており、「世界の植物タンパク質でナンバーワンの選択肢になること」を目指している

プレスリリースによると、同社技術は、糖質をベースとした微細藻類培養と高い光強度を工業規模で組み合わせた世界初のものとなる。これにより、えんどう豆・大豆とコスト競争力のあるタンパク質が得られる。

風味・色がニュートラルなため、用途はミルク、チーズ、卵、シーフード、肉、ソフトドリンクと多岐にわたる

2025年までに90万L規模の工場を建設

出典:Brevel

テッククランチの報道によると、Brevelは現在、イスラエルで500Lの試験運用を実施しており、5,000Lの発酵容量と照明システムを備えた商業規模の工場へ移行する予定だ。

同社はさらに、90万L規模の大規模工場を建設する準備を進めており、2025年までの完成を目指している。この工場には30,000Lのバイオリアクターが設置されるという

Brevelは90万L規模の工場建設に向けて、昨年9月、Kibbutz Yotvataと基本合意書(MOU)を締結したKibbutz YotvataはStraussと共同で乳業工場を運営している。

建設予定の工場は、この種ではイスラエル初の工場となり、中東・欧州市場の高まるタンパク質需要に応えることを念頭においている。本格稼働すると、年間3,000トンの乾燥製品を製造する見込みで、生産量の25%を輸出にあてる予定だという。

微細藻類チーズを開発

出典:Brevel

Brevelの現在のターゲットは代替乳製品だ。

昨年10月、ハードチーズからスプレッドチーズなどの植物性チーズをグローバルに展開するイスラエル企業Vgardenと商品の共同開発で提携した。Brevelの微細藻類タンパク質を使用したビーガン食品をVgardenが製造する。

Vgardenはイスラエル北部にある工場でBrevelの原料を使用したチーズを製造し、オーストラリア、アメリカ、イギリス、西ヨーロッパなどVgardenがサービスを提供するグローバル市場に導入することを計画している。

提携発表時には2023年に発売予定だとしていたが、テッククランチの報道によると、製品は2024年に販売される予定だという。

国内外で進む微細藻類を活用した代替食品

出典:Brevel

Brevelのほかにも、微細藻類を活用した代替タンパク質の開発は進んでいる。

シンガポールのSophie’s BioNutrientsは、ハンバーガーパティ、ミルク、チーズの開発に続き、先月にはクロレラ由来のアイスクリームを発表した。このアイスクリームは乳製品や代替乳製品よりも多くのビタミンB12、鉄分を含んだものとなる。

イスラエルのSimpliiGoodはスピルリナのみを使用した代替スモークサーモン開発に続き、今月、スピルリナを使用した代替鶏肉を発表した。SimpliiGoodは現在、年間250トンの生産能力に向けて拡大している段階にある。

国内では、ちとせグループが立ち上げたタベルモが、生スピルリナを活用した製品を展開している。同社は新鮮なまま瞬間冷凍した生スピルリナをB2B、B2Cで展開しており、今年2月には卵の代わりにスピルリナを使用したマヨネーズ風ドレッシングソース「エコマヨ」の販売を開始した。

ちとせグループは石油に代わる、「藻」を起点とした新産業構築を目指すプロジェクト「MATSURI」を展開している。その一環として今年3月、マレーシアで世界最大規模の藻類生産施設の稼働を開始した

 

参考記事

Brevel Raises $18.5M to Fuel the Plant-Based Sector with Sustainable Microalgae Proteins

Brevel sprouts $18.5M to develop microalgae-based alternative proteins

BREVEL RAISES $8.4M SEED ROUND ON THEIR PATH TO BECOME THE LEADING ALTERNATIVE PROTEIN

 

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アイキャッチ画像の出典:Brevel

 

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  8. Remilk、イスラエルで精密発酵タンパク質の認可取得が間近

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