オーストラリアの精密発酵企業Eden BrewがシリーズAラウンドで2,500万ドル(約37億円)を調達した。
このラウンドは既存投資家であるMain Sequence Venturesが主導し、ビクトリア州政府ファンドのBreakthrough Victoria、Radar Ventures、Possible Ventures、Digitalis Ventures、NGS Superなどが参加した。
精密発酵でカゼインを開発するEden Brewが約37億円を調達
Eden Brewは、オーストラリア産業イノベーション科学省傘下のオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)、CSIRO のベンチャーキャピタルMain Sequence、大手乳業協同組合のNorcoにより2021年に設立された。
Eden BrewはCSIROの専門知識を活用し、乳タンパク質の8割を占めるカゼインミセルの開発に注力している。カゼインミセルは、αs1-カゼイン、αs2-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼインの4種類から構成される。牛乳は、これら4種のカゼインが組み合わさり、水中で安定的に分散した状態を保持している。
Eden Brewはカゼインミセル開発にあたり、CSIROの施設でプロトタイプの試験を実施してきた。
Green queenの報道によると、同社はカゼインミセルをすでに開発しており、今回調達した資金で、生産プロセスをスケールアップし、商用生産へ向けて加速する。最初の製品はアイスクリームとなる予定だ。
「リスクを取った政府の支援が重要」
共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のJim Fader氏は、今月メルボルンで開催されたイベントAltProtein23で、政府の支援が重要である理由を強調した。
Fader氏はパネルディスカッションで、オーストラリアの酪農生産が減少する一方、消費は伸びているため、輸出が大幅に減少している現状に言及。これにより、オーストラリアに多くある輸出に特化した資産が苦境に陥る可能性を指摘した。
同氏はその上で、精密発酵によるアニマルフリーな乳製品生産は、「供給を置き換えるのではなく、供給を補完し、生産量を増やし、輸出を再び増加させ、消費者に選択肢を与える」ものになると述べた。
今回の資金調達では、ビクトリア州政府のファンドであるBreakthrough Victoriaも出資している。
Fader氏はビクトリア州政府による資金提供について、「私たちがやろうとしているのはこれまで行われていなかったことであり、この分野で成功するためには、互いに協力して、エコシステム、インフラを構築する必要があります。ですから、政府がリスクを取ってこの分野に投資してインフラと環境を提供することは、非常に重要なことだと思います」と述べている。
オーストラリアの精密発酵スタートアップ
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アイキャッチ画像の出典:Eden Brew