ノッティンガム大学のスピンオフベンチャーであるThe Good Pulse Companyは今月、黄エンドウ豆から植物チーズを製造する研究開発のため、企業の研究開発を支援するイギリスの政府機関Innovate UKから資金提供を受けた。
Innovate UKによるコンテスト「Better Food for All」では、The Good Pulse Company を含む47のプロジェクトが採択され、総額1740万ポンド(約31億円)が支給される。Food&Drink Internationalの報道によると、The Good Pulse Companyの研究チームは30万ポンド(約5,400万円)以上の資金提供を受けている。
同社のプロジェクトは、ノッティンガム大学助教授のVincenzo di Bari博士が主導している。このプロジェクトでは、豆からチーズを作るための粉末の機能性を改善するため、マメ科植物種子の物理的な加工に焦点をあてる。
Food&Drink Internationalの報道によると、同社はこれまでに自社の技術・プロセスを使用して、豆類タンパク質から100種類以上の植物性チーズやグルテンフリーな焼き菓子のプロトタイプを生成しているという。
The Good Pulse Companyはさらに、EIT Food Seedbedプログラムの一環として、植物チーズの共同開発で欧州の大手乳業メーカーと提携を締結した。この提携では、同社の豆由来原料と独自のプロセスを使用して、植物チーズのプロトタイプを共同開発し、大規模なパイロット試験を目指す。
同社はまたアメリカで特許を出願しており、進出予定市場は不明だが、今後12ヵ月以内の商用化を目指している。
デンマークの研究チーム、黄エンドウ豆・発酵で植物チーズ開発に成功
黄エンドウ豆から植物チーズを開発する試みはデンマーク、コペンハーゲン大学でも数年前より行われおり、今月その成果が発表された。
同大学で研究を行うCarmen Masiá氏は黄エンドウ豆から、しっかりとした食感と改善された風味を備えた植物チーズの開発に成功した。同氏は牛乳からチーズを作るときに使用してきた細菌による自然発酵プロセスを使用して、植物チーズの生成を実現した。
市販の植物チーズの中には、ココナッツオイルを使用したものや、ナッツを使用したものがある。
同大学がココナッツオイルやナッツではなく黄エンドウ豆に注目した理由として、ココナッツオイルでは味・食感に不足があること、ナッツを使用した植物チーズでは製造コストが高いこと、また、黄エンドウ豆を使用する方がナッツよりも持続可能であることを挙げている。
研究チームは植物チーズの開発にあたり、24の細菌の組み合わせを調べた。黄エンドウ豆タンパク質に細菌の組み合わせを播種したところ、わずか8時間で「柔らかく新鮮な白いチーズを思わせる硬いチーズのようなゲル」が得られたという。
Masiá氏は「すべての細菌ブレンドで堅いゲルが生成されました。これは、デンプンやココナッツオイルを添加しなくても、発酵によってゲルを得られることを意味しています」と述べている。
また、どの細菌でも、豆っぽい風味の軽減で良好な働きが確認されたという。これについてMasiá氏は「非常に前向きな成果です」と述べている。
参考記事
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アイキャッチ画像の出典:The Good Pulse Company