Foovo Deep

ニュージーランド企業Daisy Labが精密発酵ホエイのスケールアップ生産に成功

 

ニュージーランドの精密発酵企業Daisy Labは、10Lのバイオリアクターを使用して、精密発酵によるホエイタンパク質生産のスケールアップに成功したことを発表した。さらに、ホエイタンパク質粉末を生成する生産プロセスを確立したことも発表した。

VegconomistGreen queenの報道によると、Daisy Labは培養液1Lあたり当初の目標であった3gを大幅に上回る、10gのβ-ラクトグロブリン(ホエイタンパク質の1つ)生産に成功したという。

同社共同創業者のEmily McIsaac氏は、「引き続き収量の向上に焦点をあて、近い将来、1Lあたり20g、あるいは30gを達成することを目指しています」と述べている。

Daisy Labは今後の目標として、追加の開発対象となるラクトフェリン生産を拡大し、追加資金を調達して1000Lのパイロット工場建設を目指している。ニュージーランドに工場を設置し、世界の食品・飲料メーカーと提携することで、早期に精密発酵技術を市場へ投入したいと考えている

Daisy Labが精密発酵ホエイの生産に成功

出典:Daisy Lab

乳製品はニュージーランド最大の輸出収入源であり、その規模は年間約190億ドルに達する。しかし、乳製品に由来する温室効果ガスは、家畜由来排出量の約30%に相当するとされる

Daisy Labの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のIrina Miller氏は、乳製品輸出に依存するニュージーランドの事情を踏まえ、現状への「不満」から会社設立を決めた理由について、過去に次のように語っている

「ニュージーランドが乳製品の輸出にどれだけ依存しているか、そして乳製品生産にどれだけの環境資源が使用されているかを考えると、ニュージーランドで精密発酵が行われていないことが信じられませんでした」(Irina Miller氏)

2020年に設立されたDaisy Labは、ニュージーランド政府Westpacが共同運営するWestpac NZ Government Innovation Fundから助成金を獲得している。

同ファンドは、世界の課題を解決し、かつニュージーランド国民にとって価値あるソリューションの推進を支援することを目的としている。Daisy Labへの出資は、成長産業であるフードテックで、ニュージーランド経済のチャンスを最大化する狙いがあるといえよう。

Foovoの認識では、Daisy Labはニュージーランドでタンパク質開発に取り組む最初の精密発酵企業となる。

昨年3月、同社はシードラウンドの資金調達を完了し、ホエイタンパク質生産のスケールアップに取り組むことを発表した

2022年10月にホエイタンパク質の3つの発現システムを確立してから、1年数ヵ月で、今回のスケールアップを達成した。

ラクトフェリン開発に取り組む精密発酵企業7社

出典:Daisy Lab/Westpac NZ Government Innovation Fund

今回の報道で、Daisy Labはホエイ、カゼインのほか、ラクトフェリンも開発していることが明らかになった。

ラクトフェリンを開発ポートフォリオに追加することで、今後の投資を呼び込む狙いがあることをGreen queenに明かしている

昨今の精密発酵業界では、食品用途でラクトフェリン開発に取り組む事例が増えているが、各社の戦略は微妙に異なる。

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Daisy Lab

 

関連記事

  1. 日立造船とNUProtein、成長因子生産に必要な原料の自動製造…
  2. 中国初の菌糸体タンパク質スタートアップ70/30、今年後半に全国…
  3. 微生物でタンパク質を開発するNature’s Fyn…
  4. コーヒー豆の品質評価を自動化するDemetriaが約3億2千万円…
  5. 韓国の培養肉企業CellMEATが約4億7千万円を調達、培養肉の…
  6. Avant Meatsが中国バイオ医薬品企業QuaCellと提携…
  7. ZIKIがロボットキッチンのBowlton Kitchensを買…
  8. 2020年の代替タンパク質投資額は31億ドルとGFIが報告、過去…

おすすめ記事

AIエンジンで代替タンパク質を開発するThe Live Green Coが精密発酵に参入

独自のAIレコメンドエンジン「Charaka」を活用し、動物由来原料や高度に加工…

Change Foodsが約13億円を調達、精密発酵の市場投入を加速するパートナーシップを締結

精密発酵によりチーズを開発するChange Foodsは、シードラウンドで追加の…

MeaTech、3Dプリンターによる培養シーフードの開発でUmami Meatsと協業

バイオ3Dプリンターで培養肉を開発するイスラエルのMeaTechは、3Dプリンタ…

QuornとPrime Rootsが菌糸体由来肉の市場拡大に向けて提携

Quornと米Prime Rootsは、アメリカ市場における菌糸体由来の代替肉の…

グリラス、国産食用コオロギを使用したプロテインバー等をコンビニで販売開始

日本の徳島大学発ベンチャー企業であるグリラスが、国産の食用コオロギを使用した自社…

米Ayana Bio、植物細胞培養でカカオなどの生理活性物質の開発を加速

アメリカ、ボストンを拠点とするAyana Bioは、カカオ、レモンバーム、エキナ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/07 15:26時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/07 01:26時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/07 05:23時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/07 21:30時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/07 13:29時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/07 00:35時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP