代替プロテイン

TurtleTree、精密発酵ラクトフェリンの上市に向けて最初の商業パートナーシップを締結

 

精密発酵でラクトフェリンを開発するTurtleTreeが初の商業パートナーシップを締結した

同社は8日、精密発酵ラクトフェリンを使用した機能的なエスプレッソを市場投入するため、Cadence Performance Coffeeと提携したことを発表した。

TurtleTreeは昨年11月、精密発酵によるウシラクトフェリンLF+について、世界で初めてアメリカのGRAS自己認証ステータスの取得を発表した。プレスリリースによると、エスプレッソは塩キャラメルオリジナルの2種類のフレーバーで提供され、今後数ヵ月以内に予約注文を受け付ける。

ラクトフェリンを加えた機能性コーヒー

出典:TurtleTree

なぜコーヒーにラクトフェリンなのか。実は、コーヒーに含まれるカフェインは食事から亜鉛や鉄の吸収を低下させることが知られている。

一方、ラクトフェリンには、鉄と結合する能力があり、免疫や腸の健康にも良い働きがあるとされている。コーヒーにラクトフェリンを添加することで、カフェインの悪影響を相殺し、忙しいライフスタイルでも手軽に機能性成分を取ることができるわけだ。

出典:TurtleTree

人のパフォーマンス向上を重視するCadence Performance Coffeeは、これまでアスリート、宇宙飛行士、軍隊、ハードワーカーなどに栄養製品を提供してきた。ラクトフェリンを添加したエスプレッソを飲むことで、アスリートは手軽に鉄欠乏による疲労、息切れ、脱力感など、パフォーマンスに影響を及ぼす問題に対処できることが期待できる。

Cadence Performance Coffeeの創業者であるDan LaValley氏は、LF+のメリットを加えることで、健康を増進する便利で美味しい方法をアスリートに提供できると考えている。

ラクトフェリンをあらゆる層に届ける

Fengru Lin氏 出典:TurtleTree

ラクトフェリン市場は乳児用調製粉乳がほぼ独占しており、全製品の約62%を占めていること、他のデータではほぼ80%を占めているため成人が消費できるのはごく一部だとTurtleTreeは指摘している

同社が精密発酵ラクトフェリンの最初の市場投入として、乳児用ではなくコーヒーを選んだ背景に、現在の乳児に限定されたラクトフェリン用途をあらゆる層に広げたい考えがあることは明白だ。

ラクトフェリン市場の約62%は乳児向け 出典:TurtleTree

TurtleTreeのCEO(最高経営責任者)であるFengru Lin氏もプレスリリースで次のように述べている

「この提携により、ラクトフェリンを乳幼児以外の人々にとってもグローバルなサプライチェーンでより利用しやすくする必要性があること、当社がそのギャップを埋める手段を持つことを証明します」(Fengru Lin氏)

1kgの精製ラクトフェリンを生成するには10,000Lの牛乳が必要になると言われ、ラクトフェリンの需要は供給を大幅に上回る。限られた供給ゆえに、ラクトフェリンは優れた作用にも関わらず、粉ミルク以外の他の用途にはほとんど使用されていないとTurtleTreeは以前から指摘してきた

LF+を添加した植物性ミルク 試食会の様子 出典:TurtleTree

精密発酵によるラクトフェリンは、高齢者、アスリート、毎日の栄養補給、植物性乳製品など、あらゆる層で幅広い用途が期待される。

ラクトフェリンを開発する企業

出典:TurtleTree

今回のニュースは精密発酵でラクトフェリンを開発する他社にとって朗報だ。

ラクトフェリンでGRAS自己認証を取得しているのはTurtleTreeだけだが、同社の他にも、ポルトガルのPFx Biotech、米Helaina、ニュージーランドのDaisy Lab、オーストラリアのAll G Foodsなど少なくとも7社が確認されており、各社が認可を取得後、どのような用途で上市していくか注目される。

 

参考記事

TurtleTree Secures First Commercial Partnership Focused on Delivering Performance Benefits to Endurance Athletes

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:TurtleTree

 

関連記事

  1. Remilk、イスラエルで精密発酵タンパク質の認可取得が間近
  2. 米イート・ジャスト、新しい培養鶏肉製品で再びシンガポール当局の販…
  3. 雪国まいたけ、新製品「キノコのお肉」を発売|海外で拡大するキノコ…
  4. 培養肉企業21社の生産工場・稼働状況まとめ-2022年11月時点…
  5. 英Multus Biotechnology、食品グレードの基礎培…
  6. ノルウェー研究評議会が5年間の細胞農業プロジェクトに出資、培養肉…
  7. イスラエルのFuture Meatが培養肉の生産コスト削減に再び…
  8. じゃがいもを原料に代替チーズソースを開発したLoca Foodと…

おすすめ記事

1時間に350杯のカクテルを作るバーテンダーロボット「Backbar One」

今まで様々な特徴を持つバーテンダーロボットが発売されてきたが、今回取り上げるアメ…

中国Dicosが米イート・ジャストの代替卵をメニューに追加、500店舗以上で販売を開始

↓音声はこちらから↓(登録不要・ワンクリックで聴けます)…

バイオ3Dプリンターで代替肉を開発するスペイン企業Cocuusが約3.5億円を調達

スペインのスタートアップ企業であるCocuusは、プレシリーズAで250万ユーロ…

廃水を活用して菌糸体タンパク質を開発するHyfé Foods、スケールアップを前倒しで完了

代替タンパク質などの必需品を持続可能な方法で生産するアメリカの気候テック企業Hy…

微細藻類からタンパク質を開発するBrevelがイスラエルに商用工場を開設

微細藻類由来のタンパク質を開発するイスラエルのBrevelが、イスラエル南部に2…

Ants Innovate、ハイブリッド培養豚脂肪「Cell Essence」の試食会を開催

シンガポールの培養肉企業Ants Innovateは14日、シンガポール企業Es…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/17 15:53時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/18 02:17時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/18 05:56時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/17 21:55時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/17 13:52時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/18 01:12時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP