米フードテック企業Motif FoodWorksが閉鎖することが報じられた。AgFunderが報じた。
Motifは米ギンコ・バイオワークスからスピンオフされて2019年に設立されたボストンを拠点とするスタートアップ。
植物肉を向上させる原料として、肉のような旨味・香りを再現した精密発酵ミオグロビン「HEMAMI」、植物肉を弾力のある、ジューシーな噛み応えにする「APPETEX」の2原料を開発、販売してきた。
2023年にはこれらの2成分を使用した消費者向けの完成品「Motif BeefWorks」を期間限定でD2C販売し、レストラン向けに「Motif BeefWorks」と「Motif PorkWorks」の提供を開始した。さらに、提携レストランが供給期間を延長するなど、市場導入を進めていた。
Mottifは一方で、精密発酵ヘムを開発したインポッシブル・フーズ(Impossible Foods)から同社のヘムに関する特許を侵害しているとして2022年3月に訴訟を提起された。今月、各社が費用を負担することで訴訟は終結し、インポッシブル・フーズがMotifのヘム関連事業を引き継ぐこととなった。
Motif閉鎖はこれに続くニュースであり、AgFunderの報道によると、9月6日午後に従業員に閉鎖が通知された。少数の従業員が事業の整理を行うために残る予定だという。
Motifは培養肉など代替肉への出資が盛んだった2021年6月に、2億2,600万ドル(当時約249億円)という大型調達に成功。投資家からは、精密発酵だけに注力せず、味、食感、栄養を改善するために全体的なアプローチを採用していることが評価されていた。
Motifも自社について「プラットフォームにとらわれない」企業だと述べる通り、2021年前半には伸びるチーズを実現するプロラミン技術、植物性霜降り肉を再現するオレオゲル技術の独占的使用権を取得した。昨年3月には、「HEMAMI」の生産コスト削減に向けて植物分子農業によるヘム開発で米IngredientWerksとの提携を発表した。
柔軟性のあるアプローチで代替タンパク質の味・食感を改善する製品開発に取り組んできたMotifだが、2年以上にわたるインポッシブル・フーズとの訴訟は「Motifの可能性を大きく損ない、事実上、事業を潰した」とMotifに近い人物がAgFunderに述べている。
AgFunderによると、Motifは対立が表面化する前から、インポッシブル・フーズと協力する方向で歩みかけていたものの、訴訟により商業的進展は止まったという。
Motifは閉鎖に関して公式の発表を行っていないが、ヘム事業を手放したことが閉鎖に至る一因となった可能性がある。また、スタートアップ企業同士の知的財産をめぐる訴訟は、資金調達や商業展開の遅れを引き起こし、結果的に企業の存続を危うくする要因になりうることを今回の事例が示唆している。
同様の訴訟事例としては、菌糸体由来のマイコプロテインを展開するMeati FoodsとThe Better Meat Co.が挙げられるが、こちらも訴訟が企業運営に影響を与えた。
Meatiは2021年、The Better Meat Co.に対し、秘密情報を持ち出したとして特許侵害を訴える訴訟を起こした。今年6月にThe Better Meat Co.に有利な形で終結したが、係争中の訴訟が解決しなければ「廃業するか休眠状態になる」とThe Better Meat Co.は訴えていた。
※MotifとImpossible Foodsの訴訟に関しては吉田美和弁理士の投稿も参考になります。
参考記事
Exclusive: Boston-based foodtech startup Motif FoodWorks is closing down
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アイキャッチ画像の出典:Motif FoodWorks