今月17日、日本航空(JAL)は東京(成田/羽田)-サンフランシスコ間の一部国際便で、精密発酵技術で生成された甘味タンパク質を使用したチョコレートの提供を開始すると発表した。
対象はファーストクラスおよびビジネスクラスの搭乗者で、米スタートアップOobli(旧称Joywell Foods)が開発した甘味タンパク質使用のチョコレート製品「Milk Chocolate Crisp ‘n Rice」がオプションメニューとして登場する。
提供はサンフランシスコ発、東京行きの一部便のみであり、東京発の便では提供されない。
「Milk Chocolate Crisp ‘n Rice」に使用される「Oubli Fruit Sweet Protein」は、精密発酵で生成されたブラゼイン(甘味タンパク質)。
「Oubli Fruit Sweet Protein」が精密発酵で作られていることは販売サイトに明記されているので、気になる方はこのページのFAQを読んでみよう(参考に書くとこの箇所だ→We use a groundbreaking technology called precision fermentation to produce our Oobli Fruit Sweet Proteins.)。
精密発酵技術は、糖尿病治療薬ヒトインスリンの製造に1970年代後半から使われており、1982年にアメリカで商用化された。また、チーズを作るために必要な酵素であるキモシンの生成にも利用されている身近な技術だ。
ブラゼインは砂糖の500倍から2000倍の甘さを持つタンパク質で、血糖値に影響を与えない特性があり、生活習慣病の予防が期待されている。このタンパク質は西アフリカや調達も栽培も難しい場所に自生する果物や果実に含まれているため、量産が難しい。Oobliは精密発酵技術により、ブラゼインの中でも最も高い甘味力を有する53個のアミノ酸配列を持つbrazzein-53の製造に成功している。
「Milk Chocolate Crisp ‘n Rice」は従来のチョコレートよりも砂糖の量が70%少なく、32gの製品中に含まれる砂糖はわずか3gとなる。ただし、乳タンパク質を使用しているためビーガン製品ではない。
OobliのCEO(最高経営責任者)であるAli Wing氏は、「今回の提携は、Oobliチョコレートの初の海外展開となり、より多くの人々にタンパク質を使用した甘味体験を味わってもらう絶好の機会となります」と述べている。
2014年創業のOobliは、2022年に初製品となるチョコレートを販売。
2023年5月にはスイートティーの販売を開始し、今年3月にはFDAからGRAS認証を取得した。5月には世界34ヵ国で展開するベーカリー会社Grupo Bimboと提携し、同社の一部製菓製品にOobliの甘味タンパク質を採用することが発表された。
精密発酵による甘味タンパク質の開発は、今後も増加が予測され、精密発酵で乳タンパク質を生成する代表企業パーフェクトデイ(Perfect Day)がFDAにGRAS通知を提出している。
また、今年7月には味の素が米スタートアップShiruと提携し、飲料などに使用する甘味タンパク質を共同で開発することが報じられた。味の素の事例は精密発酵の明言はないものの、砂糖削減を通じて糖尿病や肥満の予防を目指す動きが広がりつつある。
参考記事
Japan Airlines Brings Sweet Innovation to the Skies with Oobli Chocolates
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アイキャッチ画像の出典:Oobli