シンガポールの培養シーフード企業Umami Bioworksは今月、韓国に培養シーフードの生産施設を設置するため、バイオテック企業KCell Biosciences、バイオリアクター企業WSGとの戦略的パートナーシップを締結した。
韓国メディアの報道によると、3社は韓国に培養シーフードの生産プラットフォームを構築し、各社の核心的な強みを組み合わせてソリューションとしてパッケージ化した後、2025年に韓国食品医薬品安全処(MFDS)の承認を目指すとしている。
KCellとWSGは、ウナギなどの培養シーフードを製造するGMP準拠の施設に共同出資する。
Umami Bioworksが韓国進出
韓国では今年2月、培養肉などの細胞性食品の申請プロセスが明確化され、企業が培養肉・培養魚の承認申請を行えるようになった。5月には培養肉特区が設置され、細胞供給に関する特例が認められるなど、培養肉の商用化に向けたルートの整備が進む。
3社の提携において、Umami Bioworksは、韓国市場の需要や規制の枠組み、そして消費者が求める品質や持続可能性に応じた培養シーフード食品の提供能力を強化する。KCellは、血清不使用の培養シーフード用培地を妥当な価格で提供し、WSGはバイオリアクター、純水、水処理システム、HVAC(換気・空調・暖房)装置など、スケールアップに不可欠なインフラを提供する。
Umami BioworksのCEO(最高経営責任者)Mihir Pershad氏は、「培養シーフード食品の大量生産に向けたプラグアンドプレイソリューションを構築するには、顧客のニーズを満たす価格設定と生産能力が必要です。また、バイオリアクターや水処理システムなどの細胞培養インフラ、および主要な原料である培地を供給できる戦略的パートナーシップも重要です」とコメント。
さらに、「WSGはすでに培養肉市場において、生産インフラと関連設備の最も費用対効果の高い供給業者として成長しており、KCellは多くの大手顧客とのCMO契約や、受託開発プロジェクトを進めています。3社は韓国初の培養シーフード生産施設(CDMO)を設立するために密に協力する予定です」と述べた。
今回の発表は、培養シーフード企業Shiok Meatsの買収、IKP Knowledge Parkとの提携によるインド進出に続くニュースとなる。
韓国では承認申請を完了した企業も
アメリカ農務省のレポートのよると、韓国ではシーフード生産が停滞している一方で、消費量は増加し続けている。韓国の水産業は魚介類を赤身肉に代わる健康的なタンパク質源として推奨しており、2000年から2018年にかけて消費量は平均して年間3.5%増加し、肉製品の平均成長率3%を上回った。
近年では国内需要が供給量を上回り、2021年には輸入額が輸出額を38億ドル上回っている。
シーフード需要が高まる中、培養シーフード工場設置に向けた今回の提携は、輸出への依存を減らし、国内供給の安定化に寄与する可能性がある。特に韓国では規制の枠組みが明確化されており、培養シーフード企業にとって開かれた市場といえる。
Umami Bioworksは昨年、マルハニチロと提携し、日本支社を開設した。マレーシアに年産3,000トンを超えると見込まれる培養肉・魚工場の建設も進めている。ペットフード業界への参入も計画しており、8月には培養魚を使用した猫用おやつ製品の販売に向けて米Friends & Family Pet Foodとの提携を発表した。
韓国の培養肉企業では、培養エビや培養キャビアを開発するCellmeatもソウルに生産施設の建設を進めており、昨年末での発表では、生産設備の構築は終了したとしている。同社施設は350㎡で培養エビを年約200トン生産できるという。
同社CEOのGiljun Park氏は今年4月の時点で韓国で申請を完了したとコメントしており、韓国でも今年または来年には最初の認可取得企業がでると予想される。
参考記事
WSG-KCell-Umami, 세포배양 해산물 생산 위한 파트너십 구축
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アイキャッチ画像の出典:Umami Bioworks