培養肉を広く供給するには、工業規模の工場が必要になるが、ドイツでは農場で培養肉生産を可能にする新たなソリューションの開発が進んでいる。
ドイツのスタートアップ企業Meatosysは、農家自身が培養肉を生産できる仕組みを提供することを目指し、2022年に設立された。
同社は地元の資源を利用して培養肉を生産する機会を農家に提供し、革新的な食肉生産に農家が参加できるようにすることで、農業をより効率的で持続可能なものにする未来を描いている。
個々の農家の培養肉生産を可能に
Meatosysが開発するのは100%プラグアンドプレイの完全自動化されたモジュール型コンテナだ。このコンテナを農家に導入するイメージは次のようになる。
まず農家は、家畜が出産直後に臍の緒を採取し、付属のキットを使用して研究室に送付する。幹細胞と培地が入ったカートリッジが届いたら、カートリッドをコンテナ内の「成長ポッド(growthpod)」に設置する。ボタンを押すだけで細胞が肉組織に成長する環境が自動的に構築される。
生産期間は約21日間で、完成した培養肉は自動的に冷却され、物流パートナーによって回収される。
農家が行う作業はカートリッジをセットして操作を開始するだけであり、細胞の増殖などの繊細なプロセスは完全に自動化されている。また、農家が生産した培養肉をMeatosysが買い取る仕組みとなる。
Meatosysのシステムは100%再生可能エネルギーで稼働でき、「成長ポッド」にはMemmertの技術が使用されている。
同社のモジュール型コンテナはシステム全体を簡単に輸送、移動できるほか、スペースの追加や、浄水器の設置など、カスタマイズにも対応しているという。
農家×スケールアウト戦略による新たな培養肉生産
Meatosysのソリューションは、大規模な工場を建設するスケールアップではなく、小規模なコンテナを複数展開し、結果的に生産量を拡大するスケールアウト戦略といえる。
このアプローチにより、農家は従来の畜産業に加えて、培養肉生産から新たな利益を得られるようになる。
さらに、農家が飼育する家畜の臍帯から採取した幹細胞を使用するため、農家の「ブランド肉」を培養肉として生産することもできる。この仕組みにより、農家の個性やこれまで培ってきた信頼をいかした新たな食肉生産が実現する。また、消費者にとっては、その培養肉がどの農家から来たのか、どの動物から作られたものなのか、追跡できる点も安心材料となる。
Meatosysに似た取り組みは、オランダでも確認されている。RESPECTfarmsは既存の農場を培養肉施設に転用し、農家が価値を生み出し続けることができる未来を目指しており、2029年までに最初の農場を完全に最適化、2038年までに1,000の農場を変革させることを目標としている。
RESPECTfarmsと比較して、Meatosysはより小規模な製造コンテナを農家に分散配置する方法となり、短期的かつ低コストで小規模農家の培養肉生産を支援するモデルであると言える。
参考記事
https://meatosys.com/(公式サイト)
Cultivated meat on a farm? Putting farmers at the centre of a new technology
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Meatosys