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米Reel Foods、初の培養魚試作品を発表|組織工学を活かした培養魚開発

2025年5月追記:その後、社名をReel Bioに変更しています。

アメリカのスタートアップ企業Reel Foods(現在のReel Bio)が、同社初の培養白身魚の試作品を発表した

Reel Foodsは、Wyss Instituteハーバード大学で開発された技術を使用して、天然魚に匹敵するクリーンな魚の切り身を開発している。

同社は、血管構造の再現が、植物性足場なしで低コストに100%細胞由来の切り身魚を生産する鍵になると述べている

米Reel Foods、初の培養魚試作品を発表

出典:Reel Foods

Reel Foodsの原点は、共同創業者のJohn Ahrens氏がハーバード大学で心臓組織を再生する組織工学をテーマに行っていた研究にある。

Wyss Instituteの記事によると、Ahrens氏はバイオ3Dプリンティングを使用して、血管のある心臓組織と血管のない心臓組織を再現し、両者の違いを確認した。その結果、血管のある組織は生存していたが、血管のない組織の内側の細胞が死んでしまうという発見をした。当時はちょうど、Upside Foodsなどの培養肉が認知され始めた頃であり、この発見は培養魚の開発に通じるものだった。

この血管の有無がもたらす組織の違いに着目し、Ahrens氏Beverly See氏Robert Weeks氏の3名は、真の培養魚を作るには血管を再現する必要があるとの結論に達し、Reel Foodsを創業した。

公式サイトによると、Reel Foodsは天然魚から一度だけ採取した生きた細胞を原料とする。循環器系に似た血管ネットワークを構築し、細胞に栄養を与えると、細胞は増殖、成長し、天然魚と同じ成分、食感を持つ、クリーンな切り身ができあがる。

出典:Reel Foods

Wyss Instituteの記事によると、同社が開発した「血管リアクター」では、三次元マトリックス内に筋細胞を包み込み、血管構造を通じて培養液を循環させることで、筋細胞が急速に増殖、成長、成熟するという。この方法により、コストを大幅に削減するだけでなく、植物性の足場に頼ることなく、自然な味、食感を生み出すことが可能になるとしている。

今回発表された白身魚の魚種や細胞の割合は明らかにされていないが、Wyss Instituteの記事によると、Reel Foodsは最初の製品となる本マグロ柵(ブロック)の開発を進めているという。

注目の培養魚企業の動向

Foovo作成

培養肉はシンガポールアメリカイスラエル香港で、ペットフードも含めるとイギリスで認可されているが、培養魚はまだ認可されていない。Foovoの調査では2024年には39社の培養魚企業が確認されている

Reel Foodsに似た「血管構造」を再現するアプローチとして、東京大学の竹内研究室は、ストローやマカロニのように中心部が空洞の中空糸を血管構造に見立てて、複数の中空糸から構成される灌流培養デバイスを開発し、培養肉を開発している

培養サーモンを開発する代表的企業の米Wildtypeは、2025年初頭にアメリカで招待制のポップアップイベントを予定しており、希望者はこちらのリンクから日付を指定して申し込むことができる。

韓国に生産施設の設置を進め、イギリス進出を目指して同国規制当局と協議を続けるシンガポールのUmami Bioworksは最近、日本企業Kanadevia(旧称日立造船)との提携を発表した。Kanadeviaはコムギ胚芽由来の成長因子の生産で自動製造装置を開発しており、Umami Bioworksと種特異的なコムギ胚芽由来の成長因子を共同開発している。

オルガノイド技術で培養ウナギを開発するForsea Foodsは昨年、世界で初めて培養ウナギの試食会をイスラエルで開催し、昨年11月には、1mLあたり3億個を超える細胞密度を達成した

 

参考記事

Reel Foods: Cultivated fillets of fish for healthier people and planet

 

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アイキャッチ画像の出典:Reel Foods

 

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