微生物発酵による代替チーズを開発するドイツ企業Formoは、欧州投資銀行(European Investment Bank)から3,500万ユーロ(約56億円)のベンチャーデットを調達した。
ベンチャーデットとは、株式の希薄化を避けつつ資金を調達する手段を指し、今回の融資はEUの投資支援プログラム「InvestEU」の枠組みの一環として行われた。
Foovoの調査では、欧州投資銀行による代替タンパク質企業への融資では、菌糸体由来の代替肉を開発するデンマーク企業MATR Foods、オランダの昆虫タンパク質企業Protix、植物タンパク質のAvrilへの融資が確認されている。
クランチベースによると、精密発酵タンパク質企業への欧州投資銀行による融資はFormoが初だと思われる。
Formoは昨年9月、精密発酵カゼインに先立ち、麹菌由来のビーガンチーズをドイツ、オーストリアのスーパーマーケットで発売した。この時、シリーズBラウンドで6,100万ドル(当時約86億円)を調達しており、欧州投資銀行からの資金調達はこれに続く大型調達となる。同社の調達総額は1億5140万ドル(約234億円)に達した。
Green queenの報道によると、Formoは調達した資金で、麹由来チーズ生産のスケールアップ、新製品の開発、精密発酵カゼインの認証取得を目指すとしている。
Formoは現在、アメリカで精密発酵カゼインの認証手続きを進めており、2025年末までにGRAS判定(GRAS Determination)を完了する見込みだとgreen queenに述べているが、FDAへの通知までを予定しているかは不明である。
2019年創業のFormoは、精密発酵によるカゼイン開発、「マイクロ発酵」による麹菌由来のチーズ開発を手掛けている。
後者は昨年9月、ドイツ・オーストリアのスーパーマーケットREWE、Billa、METROの2,000を超える店舗で発売された。Formoは麹菌由来チーズの開発において、麹菌のうま味を高める働きではなく、培養によりニュートラルな風味のあるタンパク質を生成できる力に着目したと述べている。
精密発酵カゼインの進展
Formoが認可に時間を要する精密発酵カゼインに先行して麹菌由来チーズの上市を進めるのは、先に収益を上げることで、後続の研究開発費用にあてる狙いもあると考えられる。先行して製品を市場に出すことで、認知拡大、販売網を構築することも可能になる。
精密発酵カゼインでは米New Culture、オーストリアのFermifyがアメリカでGRAS自己認証に到達しているが、上市はまだ確認されていない。
New Cultureは先月、美味しさと品質を保持しながら、従来のモッツアレラチーズと比較して、精密発酵カゼインの使用量を50%以上削減できたとの成果を発表した。
先日、欧州味の素食品との提携を発表したフランスのStanding Ovationは、2025年のアメリカ上市を目指している。
精密発酵カゼインを開発するベルギーのThose Vegan Cowboysは昨日、90年以上の歴史を誇るドイツの大手チーズ企業Hochlandと共同開発契約の締結を発表した。
欧州投資銀行からの融資や大手企業との提携は、精密発酵カゼインがもつポテンシャルに対する市場の関心の高さを示しており、今後の進展が注目される。
参考記事
Formo: German Sustainable Protein Startup Gets $36M from EU Bank
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アイキャッチ画像の出典:Formo