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日本のプラントベース市場は“選択肢”になれるか─展示会から見えた多様化と流通の壁|プレミアム・フードショー2025現地レポート

 

東京ビッグサイトで4月15日-17日に開催された「プレミアム・フードショー」では、国内のプラントベース食品が集結し、最新製品や試食展示を通じて各社の取り組みを紹介していた。

植物性チーズや代替肉、ビーガン餃子、アニマルフリーのラーメンスープ、植物性ホイップなど、多様なラインナップが揃い、プラントベース市場の広がりを感じさせる内容だった。一方で、会場で交わされた現場の声からは、国内プラントベース市場が直面する課題も垣間見えた。

Foovo(佐藤)撮影

六甲バターは、2022年3月に発売したプラントベースチーズ「Pシュレッド」に続き、2025年3月に新たに発売した「Pシュレッドのびーるタイプ」の試食を実施。

伸びる様子 Foovo(佐藤)撮影

キーマカレーに添えて提供された植物性チーズ Foovo(佐藤)撮影

キーマカレーに添える形で提供し、植物性チーズでも伸びる感覚を体感できるものになっていた。製品には、植物性素材の中でもコクが出やすいというアーモンドペーストを使用している。

その隣では、ビヨンドミートを取り扱うU.S.M.Holdingsユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス)が出展。マルエツなどスーパーマーケットの冷凍コーナーで展開中の代替肉製品の試食を提供していた。

Foovo(佐藤)撮影

3月28日に新たに発売されたBEYOND STEAK」(160g/税込645円)、「BEYOND MEATBALLS」(160g/税込645円)も展示されており、こちらは冷凍のまま調理可能。マルエツ、KASUMI、マックスバリュ、いなげやの一部店舗(取扱い店舗一覧はこちら)ほか、Green Growersのオンラインショップでも購入可能となっている。

餃子計画はビーガン餃子を披露。米粉を使ったグルテンフリーの皮で包み、肉の代わりに大豆・野菜のみを具材に使用した餃子だ。国内だけでなくアメリカ、台湾など海外でも展開されているという。

餃子計画のビーガン餃子 Foovo(佐藤)撮影

ラーメンスープやガラスープなどを展開するスープメーカーの丸善食品工業は、業務用のアニマルフリーのラーメンスープを展示。これまでのラーメンスープに加え、動物性原料を使用しないスープのニーズが高まったことを受け、開発に踏み切った。

会場では豚骨風、醤油、担々麺の3種のアニマルフリースープの試食を提供していた。醤油、担々麺は近日発売予定。インバウンド対応として、ホテルのビュッフェメニューなどへの採用に向けた引き合いがあるという。

月島食品工業のブースでは、発酵豆乳とココナッツオイルを使用した植物性ホイップや、豆乳とココナッツミルク由来の植物性カスタードクリームの試食が提供された。

植物性カスタードクリーム(左)と植物性生クリーム(右) Foovo(佐藤)撮影

ビーガンレストランなどへ供給されている。植物性カスタードクリームの黄色は色素で再現しているが、どちらも違和感のない仕上がりになっていた。これらは同社のプラントベースブランド「Poff」から展開されており、2025年には植物性ビーガンバターも発売される。

三洋産業のコーヒーブランド「YOUMECA」は、自家焙煎のスペシャルティコーヒー豆を使用したプラントベースアイスを出展。なぜプラントベースにコーヒーなのかと尋ねると、もともとコーヒー用のペーパーフィルターの製造からスタートしたからだと教えてもらった。

Foovo(佐藤)撮影

コーヒープラントベースアイス(左) 右は豆乳ベースの植物性アイス Foovo(佐藤)撮影

乳・卵を使わずとも、本物のアイスと違和感のない味わいを再現している。昨年7月に発売され、現在、直営のカフェやオンラインで販売されている。

塩こんぶでおなじみのくらこんは、ひよこ豆をベースとした「HUMMUS(ハマス)」を展示。

Foovo(佐藤)撮影

日本ではまだ馴染みがないが、フムスとも呼ばれ、トルコ、イスラエルなど中東や地中海の地域で広く食べられるひよこ豆をペースト状にした伝統食品だ。会場ではオリジナル、マイルドスパイシー、トマト&バジルの3フレーバーの試食を提供していた。

 

筆者所感

各ブースで話を聞く中で、国内におけるプラントベース製品の需要は、緩やかではあるものの確実に増加傾向にあることが感じられた。ただし、その需要の多くは訪日外国人によるインバウンド需要が牽引しているという声が多く、国内市場単体での成長には依然として課題が残る。

たとえば、飲食店からビーガン対応製品を導入したいとの声があっても、卸との取引条件が折り合わず実現しないケースや、スーパーでの陳列スペースが既存の非ビーガン製品に占有されているため、新製品が入り込みにくいという現場の声も聞かれた。

総じて、国内のプラントベース市場の成長はまだ途上ではあるものの、今回の展示を見て、確実に多様化が進んでいることを感じた。インバウンド需要による牽引は追い風だが、いつ第2の新型コロナのような事態が起こるとも限らない。長期的な導入を進めるには、日本の消費者にとって「当たり前の選択肢」として定着させていく必要性を感じた。しかし、現場で聞いた声からは、その実現には流通や小売など構造的なハードルがあることも感じられた。

 

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アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影

 

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