代替プロテイン

スペイン乳業メーカー、代替乳製品開発に向けた「Mylkcubator」第2コホートを発表

 

Mylkcubatorの新しいコホートが発表された。新コホートには、代替乳製品開発に取り組むスタートアップ5社が5つの国から選抜された。

Mylkcubatorは、スペインを拠点とする乳業メーカー、パスカルのベンチャー部門Pascual Innoventuresが運営するインキュベーションプログラムで、2021年5月に最初のコホートが発表された。

Mylkcubatorは細胞農業により乳製品を開発するスタートアップ支援を目指しており、乳業メーカーが立ち上げたインキュベーションプログラムとして注目されている。

Mylkcubatorの最初のコホートに選抜されたのは、De Novo DairyZero Cow FactoryReal Deal MilkM2Factorsだった。

この中で、南アフリカを拠点とするDe Novo Dairyはラクトフェリンを、インドを拠点とするZero Cow Factoryはカゼインを開発している。いずれも精密発酵企業であり、新コホート発表とあわせて、Pascual Innoventuresはこの2社に出資を行った。

Pascual Innoventures でディレクターを務めるGabriel Torres氏は、「消費者の生活の質を向上させ、新市場への参入を可能とする、新しく拡張された機能を備えた新製品を発売するため、協業契約を強化する予定です。De Novo Dairyと協力して、乳児の発達に不可欠で、免疫システムを強化する高価値タンパク質であるラクトフェリンの生産を模索します。Zero Cowとは、アニマルフリーなチーズ、ヨーグルトの良好な風味に不可欠な乳タンパク質であるカゼインの合成に取り組みます」と述べ、コホート企業との連携を強化していく考えを示している。

昨年のコホートは精密発酵企業3社、細胞培養企業1社から構成されていたが、今年は分子農業などほかの技術を使用する企業も選抜されている。

イメージ画像

新たなコホートには、MaolacMirukuERGO BioscienceNutropyPFx Biotechの5社が選定された。

  • Maolac(イスラエル):ウシの初乳または植物由来の類似物からタンパク質を抽出することでスーパーフードを作成。ヒトの母乳に含まれる1,500以上既知の生理活性タンパク質のライブラリーを作成。Maolacは、ウシの初乳が、ヒトの母乳と95%以上の生物学的類似性を持つ400以上の相同タンパク質を持つ「ほかの供給源」の1つであることを特定している

 

  • PFx Biotech(ポルトガル):小児および高度な栄養に使用する代替タンパク質成分として、精密発酵技術を用いて、生物活性のある機能的なヒト母乳タンパク質の商品化に注力している。

 

  • Miruku(ニュージーランド):分子農業を使用して植物細胞をプログラムし、植物由来乳製品の作成に適したタンパク質と脂肪を生成することで、持続可能で栄養価が高く、費用対効果の高い代替乳製品の提供を目指している。

 

  • ERGO Bioscience(アルゼンチン):ニンジンを使用して、代替乳製品用のαS1-カゼイン、κ-カゼイン、代替肉用のウシミオグロビンを開発している。ERGO Bioscienceは、植物細胞を同時に複数遺伝子改変するようプログラムし、バイオリアクターで何百万の生産を可能にするするプラットフォームを開発している。ERGO Bioscienceは自社の技術について、「植物細胞の精密発酵」と呼んでいる。

 

  • Nutropy(フランス):酵母を使用した精密発酵により、牛由来と同等のカゼインタンパク質、乳脂肪酸を開発している。9月にシードラウンドで200万ユーロ(当時約2億8600万円)を調達した。

 

参考記事

Pascual Innoventures announces 2022 Mylkcubator cohort to develop milk of the future

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Mylkcubator

 

関連記事

  1. 酵母から脂肪を開発するCultivated Bioscience…
  2. 「チキンのテスラ」で知られる植物肉の米SIMULATEが約55億…
  3. ドイツのBluu Seafoodと中国のCellXが「細胞農業を…
  4. オランダ政府が細胞農業に約82億円の出資を発表、国の成長計画とし…
  5. イート・ジャストがカタールへの培養肉工場の建設でQatar Fr…
  6. 植物性卵・培養鶏肉を開発するイート・ジャストが新たに約219億円…
  7. 植物肉企業Plantedが約100億円を調達、植物由来の鶏胸肉を…
  8. 米国IPOを目指すMeat-Techが3Dプリンターで10mmの…

おすすめ記事

イスラエル企業Remilk、アメリカで精密発酵乳タンパク質の認可を取得

テルアビブを拠点とする精密発酵企業Remilkは、アメリカでGRAS自己認証を取…

インポッシブルフーズがオーストラリア・ニュージーランド進出へ向け準備

代表的な米代替肉企業インポッシブルフーズが1年以内に株式上場すると言われるなか、…

BioCraft Pet Nutrition、社名変更とともに培養ペットフードの商用化に注力

ペットフード市場向けに培養肉を開発する最初の企業であるBecause Anima…

精密発酵乳タンパク質を使用したアイスクリーム実食レビュー@シンガポール

シンガポールでは2022年8月より、Coolhausブランドというアニマルフリー…

米Jellatech、細胞培養によるⅠ型コラーゲンの生産に成功|動物を犠牲にしない「本物のコラーゲン」

アメリカ、ノースカロライナ州を拠点とするJellatechは、独自の細胞株の培養…

シンガポールのSophie’s Bionutrientsは微細藻類を原料にした代替パテ肉を発表

シンガポールのSophie's Bionutrientsは微細藻類を使った植物性…

精密発酵レポート予約注文受付中

培養魚企業レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(06/07 18:06時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(06/07 21:46時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(06/08 15:17時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(06/08 08:26時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(06/07 17:47時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP