微細藻類による油脂生産を行うファイトリピッド・テクノロジーズ(Phytolipid Technologies)が、シードラウンドで2億2,000万円の資金調達を実施した。
今回調達した資金をもとに、微細藻類ナンノクロロプシスを用いた自社培養施設の設置と生産技術の高度化を進める。
同社は瀬戸内沿岸部への培養施設の設置を計画している。藻類の培養に必要な二酸化炭素や廃熱を提供できる企業が多く、気候条件にも適していることから、設置場所として適切だと判断したという。
ファイトリピッド・テクノロジーズは、東京科学大学認定ベンチャーとして2021年に設立された。植物や藻類に含まれる脂質を最先端の技術で有効利用し、二酸化炭素の削減に貢献することを目指している。

代表取締役CEOの太田啓之氏 出典:ファイトリピッド・テクノロジーズ
開発対象として選んだのは、油脂生産に優れる微細藻類ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)。
本藻類は、オメガ3脂肪酸の一種であるEPAを豊富に含み、乾燥重量で最大60%の油脂を含有することで知られる。既存の微細藻類株の中でも、高いバイオマス、タンパク質、脂質生産性を有し、経済的に実現可能なバイオ精製プロセスを可能にするため、EPA生産の理想的なモデルとして期待されている。
実際に、ナンノクロロプシス由来の油脂の商用化は海外ですでに進んでいる。
たとえば米Qualitas Healthは、ナンノクロロプシス由来のサプリメント「AlmegaPL」を市販しており、Amazonでも販売している。米Arizona Algae Productsも、標高1,500メートルのアリゾナ州にある施設で、ナンノクロロプシスを用いたオメガ3パウダーと油脂を製造している。またEUでは、Nannochloropsis gaditana由来のオレオレジンが新規食品として申請されており(2025年5月受理)、食品用途でのさらなる展開が期待されている。
ファイトリピッド・テクノロジーズは、ナンノクロロプシスを高密度に培養する技術や、有用脂質類を分別して生産する技術を有している。設置予定の自社施設では、微細藻類由来の油脂、オメガ3脂肪酸、タンパク質成分を生産し、食品メーカーへの提供を目指す。
今回の資金調達には、京都大学イノベーションキャピタル、リバネスキャピタル、広島ベンチャーキャピタル、フォーカスインキュベート、京都キャピタルパートナーズ、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルが出資。
ファイトリピッド・テクノロジーズは昨年10月にもリバネスや広島ベンチャーキャピタルなどから3,000万円の出資を受けており、今回は2回目の資金調達となる。
広島ベンチャーキャピタルは、ファイトリピッド・テクノロジーズが瀬戸内地域を培養施設の設置候補地として想定していた初回出資時点から、同地域の廃熱やCO₂資源の活用可能性、環境適性に着目し、事業の社会的意義と地域活性化への波及効果を評価した姿勢を示している。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:ファイトリピッド・テクノロジーズ