Foovo Deep

米PFerrinX26、日本で精密発酵ラクトフェリンの戦略的産業パートナーを模索──2027年に米国で初上市へ【創業者インタビュー】

左からBrian Ruszczyk氏Leah Bessa博士Richard Grieves氏(Foovo佐藤撮影 都内にて)

精密発酵によるラクトフェリンの商業化を目指す米FerrinX Corp (別名:PFerrinX26)が、日本市場への参入に向けて動き出した。

PFerrinX26は、Earth First Food Ventures(EFFV)と南アフリカ・アメリカに拠点を置く精密発酵スタートアップDe Novo Foodlabsの合弁会社として設立された。

2027年にアメリカ上市を計画しており、精密発酵ラクトフェリンのアジア展開に向け、現在、日本での戦略的産業パートナーを探索している。

ラクトフェリンから始める戦略的理由

出典:PFerrinX26

PFerrinX26がラクトフェリンを第一の製品として選択したのは、明確な経済的メリットに基づいている。

ラクトフェリンは免疫調整や抗炎症作用を持つ乳由来の機能性タンパク質で、乳児用調製粉乳(主にアジア)や成人栄養製品、化粧品などに用いられているが、供給・価格の制約により普及が限られている。

共同創業者兼共同CEOのBrian Ruszczyk氏はその理由について、「ラクトフェリンは1キロあたり650ドル(約9.6万円)という高価格で、β-ラクトグロブリンの約10倍の価格設定です。牛乳1リットルからわずか100-150mgしか抽出できないため、従来の乳業メーカーにとって製造コストが極めて高くなっています」とFoovoに述べた。

精密発酵によるタンパク質生産はコスト高だが、ラクトフェリンのような高価格・高利益率の製品であれば、既に従来製法との競争が可能となると同氏は言う。

Ruszczyk氏によると、現在の世界ラクトフェリン市場は年間約850トン規模で、アジアが全世界消費量の3分の2を占める。同氏は精密発酵技術の普及により、将来的に5,000トンの市場に成長する可能性を見込んでいる。

同氏によると、大量生産が前提のカゼインやβ-ラクトグロブリンとは対照的に、ラクトフェリンの米国消費量はわずか200トンにとどまる。「10万〜20万リットル規模の設備はこの業界では特別に大きくなく、この規模の施設であれば精密発酵により年間50〜100トンのラクトフェリン生産が見込めます」とDe Novo Foodlabs 共同創業者兼COOのRichard Grieves氏は語る。

注目すべきは、同社が既に同等価格を実現していることだ。

「乳業メーカーのラクトフェリン製造コストは平均300ドル(約4.4万円)/kgですが、当社は既にそれと同等かそれ以下での生産を実現しています。さらに年々コストを削減できる点は、従来の乳業では不可能なことです」とGrieves氏は述べ、将来的には100ドル(約1.4万円)/kgまでの低コスト化を目指しているという。

業界の過ちと戦略的パートナーの本質

出典:PFerrinX26

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

 

インタビュー実施時期:2025年7月14日(都内にて)

 

関連記事

アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影

 

関連記事

  1. モサミートが培養牛脂の公式試食会をEUで初めて開催、ハイブリッド…
  2. モサミートがEUから助成金を授与、Nutrecoと共同で培地コス…
  3. Current Foodsが生食用代替シーフードのDtoC予約販…
  4. オランダの培養肉企業Meatableが約51億円を調達、来年にシ…
  5. 分子農業で代替タンパク質と成長因子を開発するスタートアップ企業4…
  6. 【世界初】米Mission Barnsの培養脂肪、FDAの安全性…
  7. Novameatが約7億円を調達、独自3Dプリント技術による代替…
  8. フランスのVital Meat、初の培養肉試食会をシンガポールで…

おすすめ記事

Veganzが開発したシート状の代替ミルク製品Mililk|環境負荷をさらに軽減した代替ミルク

国内スーパーでも定番となった代替ミルク。目にする製品はほぼ、紙パックに入ったすぐ…

植物性ハチミツの米MeliBioをスイスのFoodYoung Labsが買収──精密発酵技術は買収対象外

2025年5月30日更新ミツバチに依存しないハチミツを開発する米MeliBioが、スイスの食…

東京大学、1125本を使用した中空糸バイオリアクターで厚みのある11gの培養鶏肉生成に成功

培養肉を開発する東京大学の竹内昌治教授らの研究グループは、内部が空洞になった中空…

Those Vegan Cowboysが精密発酵で作成されたチーズを発表

オランダの植物肉ブランドThe Vegetarian Butcherからスピンオ…

コンタクトレスなキオスク型スムージーロボットBlendid、株式投資型クラウドファンディングを開始

新型コロナウイルスの発生で、急速な変化を求められている分野の1つがフードロボット…

イスラエル大手食品会社Tnuva、代替タンパク質特化のR&Dセンター設立へ

イスラエル大手食品会社Tnuva(ツヌバ)は代替タンパク質分野の取り組みを強化す…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/17 16:14時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/18 02:54時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/18 06:24時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/17 22:15時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/17 14:16時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/18 01:33時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP