代替プロテイン

オレオゲルで代替脂肪を開発するPerfat Technologies、シリーズAで約4.3億円を調達|欧州で年内に商用生産開始を計画

2025年9月25日更新:Jyrki Lee-Korhonen氏のFoovoへのコメントを追記しました。

オレオゲル技術で代替脂肪を開発するフィンランドのPerfat Technologiesは今月10日、シリーズAラウンドで250万ユーロ(約4億3,500万円)を調達した。

昨年3月のシードラウンド(100万ユーロ/約1億7,400万円)に続く資金調達となる。

本ラウンドはNewtree ImpactBeyond Impactが主導し、Nordic Science Investmentsヘルシンキ大学基金(University of Helsinki Funds)、Big Idea Venturesが前回に続いて参加した。

Beyond ImpactのSagar Tandon氏は、「人間とペットの栄養に関わる原料プラットフォームへの投資家として、私たちはPerfatがオーダーメイドの固体機能性脂肪を生産する能力に非常に感銘を受けています」と技術を高く評価している。

Perfat Technologiesは調達した資金で生産の拡大、チームの拡充、脂肪ソリューションの市場投入を図る方針だ。

飽和脂肪酸を抑え、食物繊維を含む代替脂肪

出典:Perfat Technologies

同社によれば、菜種油やヒマワリ油などの健康的な植物油脂は技術機能面の制約から食品生産での使用が限定されてきた。同社の技術により、バター、パーム油、ココナッツオイルなどの従来の脂肪に代わる、より健康的で持続可能な代替品を提供できるとしている

2023年に設立されたPerfat Technologiesは、オレオゲル技術と材料物理学の知見を活用し、健康に良い植物油脂の脂肪酸プロファイルを変えることなく、固体/半固体の代替脂肪を開発している

オレオゲルとは、ゲル化剤が形成する三次元構造に液状油脂を取り込ませ、全体として固体脂肪のような形状をとっている状態をいう。ゼリー中の水を油に変えたイメージだ。

これにより、身体に良いとされる不飽和脂肪酸を豊富に含む植物油脂を、動物脂肪のような固体形状にできる。

共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のJyrki Lee-Korhonen氏は以前、Foovoのインタビューで「当社は食品用途に応じて構造を変えることが可能で、クライアントの製造要件に合わせて、より硬くすることも、より柔らかめにすることも、流動性の状態にすることもできます」と述べた

出典:Perfat Technologies

また、Perfat Technologiesの代替脂肪は、心疾患リスクとの関連が指摘される飽和脂肪酸を80%、そしてカロリーを30%抑えながら、腸内環境の改善に寄与する100g中食物繊維を30g含んでいることも特徴だ。これにより、脂肪に”健康メリット”という付加価値をもたらすことが可能となる。

同社は自社脂肪について「世界初の食物繊維を強化したゲル化植物油脂」だとプレスリリースで表現している。

事業進捗について、Perfat Technologiesは2024年の売上が1070%成長したと公表している。同社はB2B供給を目指しており、顧客による採用など正式販売の発表は確認できていないが、評価用・試作品向けの有償提供が行われている可能性が考えられる。

Jyrki氏は照会に対し、収益の詳細に関する回答は控えたが、年末までに欧州で商用生産を開始する予定だとFoovoのメール取材に回答した。

Foovo調査により作成 2024年12月時点

オレオゲルは、飽和脂肪酸を抑えながら固体/半固体の構造化された脂肪を作る技術として近年注目されている。

Foovoの調査(2024年12月時点)でも関連論文は増加傾向にあり、Paragon PureFattastic TechnologiesGavan Technologiesなどのスタートアップが登場している。

Paragon Pureは、今年初頭の時点でパイロット工場の稼働発表している

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Perfat Technologies

 

関連記事

  1. Gelatex、年間300トンの培養肉生産を可能とする足場生産の…
  2. チーズ大手のBelグループ、米Superbrewed Foodと…
  3. ベルギーの精密発酵企業Paleoが約2.5億円のシード資金を調達…
  4. 米Brown Foodsが培養全乳「UnReal Milk」を発…
  5. 培養肉企業フューチャーミートが約394億円を調達、生産コストを1…
  6. インテグリカルチャー、培養肉用資材のB2Bマーケットプレイス「勝…
  7. エストニアのÄIO、林業廃棄物を活用した代替油脂の生産拡大|10…
  8. GOOD Meatがシンガポールで培養鶏肉の販売を一時停止、再開…

おすすめ記事

培養肉企業アレフ・ファームズ、培養コラーゲン事業への参入を発表

※写真はアレフ・ファームズが2024年の上市を目指す培養コラーゲンのプロトタイプ…

精密発酵で脂肪を開発するNourish Ingredientsが約39億円を調達

精密発酵で脂肪を開発するオーストラリア企業Nourish Ingredients…

オランダのモサミートが約27億円を調達、細胞性バーガーで99.999%のコスト削減を達成

出典:Mosa Meat牛肉や牛脂などの細胞性食品を開発するオランダのモサミート(Mosa Me…

廃棄される果物の皮からドライフルーツを製造するRINDが約6.7億円を調達

廃棄される果物を活用してドライフルーツスナックを製造するRINDがシリーズAラウ…

パーフェクトデイ、精密発酵の「biology-as-a-service」を本格始動

食用タンパク質で精密発酵をリードする米パー​​フェクトデイ(Perfect Da…

福井大学、凍み豆腐にヒントを得た培養肉用の可食性足場を開発|海外でも進む大豆由来の足場研究

福井大学の研究チームは、培養肉の大量生産に向けて、可食性の多孔質足場を開発した。…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/31 16:29時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/31 03:09時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/31 06:46時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/30 22:28時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(12/31 14:28時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(12/31 01:52時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP