アグテック

Apeel Sciences、鮮度を保てるプラスチックフリーなキュウリ、ウォルマートで販売開始|食品ロス問題の解決に

食品ロス問題に取り組む米スタートアップのApeel Sciencesは、Houwelingグループとの提携を発表、店頭でプラスチックを使わないキュウリを提供する。

Apeel Sciences社の鮮度を保てるキュウリは、100店舗を超えるウォルマートで今月から販売される。

キュウリは通常、プラスチックで包装されてスーパー店頭に並ぶ。プラスチックで包むのは、鮮度を保つためだ。しかし、キュウリ1本あたりに使用されるプラスチックは2gで、5本のプラスチックストローに相当し、プラスチック廃棄量が増える要因となっている。

こうした問題を解決するために立ち上がったのが、米Apeel Sciences社だ。

同社は2012年にJames Rogerによって設立された。ビル&メリンダ・ゲイツ財団から助成金10万ドルを得て、今年5月には2億5千万ドルを資金調達している。

Apeel Sciencesの創始者James Rogers

Apeel Sciences社が開発したのは、包装材料を使わずに食品の保存期間を延ばす技術だ

野菜の皮や種など、野菜が自身を保護する部分からオイルを抽出し、パウダー状にした。これを水に溶かしてスプレーとして野菜に吹きかけると、色・匂い・味のない見えないコーティングが形成され、野菜を保護する仕組みだ。

このプラスチックを使わないコーティングによって、野菜の水分が保持され、酸化を防ぐ

出典:Apeel Sciences

100%植物由来の天然素材を使って、野菜を通常の2~3倍長く保存できるようになる。

Apeel社の技術を適用した商品は、キュウリだけでない。すでに、アボカドがクローガーで販売されている。全米の25%に新鮮な食材を提供するウォルマートでの販売開始は、Apeel社にとって大きな躍進だ。

出典:Apeel Sciences

Rogerは、レモンは置いておいても変化しないのに対し、いちごは弱っていく現象に技術の着想を得たという。どちらも同じ細胞で構成されているが、分子配列に違いがあることを見出したRogerは、植物から食べられる材料を取り出し、レモンに近い分子配列になるようなソリューションを考えた。

同社の技術はリンゴ、ライム、シトラスにも適用されている。

出典:Apeel Sciences

出典:Apeel Sciences

ドイツでは、Apeelを適用したアボカドは、スーパーでの廃棄が50%減り、販売が20%増えたという。 

自然をコントロールするのではなく、自然と調和を取りながら、最適なソリューションを生み出していくーこれがApeelの理念だ。

 

参考記事

Exclusive: Startup Apeel is launching ‘plastic-free’ cucumbers at Walmart to cut back on waste

This simple step can double the shelf life of fruits and vegetables

Life Cycle Assessment of Apeel Produce

 

アイキャッチ画像の出典:Apeel Sciences

 

 

関連記事

  1. 食品ECのFarmsteadが約8億円を調達、デリバリー対応地域…
  2. 農家に植物の「内なる声」を伝えるInnerPlantが約6.2億…
  3. カナダのTerra Bioindustries、ビール粕由来のタ…
  4. フードロス削減のために米Surge Alertが開発した気候モニ…
  5. デリバリー専門のスウェーデンVemblaが約7300万円を資金調…
  6. 二酸化炭素から動物飼料用のタンパク質を作るDeep Branch…
  7. Calystaの単細胞タンパク質FeedKind、水産養殖への使…
  8. 代替タンパク質を「ニッチ」から「定番」に:業界リーダーが語る普及…

おすすめ記事

微生物発酵で脂肪を開発するNourish Ingredientsが初ラウンドで約12億円を調達

オーストラリアのスタートアップ企業Nourish Ingredientsが初のラ…

培養シーフードのShiok Meatsが生産コスト50ドル/kgを実現、2023年に培養エビ上市へ

アジアにおける培養シーフードの先駆けであるシンガポール企業Shiok Meats…

SJW Roboticsがアジア料理を作る自律型ロボットレストランの試作品を公開

カナダ、トロントを拠点とするSJW Roboticsは、アジア料理を作る完全自律…

Wilkが細胞培養による乳脂肪を使用したヨーグルト開発に成功

細胞培養によりヒト、動物の乳成分を開発するイスラエル企業Wilk(ウィルク)は、…

マクドナルド、ビヨンドミートと開発した植物性マックナゲットをドイツで発売

マクドナルドはビヨンドミートとの提携を通じて、ドイツのマクドナルド1400店舗で…

カンガルーの培養肉を開発するオーストラリア企業Vow、食の変革に挑む

培養肉といえば、牛、豚、鶏、魚を思い浮かべることが多いが、オーストラリアのフード…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/17 14:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/18 00:10時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/18 03:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(01/17 20:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/18 12:39時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/17 23:23時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP