このニュースのポイント
スペインNovameatが3Dプリンターで作った培養肉試作品を発表
既存の植物性ステーキ肉Steak2.0は年内に欧州レストランに販売予定
独自の微細押出成形技術は2~3年のうちに植物肉メーカーとライセンス契約へ
当面の課題は製造時間の短縮
3Dプリンターで代替ステーキ肉を製造するNovameatが培養肉の試作品を発表した。
10月に開催されたSKS2020でNovameatは3Dプリンターによるステーキ肉製造を実演。
同社はこれまで植物性原料のみ使うステーキや豚肉を製造してきたが、SKS2020でCEOのGiuseppe Sciontiは、植物性材料を足場として培養肉とハイブリッドした試作品を開発中であることを明かした。

SKS2020で発表された培養肉の試作品。機密情報のためモザイクをかけている
Novameatのバイオ3Dプリンターは、独自の微細押出成形技術によって粘弾性(粘性と弾性を両方備えた性質)を持つ材料を直径10pm~1000pmのシリンジから押出す。垂直に押し出された材料は、交差するように積層され、2層以上からなるステーキ肉が作られる。

Novameatのバイオ3Dプリンター SKS2020にて
SKS2020のデモ開始時に、すでにある程度3Dプリントされていたステーキ肉は、30分にわたるデモが終わった時点でも完成していなかった。
同社は現在、製造時間の短縮に取り組んでいる。
レストランなど現場で稼働できるレベルまでの時間短縮を目指している。レストランが、材料をカスタマイズしてオリジナルなステーキ肉を作れるようにしたいと考えている。

出典:Novameat SKS2020にて
Sciontiは、Novameatの代替ステーキ肉は口当たり、味、見た目、栄養面すべてを満たすと自信を見せる。
Novameatの戦略
Novameatはスペイン・バルセロナ発の代替肉スタートアップ。
今年1月には新商品Steak2.0を発表した。歯ごたえ、外観いずれでも本物の牛肉ステーキそっくりに仕上げた製品で、製造コストは50gあたり1.5ドル(約155円)。Steak2.0の味覚テストはまだ実施されていない。

NovameatのSteak2.0 出典:Novameat
6月には3Dプリンター製ポークを発表した。このポークはエンドウ豆、米、オリーブオイル、海藻、ビートの絞り汁を材料に使い、同社の微細押出成形技術を用いて肉の歯ごたえを再現したもの。
代替ポーク開発には、肉だけでなく海産物も作れるという「自社技術の汎用性」をアピールする狙いがあったという。
Novameatは昨年、ベンチャーラウンドでNew Crop Capitalから資金調達(調達額は非公開)を受けており、今後2~3年以内に自社の微細押出成形技術で植物肉企業とライセンス契約したい考え。それに先立ち、年内に欧州レストランへの小規模販売をしたいと考えている。

CEOのGiuseppe Scionti 出典:Novameat
年内に欧州のレストランで販売開始できるかどうかは、新型コロナウイルスの感染状況も関係するだろう。冬になり、感染がさらに拡大すれば、再びロックダウンされる都市も出てくる可能性は高い。
しかし、3Dプリンターを使うメリットの1つは、生産を自動化できること。現に、Scionti によると、6月に発表された代替ポークはリモートワーク中に開発したものだという。
パンデミックの最中、研究所へ行けなくても、3Dプリンターは稼働できる。こういう点で、アフターコロナ・withコロナの社会にとって、3Dプリンターによる代替肉開発はより現実的かつ有効な選択肢となりそうだ。
3Dプリンター製ステーキ肉を開発する他社
Novameatのほかに3Dプリンターで代替肉を開発する会社には次のものがある。
✅Redefine Meatは7月に植物由来のAlt-Steakを発表。1時間あたり50個のステーキを製造できる。年内に欧州の一部レストランで市場テストするほか、2021年には販売パートナーに産業用バイオ3Dプリンターを広く販売したい考え。

出典:Redefine Meat
✅Mea Techは、8月にカルパッチョのようなラボ産ステーキの製造に成功している。幹細胞を筋肉細胞や脂肪細胞に分化させた、細胞ベースの培養肉だ。
✅SavorEatが3Dプリントする肉は独特だ。植物肉の3Dプリントと調理を同時に行う。一層3Dプリントしたら、一層を調理し、次の一層を3Dプリントする――このくり返しで、すぐに食べられる肉が完成する。SavorEatは今年から来年にかけて、レストランでトライアルを実施する予定。
✅Aleph Farmsは宇宙で牛の細胞から筋肉組織を3Dプリントすることに成功している。
上記の4社はすべてイスラエル発のスタートアップだ。
「3Dプリント肉」はいずれも市場にまだでていないが、1社、見過ごせないのは代替肉の巨人・インポッシブルフーズだろう。同社は牛ひき肉の次に牛ステーキ肉を作る必要性について言及している。
3Dプリンターは使わずに、きのこの菌糸体を活用して厚みのあるブロック肉を作るMeati Foodsもいる。
本物そっくりな代替ステーキ肉を作るスタートアップは今後も次々に出てくるだろう。
参考記事
SKS 2020: Novameat Expanding into Cultured Meat for its 3D Printer
NovaMeat Unveils Version 2.0 of its 3D-Printed Meatless Steak
Novameat Develops 3D-printed Pork Alternative to Feed Plant-based Meat Demand
アイキャッチ画像の出典:Novameat
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