代替プロテイン

植物性チーズを開発するスウェーデン企業Stockeld Dreamery、今年前半に初商品の発売へ

 

植物性チーズのシェアは大きくないが、代替チーズに取り組む企業は増えつつある。

今回紹介するスウェーデン企業Stockeld Dreameryもその1つとなる。

出典:GFI

2019年の時点で、米国における植物性チーズのシェアは代替ミルクなど他分野ほど大きくないものの、売上は過去2年で約1.5倍に増えている

世界人口の65%は乳糖不耐症とされる背景からも、ヴィーガンチーズへの需要は高まりを見せている。

こうした中、Stockeld Dreameryが開発する植物性フェタチーズは市場投入まで秒読みのフェーズまで来ている。

同社はこのほど、今後約1ヶ月のうちに商品を発売する予定であることを発表した。

「世界で最も野心的なチーズ」を開発するStockeld Dreamery

Anja Leissner氏(左)とSorosh Tavakoli氏(右) 出典:Stockeld Dreamery

Stockeld Dreameryは、本当においしいヴィーガンチーズを作ることをゴールに、Anja Leissner氏Sorosh Tavakoli氏が2019年に設立したスタートアップ企業。

代替チーズの課題は、風味、食感、匂い、口当たりとされる。特に、溶けたときの口当たりも再現しなければならない点がハードルとなる。

「世界で最も野心的なチーズ」作りを目指すStockeld Dreameryは、世界中の50種類以上の植物性チーズを試した結果、「2020年は魅力的な植物性チーズが発売されなかった1年だった」とブログにつづっている。

スウェーデン・ストックホルムを拠点とする同社は、発酵させたえんどう豆・そら豆を原料にフェタチーズを開発している。

同社によると、従来のフェタチーズと同等のタンパク質、脂肪を含み、炭水化物は含まないという。

シードラウンドで325万ユーロ(約4億2千万円)を調達した1年前は、プロトタイプをいくつか作った段階で、試食テストもまだ実施していなかった。

試食会の様子 出典:Stockeld Dreamery

その後、シェフ、チーズ愛好家などを巻き込んだ試食会を100回実施し、生産規模をパイロットスケールにまで拡大した。

現在は、工場立ち上げのフェーズまできている

市場投入の戦略は限定的に生産し、まずストックホルムのレストランや外食産業に販売するという。インポッシブルフーズがとったのを同じ戦略だ。

長期的には自社ブランドを立ち上げ、小売展開を目指す。今後1年半でスタッフを現在の6名から20名まで増やし、今より大きな生産施設に移転する計画だ。

Stockeld Dreameryは、シェフや飲食店が最も使いたいと思う最高級のチーズを誰もが入手できるようにすることを理念としている。

植物性チーズの開発に取り組む理由について共同創業者のLeissner氏は、スウェーデンではプラントベースへ移行するうえでチーズが大きなハードルになっていること市場には発酵を活用した素晴らしい植物性チーズがあるものの、ナッツをベースとしたものが多く、価格・原料供給の面で持続可能ではないという2点をあげている

ヴィーガンチーズ市場は2027年には44億ドル規模に

植物性チーズに取り組む企業はStockeld Dreameryだけではない。

代替チーズの場合、代替肉のように原料が特定のものに集中していることはなく、各社さまざまな原料を使用している。

たとえば、カリフォルニアを拠点とするGrounded Foodsは、発酵したカリフラワーヘンプシードを原料にカマンベール、フェタチーズ、クリームチーズなどを開発している。

Stockeld Dreameryの試作品 出典:Stockeld Dreamery

じゃがいも人参を原料にチーズソースを開発するアメリカ企業Loca Foodは、人々がプラントベースの生活スタイルへ移行したくても理想的な代替チーズが市場にないことを理由に起業した点で、Stockeld Dreameryと似ている。

GOOD PLANeTココナッツオイルじゃがいものデンプンを使ってモッツァレッラチーズを開発している

植物原料で代替するのではなく、微生物を生産工場として牛由来と同じ乳タンパク質を開発するパーフェクトデイChange FoodsLegendairy Foodsなどもいる。

2019年には12億ドルだったヴィーガンチーズ市場は2027年には44億ドルに達すると予想されている。

植物性チーズはまだプラントベースの主流とはいえないものの、近い将来、アレルギーの心配がある動物性チーズよりも、植物性チーズが主流になるかもしれない

Stockeld Dreameryは2019年にスウェーデンのストックホルムに設立されたスタートアップ企業。

最近、社名をNoquo FoodsからStockeld Dreameryに変更した。

Anja Leissner氏(左)とSorosh Tavakoli氏(右) 出典:Stockeld Dreamery

共同創業者のTavakoli氏はソフトウェア会社Videoplazaを立ち上げ、100人規模まで会社を成長させた経験を持つ。

Leissner氏は昆虫と植物を使ったチーズ用の代替タンパク質に関する研究後、代替タンパク質へ移行する必要性を確信。共同創業者となるTavakoli氏が書いた記事をきかっけに2人は意気投合し、Noquo Foodsを立ち上げた。

Stockeld Dreameryがこれまでに調達した総額はクランチベースによると330万ユーロ(約4億2千万円)となる。

北欧のベンチャーキャピタルInventure、ブリュッセルを拠点とするAstanor Ventures、ベルリンを拠点とするPurple Orange Venturesなどのほか、エンジェル投資家のEric Quidenus-Wahlforss氏からも出資を受けている。

 

参考記事

Noquo Foods Rebrands as Stockeld Dreamery, Readies Launch of Its Plant-Based Cheese

The latest on the world’s most ambitious cheese…

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:Stockeld Dreamery

 

関連記事

  1. 精密発酵でカカオバターを開発する米Seminal Bioscie…
  2. イスラエルのImagindairy、アニマルフリーな精密発酵乳タ…
  3. 米Atlantic Fish Co、世界初の培養ブラックシーバス…
  4. モサミートはいかにしてFBSを使わずに培養牛肉を生産したのか?研…
  5. Nature’s Fyndがカナダで微生物由来タンパク質Fyの認…
  6. 2024年1月_Foovoセミナー動画・資料(精密発酵・植物分子…
  7. モサミート、牛脂肪細胞を培養する無血清培地に関する論文を発表
  8. 培養魚のBlueNalu(ブルーナル)がヨーロッパ進出へ向け冷凍…

おすすめ記事

Quornがハイブリッド製品市場への参入を発表|マイコプロテインで肉消費削減を加速

代表的なマイコプロテインブランドのQuorn Foodsは先月、ハイブリッド製品…

米Sweegenが精密発酵による甘味タンパク質でFEMA GRASステータスを取得

甘味料と風味のイノベーションを推進する米スタートアップ企業Sweegenは今年、…

全自動のパン製造ロボットBreadBot、昨年より米スーパーに本格導入

Wilkinson Baking Companyが開発したパンを自動製造するロボ…

ビーガンペットフードのWild Earthが約25億円を調達、来年に細胞培養ペットフード発売へ

ビーガンペットフードを販売する米Wild Earthが、シリーズAで2300万ド…

3Dフードプリンター試食会レポート|日本科学未来館で”未来の食”を体験

2024年12月8日、日本科学未来館で「フードテックFURUKAWA “未来の食…

培養サーモンの米Wildtype、レストラン・小売との提携を発表

細胞培養による培養サーモンを開発するアメリカのWildtype(ワイルドタイプ)…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/17 14:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/18 00:10時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/18 03:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(01/17 20:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/18 12:39時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/17 23:23時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP