代替プロテイン

iPS細胞で培養肉を開発するオランダ企業MeatableがシリーズAで約50億円を調達

 

オランダの培養肉企業MeatableはシリーズAラウンドで4700万ドル(約50億円)を調達した。同社がこれまで調達した総額は6290万ドル(約68億円)となる。

Meatableは2023年までに欧州での許認可取得、2025年までの市場投入を目指している。

iPSを使い培養肉を数週間で生産するMeatable

出典:Meatable

MeatableはiPS細胞を使い、培養肉を開発するスタートアップ企業。

iPS細胞は多能性幹細胞の1つで、京都大学の山中教授が発見し、ノーベル賞を受賞したことは周知だろう。

それまでは初期細胞となる受精卵由来のES細胞を使わないとできなかったことを、iPS細胞の登場により、皮膚の細胞などからもあらゆる細胞に分化させることが可能となった

これに対し、神経から取り出した幹細胞は神経系の細胞に分化するなど、ある程度分化できる方向性が定まっている幹細胞もある(体性幹細胞という)。

OPTi-OX技術で細胞が成長していく様子 出典:Sanger Institute

体のあらゆる細胞に変身できるiPS細胞だが、人間の脳細胞へ分化させるには3ヶ月かかるなど、時間がかかるという欠点があった。

数週間にまで短縮した研究もあるが、のちにMeatableに加わるマーク・コッター博士は、数日でほぼ同一の細胞を数百万個生成するOPTi-OXという技術を発明した。

Meatableはまず、誕生した子牛のへその緒から血液を採取し、リプログラミングによりiPS細胞にする。

次にOPTi-OX技術を活用してこれらの幹細胞を筋肉細胞や脂肪細胞へ分化させる。

OPTi-OXを使うことで、幹細胞は指数関数的に成長し、スケーラブルな生産が可能となる。

Meatableの培養肉が商用化されると、数週間で肉を生産できるようになる

「このバイアルで、地球全体に食料を供給できる可能性があります」(コッター博士)

培養肉のゲームチェンジャーになるOPTi-OX

出典:Meatable

Meatableの主力技術OPTi-OXを発明したコッター博士は、約20年にわたる幹細胞生物学の経験を持ち、ケインブリッジ大学で幹細胞・神経科学に従事する研究者。

博士はOPTi-OXの内容を記したInducible and deterministic forward programming of human pluripotent stem cellsという研究論文を2017年に発表している。

当初、この技術をアルツハイマー、心疾患など、バイオメディカル分野で応用することを念頭においており、培養肉開発に応用することは考えていなかった

後に博士は細胞農業に焦点をあてた非営利団体ニューハーベストに勤務していたDaan Luining氏と知り合う。

博士は最初は培養肉に懐疑的だったが、Luining氏との5分ほどの会話で培養肉がもたらす可能性を確信

マーク・コッター博士 出典:ケインブリッジ大学

そして、OPTi-OXが培養肉産業のゲームチェンジャーになると確信するLuining氏とともにMeatableを設立する。

現在、主力技術OPTi-OXはCambridge EnterpriseからMeatableにライセンス供与されている。

コッター博士は自社の強みを「スケーラビリティ」だし、次のように述べている。

スピード、一貫性、規模の面で、(当社に)匹敵する可能性のあるアプローチを他に知りません。Meatableは食品部門のニーズを満たす工業プロセスの開発に100%コミットしています」(コッター博士 斜線:ライター)

課題はコスト

イメージ写真

現在の課題は価格となる。

Meatableの培養肉は現在、約450gあたり1万ドル(約100万円)する。

Meatableが開発するのはブロック肉であることは優位性になるが、これからいかにしてコストダウンを図るかが求められる。

まだ現実的な価格とはいえないが、他社の培養肉企業の中には、コストダウンに特化して取り組む企業が増えている。

Future FieldsCore Biogenesisなどが開発する安価な成長因子、大量生産を可能とするバイオリアクターMatrix Meatsの企業ごとにカスタマイズ可能な食用足場など、培養肉の生産をスケールアップし、かつコストダウンを実現する技術革新が進んでいる

世界で初めて発売されたイート・ジャストの培養肉 出典:イート・ジャスト

こうした技術が融合することで、培養肉の商用化の壁となっている大量生産とコストが解決される可能性、その実現タイムラインが短くなる可能性は高い。

イスラエルのFuture Meatのように、培養鶏肉の生産コストを約113gあたり約780円にまで削減することに成功した事例もあり、培養肉が食卓に並ぶのはそう遠くないことが予想される。

Meatableの培養肉が商品化されれば、これまでの食肉生産に不可欠であった広大な土地、大量の水、抗生物質が必要でなくなり、温室効果ガスの排出量を減らせるほか、動物に由来する感染症の発生を防ぐことができる

来年中に欧州承認を目指す

Krijn De Nood氏(左)とDaan Luining氏 出典:Meatable

今回のラウンドには米国国立癌研究所の元所長であり、バイオテクノロジー企業Lyell Immunopharmaの創業者であるリック・クラウスナー氏ジェフリー・ライデン氏DSM Venturingなどのほか、既存投資家であるBlueYard CapitalAgronomicsHumboldtTaavet Hinrikusが参加した。

Meatableは2018年にCEOのKrijn De Nood氏、CTOのDaan Luining氏、マーク・コッター博士によって設立されたオランダのスタートアップ企業。

Meatableの最初の製品は培養ポークとなるが、今回の資金でオランダのイノベーション施設Biotech Campus Delftでの小規模生産を進めるとしており、培養牛肉などほかの動物肉にも取り組むとしている。

同社の技術は、牛、豚、魚、羊などあらゆるタイプの培養肉に適用できる。

Meatableは2023年までに欧州で許認可取得、2025年までに市場投入するとしているが、ここ3ヶ月の培養肉企業に集まる投資状況からも、追い風が吹いているのは間違いない。

 

参考記事

Cultured Meat Startup Meatable Raises $47 Million Series A

“With this vial, we could potentially feed the entire planet”

Bill Gates wants Western countries to eat synthetic meat:Meatable has raised $47million to make it

Meatable’s incr-edible cell-to-plate success story

Cambridge tech to produce meat in the lab and end associated animal slaughter

 

 

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