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中国の培養肉Joes Future Foodが約12億円を調達、実証プラント建設へ

 

中国の培養肉企業Joes Future Food(中国語名:周子未来)がシリーズAで7000万人民元(約12億円)を調達した。同社は調達した資金で、研究開発、スケールアップ、最初の実証プラント建設を図る。

Joes Future Foodは中国で最初に培養肉のプロトタイプを発表した培養肉企業(以前の社名は南京周子)。

南京農業大学の周光宏教授が率いる研究チームは、FBS(ウシ胎児血清)を使わない生産手法で培養豚肉を開発している。FBSは生まれていない子牛の血清を使うため、倫理的に問題とされるが、現在は多くの培養肉企業がFBSフリーな生産方法へとシフトしている。

Joes Future Foodは2019年11月、中国で初めて5グラムの培養肉開発に成功。その後、幹細胞の増殖を制御するうえで重要なシグナル伝達経路と抑制因子を発見し、生体内環境の模倣を実現。1年で生産効率を10倍に上げることに成功した。

出典:Joes Future Food

中国で2018年にアフリカ豚コレラが大発生したことは記憶に新しい。豚コレラは人間には感染しないが、ワクチンはなく、豚を死に追いやる伝染病とされる。

2018年に最初に報告されてから、1年経たずに複数の国に広がり、世界の豚の推定25%が豚コレラにより死亡したとされる。中国では2019年の豚処分により、約2500万トン分のタンパク質不足を生んだとされる

豚コレラ発生により、中国では豚肉の安定供給が難航し、豚肉が高騰、飼料として輸入していた大豆の相場にも影響が及んだ。

こうした感染症の発生は家畜の大量殺処分を招き、安定したタンパク質供給、動物愛護、環境負荷の側面から持続可能とは言い難い。2050年に約100億人に達する世界人口の胃袋を満たすために、気候や感染症発生などの影響を受けにくい、新たな解決手段としての培養肉の開発に注目が集まる。

豚の集約畜産 出典:ウィキペディア

今回のラウンドはHillhouse CapitalMatrix Partners ChinaCrystal StreamNanjing Innovation Capital Groupが主導した。このラウンドは昨年12月のMatrix Partners Chinaによる約3億円の資金調達に続くものとなる。

Joes Future Foodは調達した資金で実証プラント建設、研究開発を進めるほか、中国で培養豚肉を販売するためにコスト削減を図る。

今回のラウンドに参加したHillhouse Capitalの李良氏は、Joes Future Foodが2009年に研究を開始してから、「幹細胞の体外培養における幹細胞のstemness維持方法の確立、18種の補助因子を含む無血清培養条件の開発、マイクロピラーアレイを含む培養肉生産基材の開発など、技術的ブレイクスルーを実現してきた」と同社がもつポテンシャルを評価している。

出典:Joes Future Food

これまで培養肉の販売を認めたのはシンガポールのみだが、これにカタールアメリカが続く可能性が高まっている。

中国では2020年の両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)で培養肉の研究開発を強化する呼びかけがあり、培養肉を、食料保障問題を解決する一つの手段として重要視していることがうかがえる。

現に、中国の培養肉企業3社のうち、Joes Future FoodとCellXは今年になってから2回の資金提供を受けた。Joes Future Foodに続きCellXは先月、培養豚肉のプロトタイプを発表した。

中国の植物肉企業Heroteinがアメリカの培養油脂企業と培養ハイブリッド肉の開発で提携する事例もでており、中国の培養肉市場の今後が注目される。

 

参考記事

国内领先细胞培养肉公司“周子未来”完成A轮融资

China’s Cell-Based Pork Maker Bags ¥70M Series A To Kickstart Production

 

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アイキャッチ画像の出典:Joes Future Food

 

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