Foovo Deep

Motif FoodworksがSolar Biotechとの提携を拡大、精密発酵タンパク質の「AWS」が加速

 

精密発酵プラットフォーマーSolar Biotech(ソーラー・バイオテック)は、植物肉をアップデートさせる成分開発に取り組むフードテック企業Motif Foodworks(モーティフ・フードワークス)とのパートナーシップ拡大を発表した

2社は2020年に提携を開始。今回の発表は、Motif FoodworksがSolar Biotechのプラットフォームを活用して、遺伝子組換え酵母由来のヘム成分HEMAMIをパイロット規模で生産したパートナーシップの延長となる。

パートナーシップ拡大により、Solar Biotechはパイロットスケールの精密発酵と下流工程の生産能力により、Motif Foodworksの新しい植物ベース食品分野への成長をサポートする。また、代替乳製品やほかの植物ベース食品の味、食感、栄養を改善する新しい技術に対するMotifのサンプリングニーズをサポートする。

精密発酵によるヘムタンパク質をスケールアップ

出典:Motif FoodWorks

Motif Foodworksは昨年、植物肉に肉らしい風味と旨味を提供する成分となるHEMAMIを発表した。

アメリカの代替肉企業インポッシブルフーズも、遺伝子組換え酵母による大豆レグヘモグロビンを開発、自社の植物肉に採用しているが、HEMAMIは動物筋肉に存在するミオグロビンである点で、植物肉をさらに本物に近づける成分だといえる。HEMAMIは牛にあるヘムタンパク質と相違ないが、動物を使わずに精密発酵により生産される。

FoodIngredientsFirstの報道によると、Motif FoodworksはHEMAMIをラボスケールの小規模生産から工業規模の生産へ移行させるためにSolar Biotechのプラットフォームを活用してきた。

Motif Foodworks CEOのJonathan McIntyre氏は「パートナーシップの継続により、Motifの今後の製品のパイプラインを構築するために必要なインフラを確立できるようになります」とコメントしている。

精密発酵タンパク質需要の背景にあるボトルネック

出典:Solar Biotech

近年、精密発酵、細胞培養により動物を使わずに代替食品を開発する企業に対する出資が続いている。この背景には、2050年に約100億人に達すると予想される世界人口のタンパク質需要を満たす手段として、環境負荷が低減された食品がこれまで以上に求められていることがある。

特に精密発酵は2030年までに急激なコストダウンが見込まれ、アメリカを中心に製品の置き換えが進行しているものの、世界規模での生産には至っていない。その要因の1つが、インフラのギャップだ。

現在、世界で稼働しているバイオリアクター容量は6100万リットルとされる。うち、食品用に使用される容量はわずか200万リットルにとどまる。微生物由来のタンパク質生産には、2030年までに100億リットルの生産能力が必要になると試算されている。これは、現在のバイオ生産能力の100倍以上だ

スタートアップに対し、ラボスケールから工業スケールへの移行を支援する技術・プラットフォームを提供しているのがSolar Biotechだ。

出典:Solar Biotech

Solar Biotechは独自のアルゴリズムSynBio Hyperintegration Algorithms (SHAs)を活用し、BioNodesというカスタマイズされたモジュール工場を提供する。

最初のプロトタイプBioNodes1により、合成生物学製品の市場投入に要する時間を数年から数ヵ月に短縮できる。最終的には数年ではなく、数週間、さらには数日で、他社が発酵商品を市場に投入するのを支援したいと考えている。

Solar Biotechのサービスを活用することで、スタートアップ企業は自社で技術・生産プラットフォームを構築しなくても、スケールアップし、早期の市場投入を実現できる。

同社はMotif FoodworksのほかにTurtle Treeとも協業し、製品開発と大量生産への移行を支援している。

精密発酵タンパク質の「AWS」3社

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Motif Foodworks

 

関連記事

  1. 藻類を活用した代替タンパク質製品を開発するAlgama Food…
  2. GOOD Meatが培養肉生産に無血清培地を使用する認可をシンガ…
  3. デンマークのMATR Foods、欧州投資銀行から約31億円の融…
  4. カナダのThe Better ButchersとGenuine …
  5. オランダのViviciが精密発酵ホエイの生産プロセスをスケールア…
  6. アレフ・ファームズ、シンガポール・イスラエルでの合意で培養肉の生…
  7. 培養肉の進展と課題-タフツ大学デイビッド・カプラン教授が都内で講…
  8. イスラエルの精密発酵企業Remilk、アメリカで上市を実現

おすすめ記事

6つの豆をベースに代替魚を開発する米Good Catchがシンガポールへ進出

6つの豆をベースに植物性の代替魚を開発する米Good Catchがシンガポールに…

パーフェクトデイ、精密発酵の「biology-as-a-service」を本格始動

食用タンパク質で精密発酵をリードする米パー​​フェクトデイ(Perfect Da…

「競争よりも共創」代替肉で環境問題に挑むネクストミーツが目指すものとは

メディアの注目を集め続けるフードテック企業がある。「地球を終わらせない」という理…

植物ミルクをより持続可能に:英MYOMが開発した新タイプのオーツミルク

環境負荷の軽減や健康志向から、国内でもオーツミルク、アーモンドミルク、豆乳などの…

ポーランドNapiFerynがなたね油粕から代替タンパク質Rapteinを開発|大豆にかわる新しい植物性タンパク質となるか?

万能の肥料として活用されるなたね(菜種)油粕。なたね油粕とは、アブラナか…

オランダ、培養肉の承認前試食の実施を認める 年内に試食会実施へ

オランダ政府は今月5日、限られた条件下において、培養肉・培養シーフードの試食がま…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(02/21 14:43時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(02/22 00:24時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(02/22 04:19時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(02/21 20:41時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(02/21 12:47時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(02/21 23:38時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP