代替プロテイン

培養サーモンの米WildTypeが培養シーフード業界史上最大の約114億円を調達

 

細胞培養による培養サーモンを開発するアメリカ企業WildType(ワイルドタイプ)は23日、シリーズBラウンドで1億ドル(約114億円)を調達したことを発表した

培養シーフード企業への出資額では過去最大規模となる。

アメリカの投資会社L Cattertonがラウンドを主導、新たに俳優のレオナルド・ディカプリオ氏、ジェフ・ベゾス氏のベンチャーキャピタルBezos Expeditions、シンガポール政府系ファンドのテマセクカーギルS2G Ventures、ロバート・ダウニー・JrのベンチャーキャピタルFootPrint Coalitionなどが参加した。

これにより、WildTypeの調達総額は1億2000万ドルを超えた。

高級レストランを通じた最初の市場投入を目指す

出典:Wildtype

WildTypeは鮭の細胞を分離し、バイオリアクターで成長させて培養サーモンを生産する。「地球上で最もクリーンで持続可能なシーフードを作る」ことを使命に2016年に設立された。

同社は昨年、寿司用の培養サーモンを発表、サンフランシスコに初となる生産施設をオープンした。12月には大衆向け寿司レストランとの提携を発表

FDAの承認を得られ次第、間もなく発表されるパートナーとなる高級レストランを通じ、製品を市場に投入することを計画している。

今回のラウンドに参加した俳優のレオナルド・ディカプリオ氏は、天然魚の個体数がかつてない脅威にさらされていることに言及したうえで、「WildTypeは信じられないサーモンで、間違いなく私たちの食品システムを変えるでしょう」とコメントしている。

シリーズBに到達する培養肉企業が増加

出典:Wildtype

WildTypeが昨年開設した生産施設の短期的な生産能力は5万ポンド(約22トン)だが、長期的には最大20万ポンド(約90.7トン)までスケールアップが可能とされる。

同社は調達した資金で、「生産能力の劇的な拡大」を図る。

同社は海外メディアThe Spoonのインタビューに対し、サンフランシスコの新しい施設に移転し、太平洋岸北西部に新しい生産施設をオープンすると回答している。しかし、生産能力を拡大しても、技術とプロセスを改良するため、今後数年間は生産量が非常に限られることにも言及している。

WildTypeの培養サーモンは魚を殺すことなく、水銀やマイクロプラスチックの汚染リスクのないクリーンな代替魚として市販化が期待される。

共同創業者のJustin Kolbeck氏(左)とAryé Elfenbein氏(右) 出典:Wildtype

同社の製品が流通するには、FDAの承認が必要となるが、アメリカで販売許可を取得した培養肉企業はまだない。同社共同創業者のJustin Kolbeck氏は、当局との交渉は「スムーズで、FDAがまもなく青信号を出すことを期待」しているとコメントしている。

WildTypeをはじめ、アメリカで培養肉・培養魚にいつ販売許可が下りるのか、今年の注目ポイントといえる。培養肉では昨今、大型資金調達が続いており、2020年以降、WildType、Future Meatアレフ・ファームズモサミートUpside FoodsがシリーズBラウンドへ進んだ

培養魚ではアメリカのブルーナルが昨年、約62億円を調達していたが、WildTypeの今回の調達はそれを上回る規模となった。

 

参考記事

Wildtype Sets Course to Bring Cultivated Seafood to Market with $100 Million Series B Funding Round

Wildtype Raises $100 Million in Series B Funding, Largest Ever for Cell Cultivated Seafood Company

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:WildType

 

関連記事

  1. 精密発酵食品の現在地──卵白タンパク質・乳タンパク質・ラクトフェ…
  2. オランダのモサミート、培養牛脂でEU初の新規食品申請を提出
  3. 米Oobliが精密発酵による甘味タンパク質ブラゼインでGRAS認…
  4. スイスの小売大手ミグロスがビーガンゆで卵を発売
  5. 培養肉未来創造コンソーシアム、大阪万博で培養肉の実物を展示|家庭…
  6. 【2024年】マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート発売のお…
  7. Shiruと味の素、AIを活用した未発見の甘味タンパク質の発見・…
  8. 二酸化炭素を使用して代替脂肪を開発するスウェーデンのGreen-…

おすすめ記事

イスラエルのDairyX、精密発酵技術で自己組織化するカゼインミセルの生産方法を開発

2022年に設立されたイスラエルのスタートアップ企業DairyXは今月、精密発酵…

Betterland foodsがパーフェクトデイのアニマルフリーなホエイタンパク質を使ったチョコレートバーを発売

持続可能性を重視した食品を開発するスタートアップ企業のbetterland fo…

キッチンカーで植物肉を広めたい|学生団体Planmeetがクラウドファインディングをスタート

植物肉という食の選択肢を広げるために、早稲田大学などの学生による学生団体Plan…

ジャガイモで乳タンパク質を開発|イスラエルのFinally Foodsがプレシード資金を調達

イスラエルの植物分子農業企業Finally Foodsは今月、The Kitch…

モサミートが培養牛脂の公式試食会をEUで初めて開催、ハイブリッドビーフパテを披露

オランダの培養肉企業モサミート(Mosa Meat)が今月、同社初となる公式試食…

藻類で培養肉用培地のコストダウンを図る東京女子医科大学、培養廃液もリサイクル

2021年8月29日に第3回細胞農業会議(日本細胞農業協会・培養食料研究会主催)…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/05 15:49時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/06 02:08時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/05 05:50時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/05 21:50時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/05 13:45時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/06 01:06時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP