Foovo Deep

パーフェクトデイの精密発酵由来の乳タンパク質を使った牛乳が今夏、ついに市販化

 

今夏、精密発酵で作られたアニマルフリーな牛乳がアメリカで発売される。

世界で初めてアニマルフリーな乳たんぱく質を開発した米パーフェクトデイbetterland foodsは、精密発酵由来の牛乳を今夏に発売することを発表した。正式リリースに先立ち、アメリカ、アナハイムで今月開催される見本市Natural Products Expo Westで提供される。

精密発酵は、微生物に作りたいタンパク質の遺伝子を挿入し、タンパク質を生産する手法として注目されている。乳タンパク質を作るよう「プログラム」された微生物が「ミニ工場」「生産工場」となり、牛に頼らずにバイオリアクターの中で乳タンパク質を生産する。

パーフェクトデイはこれまでに、精密発酵による乳たんぱく質を使ったアイスクリーム、クリームチーズ、ケーキミックス、スポーツ製品を販売してきた。牛乳が小売に導入されるのはこれが初

2社の提携は、市場規模が1000億ドルを超えるアメリカの乳製品業界の脱アニマル化を促進する重要な転換点といえる。

アニマルフリーな乳タンパク質を使った牛乳が今夏、ついに市販化

出典:betterland foods

パーフェクトデイのアニマルフリーな乳たんぱく質を使用したbetterland milkは、植物性ミルクよりもクリーミーかつリッチな味わいで、機能面では、牛乳と同じように、泡立てる、蒸す、ベーキングなどの調理ができる。

betterland milkにはMTC(中鎖脂肪酸100%の油)とひまわり油のみが含まれ、ラクトース(乳糖)、コレステロール、ホルモンは含まない。

betterland foodsのCEOであるLizanne Falsetto氏は、1990年代に業界で初めて高プロテインな栄養バーthink!を開発した栄養・タンパク質のエキスパート。think!は2015年にGlanbiaに買収された。

Falsetto氏は売却後もタンパク質業界のイノベーションに関心を持っていた。

パーフェクトデイが、乳タンパク質をより持続可能な方法で、バイオリアクターで生産していることを知った同氏は、業界に復帰し、「地球にやさしく、すばらしい味わいの製品ポートフォリオの構築を支援したい」と思った。こうしてbetterland foodsが誕生した

出典:パーフェクトデイ

パーフェクトデイは精密発酵技術により、牛を使うことなく、乳たんぱく質を開発するアメリカ企業。同社の乳たんぱく質を使った製品は複数市販化されているが、生産を手掛けるのは2020年に設立されたパーフェクトデイの子会社The Urgent Companyだ。

The Urgent Companyはパーフェクトデイの乳たんぱく質を使い、アイスクリームブランドBrave Robot、クリームチーズブランドModern Kitchen、プロテイン粉末ブランドCalifornia Performance Coを展開している。

今回発表された提携がこれまでのものと異なるのは、betterland foodsは独立したスタートアップ企業であり、パーフェクトデイが所有する子会社ではないことだ。

このほか、パーフェクトデイは1月にアイスクリームブランドのCoolhausを買収している。今後はThe Urgent Company以外のスタートアップとの提携や、乳業企業の買収も予想される。

最も身近な乳製品、牛乳の代替を実現

出典:パーフェクトデイ

今年の夏より、アメリカの小売でパーフェクトデイの乳たんぱく質を使った牛乳が市販化されることは、乳タンパク質の最も直接的な消費形態となる牛乳に精密発酵タンパク質が使用される点で、画期的なニュースといえる。

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

関連記事

アイキャッチ画像の出典:パーフェクトデイ/betterland foods

 

関連記事

  1. 【現地レポ】シンガポール・スーパーマーケットでの精密発酵食品の販…
  2. 農研機構の生研支援センター、細胞性食品に公的支援|SBIR支援で…
  3. 精密発酵で母乳タンパク質を開発するHelainaがシリーズAで約…
  4. ドイツのBettaF!sh、海藻と植物を使用した代替サーモンSA…
  5. NewFishが微細藻類由来のタンパク質粉末を開発、米国スポーツ…
  6. スピルリナ由来の代替スモークサーモンを開発するSimpliiGo…
  7. Sophie’s BioNutrientsが微細藻類を活用したチ…
  8. ZIKIがロボットキッチンのBowlton Kitchensを買…

おすすめ記事

麹ラボが都内でマイコプロテイン試食会を初開催|代替肉にもソースにも──麹菌体が秘める応用力|試食レポート

麹ラボによる麹菌体を用いたマイコプロテイン試食会が6月22日、都内の玄米自然食レ…

中国の培養肉業界の今をクローズアップ-2021年11月-【政策/企業の開発動向/投資動向/法規制】

今年、中国の培養肉企業2社に対し資金調達が実施された。この記事では、中国…

Remilkがイスラエル食品大手CBCグループと提携、1年以内のイスラエル上市を目指す

精密発酵でアニマルフリーな乳タンパク質を開発するRemilkは、イスラエル食品最…

Vowがシンガポールで培養ウズラ肉の販売認可を取得、今月レストランで限定提供

細胞性食品とも呼ばれる培養肉は、動物を犠牲にすることなく動物肉を生産でき、環境負…

植物性卵・培養鶏肉を開発するイート・ジャストが新たに約219億円を調達

カリフォルニアを拠点とするイート・ジャストが2億ドル(約219億円)という巨額の…

Vowの培養ウズラ、ついに地元オーストラリアでFSANZが承認|大臣会合を経て販売へ

2025年4月9日更新オーストラリアの培養肉スタートアップVowが申請した培養ウズラについて…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/03 16:20時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/04 03:01時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/03 06:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/03 22:22時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/03 14:20時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(12/04 01:40時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP