世界的にバイオマス発酵、精密発酵による代替タンパク質の開発が進む中、中国でも最初のバイオマス発酵企業が登場した。
微生物を培養して食用タンパク質にするのがバイオマス発酵、プログラムした微生物を「生産工場」として使い、必要なタンパク質を分泌した後は微生物を除去するのが精密発酵とされる。
前者に属する上海企業70/30はこれまでに試験販売で25,000食以上を販売しており、今年第4四半期には、菌糸体由来タンパク質を使用した調理済み製品の全国発売を目指している。
中国初の菌糸体タンパク質スタートアップ70/30
代替タンパク質の普及を促進する非営利団体The Good Food institute(GFI)によると、発酵技術で代替タンパク質を開発する企業には昨年、約17億ドルが投入された。これは2020年の約6億ドルの約3倍となり、発酵タンパク質は植物肉、培養肉に続き、代替タンパク質の「第3の柱」として注目されている。
発酵タンパク質スタートアップはアメリカやイスラエルなどで多く誕生しているものの、これまで中国では確認されていなかった。
70/30は菌糸体由来タンパク質を使った製品を中国で発売する初の企業になると考えられる。同社は最近、アメリカのベンチャーキャピタルNew Crop Capitalなどからプレシードラウンドで資金調達を実施している(調達額は非公開)。近く生産をスケールアップし、研究開発チームを拡充して、中国人消費者に新製品を届けるためにシリーズAラウンドを実施する予定だという。
※プレシードは創業前後の初期段階でプロダクトはないアイディア段階にあるスタートアップに対して行われる投資をいう。シリーズAラウンドはプロダクトが市場に普及しはじめたものの収益が不十分で、会社の運転資金を外部から調達する必要がある時期の投資をいう。
2022年第4四半期に全国販売へ
70/30はこれまでに広告予算をかけずに25,000食以上を販売した。
同社は、上海の新施設でコールドチェーン物流の大規模ネットワークを有する業界大手上海清美绿色食品集团(Shanghai Qingmei Green Food Group)をパートナーに、生産能力の増強を図る。この提携を通じて、70/30は生産をスケールアップし、2022年第4四半期には全国販売を予定している。
同社共同創業者であり商品開発長のMike Huang氏は、「試験発売の一環として、2021年には1,600人を超えるお客様に25,000個以上の調理済み食品を販売しました。私たちは、都市の平均的な「996工作制(朝9時-夜9時勤務で週6日働く労働者)」の労働者がどのように食の決定を下し、植物由来食品にどのような期待を持っているか、貴重なデータを収集できました」とコメントしている。
70/30は中国市場の代替タンパク質企業を加速させることに焦点をあてたベンチャーキャピタルDao Foodsのポートフォリオ企業の1社でもある。
Dao Foodsのポートフォリオ企業には、精密発酵でゼラチンを開発するカナダ企業Liven Proteinや中国の植物肉スタートアップStarfield(スターフィールド)も含まれている。
中国で精密発酵企業も登場、国の政策も追い風に
中国ではバイオマス発酵に続き、精密発酵によりタンパク質を開発する最初のスタートアップも登場している。
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アイキャッチ画像の出典:70/30