細胞由来・植物由来の代替肉や代替魚の開発が世界的に進む中、本物ならではの風味を補完する重要な成分である脂肪に焦点をあてる企業が増えている。
シーフードの領域では、脂肪の開発に着手した企業はこれまでシンガポールのImpacFat(インパクファット)に限られていたが、新たにオランダを拠点とするUpstream Foods(アップストリーム・フーズ)が加わった。
「植物シーフードを次のレベルに引き上げるには、次のレベルの脂肪が必要だ」と考えるUpstream Foodsは、植物シーフード市場をターゲットにB2B向けの鮭の培養脂肪を開発している。
鮭の培養脂肪を開発するUpstream Foods
Foodnavigatorの報道によると、Upstream Foodsは鮭から細胞を採取し、独自の細胞株を作成し、バイオリアクターで細胞を培養する。植物由来成分と脂肪を混合することで、「シーフードのような味わいで健康上の利点をすべて備えた、消費者にとって手頃な高品質な製品」を作り出せるとしている。
Upstream Foodsは現在、鮭細胞株の最適化と、ラボスケールでのプロセスの確立に取り組んでいる。費用対効果の高いプロセスの実現が、現在直面している課題だという。
Upstream Foodsはグローバルな植物シーフード企業とすでに提携しているが、市場投入はもう少し先になりそうだ。今後の予定として、シードラウンドで300万ユーロの資金調達を目指している。資金を調達し、まず30L、次いで100Lへとスケールアップを目指す考えだ。
欧州は新規食品の審査に時間がかかるため、まずアメリカで承認申請を行う予定だという。
拡大が予想される植物シーフード市場
代替タンパク質の普及を推進する非営利団体Good Food Institute(GFI)によると、アメリカでは2022年の植物シーフードの売上高は前年比15%増、販売数は5%増となった。成長率では植物肉を上回るものの、植物肉全体・シーフード製品全体ではまだシェアはごくわずかだという。
植物シーフードが、加工肉市場における植物肉と同じ割合のシェアを獲得した場合、アメリカにおける植物シーフードの小売売上は、約2億ドル増加するとGFIは見込んでいる。
現にアメリカにおいて、従来のシーフード製品は肉製品全体の16%を占めるものの、植物シーフード製品が植物肉全体に占める割合は1%と少ない。
このため、Upstream FoodsやImpacFatなどが開発する魚の培養脂肪は、植物シーフード市場のシェアを拡大する促進剤となりうる。Upstream Foodsの創業者兼CEO(最高経営責任者)のKianti Figler氏も、植物シーフードを主流にするには、製品の品質を高める必要があると言及している。
参考記事
Seafood without the catch? Cultivated salmon fat in development for ‘next level’ plant-based seafood
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